「販売のトヨタ」。これはクルマとしてのデキに特筆すべきものはないが、強力な販売力で台数を稼いでいると、アンチトヨタが皮肉った言葉だ。
だが今現在のトヨタにこの言葉があてはまるかといえば、はなはだ疑問だ。豊田章男社長の「もっといいクルマをつくろうよ」の号令のもと、圧倒的な研究開発費をバックに生み出されるクルマたちは、大衆車であるはずのカローラですら高評価を獲得している。
今年も一強は続くのか? 付け入る隙はないのか? “強いトヨタ”を代表する5台のモデルを取り上げ、その強さの理由、そして弱点を探る。分析は自動車評論家の渡辺陽一郎氏にお願いした。
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※本稿は2019年12月のものです
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年1月10日号
■RAV4(2019年4月登場)
●強さの理由
最近はSUVが人気だが、C-HRのような都会的な車種が多い。SUVはもともと悪路走破力の高いクルマとして開発され、外観も力強い印象になったが、今のSUVはデザイン重視になり過ぎた。
その点でRAV4は、前輪駆動をベースにしたシティ派SUVながら、4WDを中心にした構成だ。外観は直線基調のオフロードSUV風で、最低地上高には190~200mmの余裕がある。
悪路に強く、アドベンチャーとG・Zパッケージには、後輪左右の駆動力配分を変化させる機能も採用した。悪路と舗装路の両方でカーブを曲がりやすい。
SUV本来の機能とデザインが注目され、発売も2019年4月と新しいため、SUVの最多販売車種になった。
●弱点
RAV4は2016年に国内販売を一度終了して海外専用車になった。3年後に国内販売を復活させたが、国内市場を考慮した作りではない。終了と復活は身勝手に思える。ボディは大柄で2LのNAエンジンは少し力不足だ。
●直近6カ月の販売台数
5月 6817台 → 6月 7822台 → 7月 8646台 → 8月 6277台 → 9月 6601台 → 10月 3920台
■カローラ(2019年9月登場)
●強さの理由
プリウスから採用が開始された新しいプラットフォームを使い、足まわりも4輪独立式になって、従来型に比べると走行安定性と乗り心地が大幅に向上している。
高速道路や峠道における危険回避性能も高まり、安全性も進化。衝突被害軽減ブレーキの性能もよくなり、後方の並走車両などを知らせる機能も設定した。
通信機能が標準装着され、エアバッグが作動した時などは、オペレーターが乗員に呼びかけを行う。応答がない時は、消防や警察への通報も可能だ。
車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなど運転支援機能も充実して、走りから装備まで幅広く充実させた。売れゆきも堅調に推移している。
●弱点
新型は海外仕様に比べるとボディを小さく抑えたが、5ナンバー車の従来型に比べると、ボディを拡大させて後方視界は悪くなり、駐車場や裏道で運転しにくくなった。後席の足元空間と、ワゴンの荷室も狭まっている。
●直近2カ月の販売台数 ※販売台数はセダンとツーリングの合計
9月 5800台 → 10月 7760台
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