現行は大幅に質感が向上
先代シエンタと現行シエンタの共通点は、空間効率を向上させた薄型燃料タンクだ。この機能があり、なおかつ現行シエンタは全長を160mm、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)を50mm拡大したから、さらに室内空間が広がった。3列目の足元空間にも余裕が生じている。
現行シエンタでは3列目シートの座り心地も向上したが、シートアレンジの利便性は逆に悪化した。
先代型の3列目は前述のとおり簡単に畳めたが、現行型は2列目を持ち上げてから、その下側に3列目を送り込む。つまり以前のモビリオに似た格納方法を採用している。
対抗するモビリオが消滅したこともあり、現行シエンタは似たような畳み方を採用するようになった。
内外装の質感は、現行型になって向上した。外観はスポーティでカッコ良く、インパネなど内装の質も高い。
その代わり取り回し性は悪化した。先代シエンタは、誰でも扱いやすい商品を目指すユニバーサルデザインの考え方を色濃く反映させていたが、現行シエンタのインパネはメーターパネルが高い位置に装着され、圧迫感が伴う。小柄なドライバーは前方も少々見にくい。
また先代型は高い位置にヘッドランプを装着して、左右のフェンダーがドライバーの視野に入り、車幅やボディ先端の位置がわかりやすかった。現行シエンタではボンネットがほとんど見えない。サイドウィンドウの下端も高まり、側方や後方の視界も先代型に比べて悪くなった。
約9200台の月販平均は快挙
以上のように、先代型と現行型は一長一短だ。先代型はシートアレンジが簡単で、視界のいいボディによって運転もしやすかった。現行型は居住性が向上して、内外装の見栄えをカッコよく上質にしている。
走行性能は、12年後に発売された現行型が優れていて当然だ。操舵感と走行安定性は、先代シエンタに比べると大幅に進化した。現行シエンタは操舵感に曖昧さがなく、ミニバンとしては車両の向きが正確に変わる。
下り坂のカーブで危険を回避する時の安定性も大きく向上した。エンジンはノーマルタイプに加えて、ハイブリッドも選べるようになっている。
さらに設計の新しい車種だから、衝突被害軽減ブレーキ(緊急自動ブレーキ)を作動できる安全装備も備わる。
従って商品力を単純に比べれば現行型がよくて当たり前だが、利便性や取りまわし性など、現行型が見劣り部分もある。それはシエンタに限らず、現行型の日本車全般に当てはまる傾向だ。
ほかの日本車には、悪化した機能が災いして売れ行きを下げたケースもあるが、シエンタの場合はプラスに作用した。
先代シエンタは発売の翌年となる2004年に月販平均で約5700台を登録したが、現行型は2019年に月販平均が約9200台に達する。
「軽自動車以外のクルマが売れない」といわれる今日の小型車の販売実績としては、快挙といえるだろう。
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