■危険その3/ヘッドレストレイントの位置が合っていない人
ヘッドレストと略されることが多いが、正式名称は「ヘッドレストレイント」。
たとえば、後方から衝突された際に首はむちを打ったようにしなるが、ヘッドレストレイントはそのしなりが加わった頭部を支え頸部を守る。また、衝撃を受けた際にシートの背もたれ部分が沈み込み背中を支える安全シートを備えるクルマも多い。
正しい位置は、後頭部の中心がヘッドレストレインの中央にくる、もしくは頭頂部とヘッドレストレイントが同じ高さになるところ。この調整を怠ると、頸部負傷による“むち打ち症”リスクが高まる。むち打ち症は完治まで期間を要するし、季節の変わり目や低気圧の影響を受け痛みが再発することがある。
■危険その4/正しいステアリング位置を把握できない人
ステアリングは両手で握り操作する。これが基本だ。では、両手の正しい位置はどこか?
巷では「10時10分の位置で握ると危ない」、「9時15分から8時20分がよい」などさまざまな声がある。ちなみに10時10分が危ないと言われる所以(ゆえん)は、エアバッグが展開した際に弾かれた自分の腕で顔面を強打する可能性が高いことから。
ただし、確かに危険性はあるが、ステアリングのスポーク位置からして、10時10分の位置が握りやすいクルマもある。警視庁「安全運転管理者講習」で講師を拝命している筆者(西村直人)としては「10時10分はなるべく避けて9時15分を握ること」を推奨している。
9時15分の推奨理由はワンアクションで均等な左右へのステアリング操作ができ、さらに一度で操舵できる角度も大きいことから。
■危険その5/右腕を車外に出して運転する人
これは論外。たとえば50㎞/hで走ると秒速は14m程度になるが、車外に出した右腕が対向車と触れたら痛いだけでは済まされず、最悪、腕がポロッともげる(本当です……)。
また、この状況は片手運転となることから緊急回避などとっさのステアリング操作が難しい。さらに、昨今では“あおり運転”をしていると、思い違いをされる可能性もあるのでやめましょう。
■ドライビングポジション以外にも知ってもらいたいクルマのこと
ざっと、ここまで危険なドラポジについて検証してみた。いずれも、正しいドラポジでなければ思わぬ事態を生み出してしまうことがご理解いただけたことと思う。正しいドラポジは安全な運転環境への近道だ。
万が一の際、瞬時に深くブレーキペダルが踏み込めたり、目視による周囲の安全確認が行いやすくなったり、同時にステアリング操作による回避動作などが期待できる。逆説的に言えば、正しい運転操作は正しいドラポジに宿るわけだ。
では見方を変えて、ドライバーを迎え入れる車内環境はどうか? 自動車メーカーでは体型によらず、正しいドラポジがとれるようにシート座面や背もたれ、そして高さなど調整機構に幅を持たせた設計を行っている。
また、アクセル&ブレーキペダルは踏みやすく、乗降性を邪魔しないよう配置され、ステアリングには上下方向の調整にチルト機構、前後方向の調整にテレスコピック機能をそれぞれ設ける。
たとえば、2019年8月から発売を開始したホンダ「新型N-WGN」では、コスト管理に厳しい軽自動車ながらステアリングには前述の両調整機構を備え、重要保安部品であるブレーキのペダルには、かかとを軸にしっかりと踏み込めるリンク式を採用し、そのペダルにはわざわざ専用品をおこしている。
自車周囲の安全確認に欠かせない、ドアミラーやルームミラーも正しいドラポジを助ける。たとえばフレームをなくしたフレームレスルームミラーは、フレーム分だけ鏡の面積が大きくなり見やすい。
昨今では、従来の鏡を光学式カメラに置き換え、その表示部を液晶画面とすることで後席に同乗者がいる場合や夜間、さらには逆光時など従来の鏡では物理的に遮られていた視界を補助する電子ミラーも実装され始めた。
これらの設計思想や技術は安全な運転環境を支援するもので、事故のない交通社会を目指すために研究開発されもの。当然ながら使い方はその開発者によって示されている。
その開発者との意思疎通ツールこそ取扱説明書にほかならないことから、クルマを乗り換えたら、ぜひ取扱説明書に目を通していただきたいです。
コメント
コメントの使い方