自動車カタログというと、どんなものをイメージするだろうか。クルマの写真があって、性能や機能が説明されて、グレードと価格が載っているもの、これが一般的なカタログであろう。しかしなかには、少々個性的なカタログもある。見ていても何が何だか分からないが、とりあえずクルマが凄そうとは感じられる、あのクルマをカタログで振り返っていこう。
文:佐々木 亘/画像:マツダ、レクサス
【画像ギャラリー】まるで写真集! 説明しないカタログってアリ!?(15枚)画像ギャラリー度肝を抜かれた名車RX-8のカタログとは
2003年に登場したRX-8。RX-7にかわってロータリーエンジンを引き継ぐクルマであり、観音トビラにも注目が集まったが、当時は不思議なカタログが話題になったクルマでもある。
真っ赤な表紙に真っ赤なRX-8が映り、表紙をめくると「A Sports Car Like No Other MAZDA RX-8」と書かれており、赤いRX-8が疾走する写真が出てくる。
さらにめくると、RX-8デビューにあたっての前書き的なものが書かれていた。キャッチフレーズは、「スポーツカーを変える、あなたが変わる マツダRX-8、デビュー。」とあり、18行にわたって、RX-8の特徴や目指すべき目標などが書き綴られている。
ここまでは、一般的なクルマのカタログなのだが、ここからがRX-8の本領発揮だ。特異なスポーツカーは、カタログも特別なつくりをしていたのだ。
めくれどめくれど文字が無い!?
前書きが終わりページをめくると、赤いRX-8と犬の写真が出てくる。さらにめくると、赤いRX-8がトンネルを走る写真。次はテールの写真で、その次はシャッタースピードを遅くしたブレのある写真が出てくる。
たくさん写真があるなと思いながらめくっていくと次も写真だけだ。助手席側ドアを全開にしたRX-8が、駐車場にある写真。次はスピードメーターとサーキットにいるRX-8だ。
そしてテールランプ点灯の写真と共に、やっと文字が出てきた。そこには「ZOOM-ZOOM」という当時のマツダのキャッチフレーズと、短めの文章が5行ほど載っている。
「子供の頃、誰もが体験した、動くことへの感動。あの胸の高まりを、いつまでも忘れない人たちへ。流れる風に、伝わる音に、リズミカルな動きに、走る喜びを全身で感じるクルマを。乗るたびに、新しい発見のある使いやすさと、時を忘れる心地よさを届けたい。さあ、新たなときめきのドライビング体験を。」(原文ママ)
これはZOOM-ZOOMに対するメッセージ。RX-8に限らず、マツダ車全体で共有するメッセージだ。
さらにめくると、マツダエンブレムが出てきて裏表紙になるというのが、2003年当時のRX-8のカタログだった。機能説明やグレード体系はおろか、ほとんどが写真で文字を読むこともしなくていいカタログなのだ。
確かにRX-8の雰囲気や凄さは伝わるのだが、ディーラーからカタログをもらってきて、家で楽しみに見ようとしたら、写真だらけで何も分からないというのは、少し拍子抜けだ。文字では語り尽くせない魅力があると言いたいのかもしれないが、カタログのセオリーを大きく外しすぎて、異色以外の何者でもなかった。
最近はレクサスがRX-8と同じようなカタログ作りをしている
写真だけのカタログは、最近のレクサスモデルでよくみられる。現行型のNXから、カタログが「フォトブック」と「機能詳細・開発ストーリー」の2部に分けられ、フォトブックの構成がRX-8のカタログと同じなのだ。
電子カタログとなり、PDFで美しいクルマの写真を眺めるのも悪くはない。別冊の機能詳細カタログも100ページ越えの大ボリュームだから、フォトブックと分けてもらえるのは、読み手からしてもありがたい配慮だ。
紙カタログが廃止の動きを見せており、これからは電子カタログになった上で、写真だけのカタログというのが増えていくかもしれない。こうしたことを予想してか、約20年も前にフォトブックの形式をとっていたRX-8は、カタログも未来志向だったのだろう。
今後、自動車メーカーがどのようなカタログ作りをしていくのか。内容や形式には、要注目だ。
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