なぜディーゼル売れる? 背景に日本特有の事情と輸入車勢の充実
SUVはセダンやワゴンに比べてボディが重く、悪路を走ったり、高速道路を一定速度で巡航するような用途も多い。
そのために実用回転域の駆動力が高く、燃費性能の優れたディーゼルエンジンとの相性が良い。1980年代から1990年代の前半に掛けて、パジェロやテラノといったオフロードSUVのディーゼル車が人気を高めたこともある。
さらに日本特有の事情もある。日本ではガソリンに比べて軽油は税金が安く、1L当たりの小売価格がレギュラーガソリンを20円ほど下まわる。本体価格は軽油の方が少し高いが、税額の違いによって、小売価格は逆転するのだ。
また日本では、クリーンディーゼルが「クリーンエネルギー自動車」とされるため、購入時に納める環境性能割と自動車重量税が課税されない。燃費数値に関係なく、クリーンディーゼルというだけで非課税になる。
そして、欧州車を筆頭に、SUVは概して価格が高い。そうなると購入時に納める税金も多額になるが、ディーゼルは非課税だから節税効果が優れている。
購入後の燃料代も同サイズのガソリンエンジン車の60~70%に収まり、実用回転域の駆動力には余裕があるから、ユーザーの受けるメリットが大きい。このような事情でディーゼル人気が高まった。
過去を振り返ると日本でも厳しいディーゼル規制が実施され、対応できない車種は、地域によっては車検に通らない状態に陥った。
ユーザーの資産価値を激減させる問題のある方法だったが、この規制を境に、窒素酸化物や粒子状物質の排出量が多いディーゼルエンジン車の保有台数は大幅に減った。今日のディーゼル車は、いずれもその後に開発されたクリーンディーゼルで、「アンチハイブリッド派」の間でも人気が高い。
国内で買える魅力的なディーゼル車は?
ディーゼルエンジン搭載車で最も推奨度の高い車種は、マツダ CX-5だろう。
2.2Lのクリーンディーゼルターボは実用回転域の駆動力が高く、最大トルクはノーマルタイプのガソリンエンジンに当てはめると4.5L前後に相当する。しかも燃費性能も良好だ。
CX-5は後席を含めて居住性が快適で、荷室容量にも余裕があり、機能や装備の割に価格を抑えた。売れ行きはエクストレイルと同等で、ミドルサイズSUVでは好調な部類に入る。
コンパクトなSUVでは1.8Lクリーンディーゼルターボを搭載するCX-30、あるいは同じエンジンを搭載する5ドアハッチバック&セダンのマツダ3(旧アクセラ)も注目される。マツダ2(旧デミオ)は5ナンバーサイズに収まるコンパクトカーでありながら、1.5Lクリーンディーゼルターボを搭載する。
ミニバンではデリカD:5が注目車だ。悪路の走破力が優れ、ミニバンスタイルのSUVと呼べるクルマだから、ディーゼルとの相性も良い。
欧州車では、BMW3シリーズなどのセダンを含めてディーゼル搭載車が豊富だ。日本でディーゼル人気が高いことから、輸入車では戦略的にディーゼルの価格を抑えることが多い。同排気量のガソリンエンジン搭載車に比べて、20~30万円の上乗せに収まる。
そして、輸入車は概して価格が高いので、ガソリンエンジン車では取得価格をベースに課税される環境性能割の税額も上昇するが、クリーンディーゼルは前述の通り非課税だ。その結果、ガソリンとディーゼルの価格差の大半を税額の違いで取り戻せる。
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