2020年が始まってもうすぐ1ヶ月。すでにたくさんのことが起こり通り過ぎていった気もするが、節目となるこの年、オリンピック・パラリンピックも相まって、我々の生活にもクルマ界にも大きな変化の波がやってきている。
それらがどんな変化や影響をもたらすのか? 主要な出来事を取り上げ検証してみたい。
※本稿は2019年12月のものに適宜修正を加えています
文:遠藤徹、ベストカー編集部/写真:AdobeStock、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年1月26日号
■クルマ界の出来事で抑えておきたい 変わること&進化すること
●レジェンドが日本初のレベル3搭載市販車に!?実地試験&搭載車がより具体的に見えてきた
2019年は日産スカイラインの「プロパイロット2.0」が注目を集めたが、その先を行く「レベル3」搭載モデルをホンダが2020年夏頃に発売するという。これは大きなニュースだ。
改正道交法後のレベル3は「一定条件下であれば緊急時を除きシステムが運転し、緊急時に運転を引き継げる態勢なら、ドライバーは前方を向かずスマホ操作やテレビを見ることができる」というもの。それに対応するモデルが売られるなんて……凄い。
2020年夏に改良するレジェンドの一部グレードに、レベル3搭載車を設定する見通し。価格が1000万円近くになりそうだが、クルマに興味がなくてもスマホ好きの若者にとっては、逆に興味を引くネタになるかも!?
さらにはトヨタ。2020年7月に東京・お台場で、「レベル4」(限定地域ですべてシステムが運転)の自動運転車の同乗試乗を実施すると発表。クルマはレクサスLSがベースのP$実験車で、クルマや歩行者が往来する通常交通状況下で行うという。トヨタの技術力と実力を示す絶好の機会となる……か!?
その他、現在一般車両やバスなどを使い、各地で自動運転実証実験を展開中。未来のモビリティへ向け、どこで何が実施されているか一部紹介しよう。
・「空港内の実証実験」(人の輸送や物の輸送)=仙台空港、成田空港など。
・「ニュータウンの自動運転サービス」(一般車両やバスを使用)=東京・多摩ニュータウン。
・「ラストマイル自動走行」(小型カートを使い、無人自動走行による人件費削減が目的)=福井県永平寺町、沖縄県北谷町など。
・「中山間地域における自動運転サービス」(小型カートなどを使い人や物の移動。道の駅が拠点)=北海道広尾郡大樹町、茨城県常陸太田市、長野県伊那市……など。
●トヨタ販売店、全車種併売に
東京エリアは2019年4月から「トヨタモビリティ東京」に変わり、全販売店で全車種を売り始めているが、それが2020年5月には全国規模へ。ユーザーはどの店でも全車種から選べるメリットがあるが、お店側の競争激化は必至!?
●様変わりするカーシェアリング
愛車選びを応援するベストカーとしては寂しい思いもあるが、2020年以降もシェアリングの勢いは止まりそうもない。例えば……「2020年1月よりオリックスカーシェアにMIRAIを導入。都内に36台配備」「個人間のカーシェアサービスが続々と誕生!」「ダイハツ広島販売、2020年もカーシェアを継続」などなどだ。
●「東京モーターフェス」をはじめ、2020年はクルマ関連イベントが満載
2020年もイベントは充実。「東京オートサロン」のあとは1月31日からの「キャンピングカーショー」。さらに「モータースポーツジャパンフェス」(4月中旬)、「東京モーターフェス」(10月頃)とクルマ好きは忙しすぎ!
●タクシー値上げ、2020年2月1日から実施
2%消費増税ぶんの上乗せとして、料金を1~2割値上げする。またですか……。
●2019年3月開始の「高速道路、最高速度120km/h」。2020年以降も続く見通しだ(!?)
諸外国との比較でも、高速道路の最速が100km/hという日本は最低レベルで、欧米では130km/hが中心。狭い日本といえども目的地へ速く進めない現状があったが、2019年3月から新東名・新静岡~森掛川、東北道・花巻南~盛岡南という2区間で「最速120km/hの試行」が実施。2020年以降はほかでも試行されそうだ。
●「羽田空港大増便」で、東京の空は飛行機だらけ
2020年3月29日から羽田空港を離発着する国際便が激増。国際競争に勝つため……が理由とのことだが、都内の空は低空飛行する旅客機だらけになる。なにせ最多5分おきに離発着するというから驚き!
■東京オリンピック、パラリンピック開催でクルマ関連はどうなる?
2020年最大のイベントといえば、なんといっても東京2020夏季オリンピック・パラリンピックの開催。
マラソンがオリンピックでは北海道が会場になることが決定し、すでに東京で実施されることが決まったパラリンピックとは分離開催になるなど、一部で混乱した状況も見られている。
とはいえ、五輪開催による経済効果は日本国内で32兆3000億円を超え、190万人の雇用を生むと試算されている世界最大級のスポーツイベント。それだけに、クルマ関連にもさまざまな影響を及ぼしそうだが、五輪関連で国はどのような施策を打ち出してきたのかをみていこう。
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国交省では、東京都都市整備局などと連携して東京オリンピック・パラリンピック開催時の円滑な通行を確保するため、首都高などでさまざまな道路輸送インフラ整備を推進してきている。
これまでに下の図にあるように首都高晴海線の東雲JCT~豊洲間が2009年2月に開通後、2018年3月には豊洲~晴海間が開通し、計2.7kmを延伸。首都高中央環状品川線も2015年3月に開通し、9.4kmを延伸。このほか、首都高横浜環状北西線も2020年の大会開催前までに開通予定だ。
また、環状2号線を晴海の選手村へのアクセス道路として活用する。2019年度末には地上部道路が開通する予定で、2022年度には本線(地下トンネル)が開通。
この地下トンネル開通に合わせて進められてきたのが東京都による「東京BRT」(バス・ラピッド・トランジット=バス高速輸送システム)。東京駅周辺や銀座、虎ノ門などを発着点にし、東京港臨海部へ結ぶ路線として計画されている。
2020年度内にプレ運行が予定されており、運行は京成バスが設立した新会社「東京BRT株式会社」が担当する。
ちなみに五輪開催中の海外からの訪問客向けに実施されてきた全国高速道路のナンバリングに加え、競技会場周辺の英語表記を併記した道路案内標識の改善についてはすでに完了している。
●首都高で日中100円上乗せされるが……
東京オリンピック、パラリンピック開催期間中(2020年7月20日~8月10日、8月25日~9月6日)は午前6時から午後10時まで自家用乗用車などを対象に首都高の都内区間の通常料金に1000円が上乗せされる。
公共交通やトラックなどの物流車両、障がい者や福祉車両などは除外される。その代わり、期間中にETC車は首都高全線で午前0~4時までは夜間割引として半額になる。五輪開催期間中は大会関係車両や需要の増大などで混雑するため、首都高内での関係車両の円滑な流動を確保するのが目的だ。
これに対し、清水草一氏は「最大3割もの交通量削減を東京都は目指しているけど、それはちょっと野心的すぎやしないかな。だって、首都高だけ交通量減ったとしても一般道はそのぶん混むワケでしょ。大会車両だって首都高だけ走るんじゃないし。一般道でのリスクが逆に増えると思う。
まあ、一般ドライバーにはなるべく開催期間中はクルマを走らせないようにしているんだろうけど、首都高でのロードプライシングも一律1000円上乗せじゃなく、距離によって課される金額を変えたほうがいい」と苦言を呈している。
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