2013年12月にデビューし、2014〜2016年までSUV販売ナンバーワンに君臨し続けてきたホンダ「ヴェゼル」。
2016年12月にトヨタ「C-HR」がデビューし、販売トップの座を明け渡してから3年経ったが、それでも高い人気を維持していた。しかし、2019年10月の販売台数ランキングから急落するという状況となっていた。
なぜ急落は起きたのか? かつての王者に一体何があったのか!? その理由を渡辺陽一郎氏が分析していく。
文/渡辺陽一郎
写真/HONDA
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■強力ライバル続々登場だけではなかった、元王者失速の理由
最近はSUVの販売が好調だ。特に人気の高い車種として、ヴェゼルが挙げられる。2013年末に登場して、2014年から2016年(暦年)には、SUVの国内販売1位になった。2017年と2018年は、2016年末に登場したC-HRに1位を譲ったが、2019年上半期(2019年1~6月)には、再びSUVの1位に返り咲いた。
ヴェゼルが着実に売れる理由は、SUVの本質を突いた商品であるからだ。SUVはフロントマスクなどの外観に存在感が伴い、悪路の走破も考えて開発されたから、タイヤも大きくて迫力がある。そのいっぽうでボディの上側はワゴン風のスタイルだから、後席の居住性や積載性も良好だ。SUVは外観がカッコよく、車内は実用的でファミリーカーとしても使いやすいから人気を得た。
そしてヴェゼルは、外観デザインと実用性をバランスよく調和させたから、SUVの魅力を満喫できる。しかも全長は4400mm以下に収まるから、街中でも運転しやすい。燃料タンクを前席の下に搭載したから、荷室の床が低く積載性も優れている。後席の足元空間はLサイズSUV並みに広い。空間効率が優れ、価格は1.5Lノーマルエンジンを搭載するXホンダセンシングが安全&快適装備を充実させて220万5093円と割安だから、好調に売れて当然だろう。
ところが最近は、ヴェゼルの販売が下降気味だ。今は2019年4月に登場したRAV4が、5月から10月まではSUV販売ランキングの1位になっている。さらに11月は、同月に発売されたコンパクトなライズがSUVの1位になった(11月の登録台数は7484台)。2位はC-HR(5097台)が浮上して、3位はRAV4(4988台)、4位はライズの姉妹車となるロッキー(4294台)で、5位がヴェゼル(2909台)とになる。
ヴェゼルの登録台数を見る時に注意したいのは対前年比の推移だ。2019年8月は96.7%、9月は97.8%だから前年と比べて微減にとどまったが、10月は55.6%、11月は68.5%だから31~44%の大幅な減少になる。
ここまでヴェゼルの売れ行きが下がった理由として、2019年10月に日本を襲った台風19号の影響が考えられる。多くの方々が犠牲になられた甚大な災害だから、自動車産業も打撃を受けた。2019年10月における国内新車販売台数の対前年比は、消費増税の影響もあり24.9%のマイナスになっている。11月も12.7%減った。
特にホンダは落ち込みが大きく、10月は39.5%のマイナスであった(小型/普通車は40.5%・軽自動車は38.6%の減少)。11月も30.8%減っている(小型/普通車は37.5%・軽自動車は23.9%の減少)。このように台風19号によってホンダ車の国内販売が滞ったから、ヴェゼルの売れ行きも、今後の動向を見た上で判断せねばならない。
そこで今後のヴェゼルの売れ行きを考えると、登録台数は大きく減らなくても、販売ランキング順位が後退する可能性はある。仮に2019年11月のヴェゼルの売れ行きが、2018年の11月と同じ4247台でも、ライズ、C-HR、RAV4、ロッキーに抜かれていたからだ。
ライズとロッキーは前述のように新型SUVで、日本でも売りやすい5ナンバー車だから、今後も安定的に売られる可能性が高い。RAV4はシティ派SUVが増えたなかで、オフロードSUVの雰囲気を感じさせる。駆動方式も前輪駆動の2WDをベースにしながら、4WDのグレードを豊富にそろえた。ボディは大柄で価格も高めだが、SUVの原点回帰を感じさせて注目されている。ライズ、ロッキー、RAV4の3車種は、今後も好調に売れる可能性が高い。
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