【ラストワンマイルを埋めろ】人手不足に悩む流通業界 ヤマト運輸が導入したEVトラックとは?

【ラストワンマイルを埋めろ】人手不足に悩む流通業界 ヤマト運輸が導入したEVトラックとは?

 空前絶後の人手不足と言われる現在。人手不足による倒産が4年連続最多を記録するなど、深刻の度合いを深めている。

 なかでもとりわけ耳目を集めているのが流通業界だ。アマゾン、楽天などのネットショッピングによる取扱量が増えるなか、とくに「ラストワンマイル」と呼ばれる配送の最終区間におけるの人材難の解消が喫緊の課題となっている。

 各社が取り組みを進めるなか、ヤマト運輸がEV小型トラックを開発したという話題が入ってきた。

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※本稿は2019年12月のものです
文:ベストカー編集部/写真:TOYOTA、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年1月26日号


■ドライバー育成のため西濃運輸は教習所を買収(!)

 ネットショッピングなどの急成長を受けて、物流業界が深刻な人手不足にあることはご存知だと思う。トラックドライバーを育成・確保するため、物流各社はさまざまな対策を講じている。

「大型免許所持者を募集するだけじゃ間に合わない」とばかりに、自ら自動車教習所経営に乗り出したのはセイノーホールディングス(西濃運輸)。

 2018年11月に岐阜県の西濃自動車学校を完全子会社化して、西濃運輸の新入社員が短期間で大型免許を取得できる道を開いた。

 いっぽう「ラストワンマイル」と呼ばれる配送の最終区間では、大型や中型免許を持たない人でも働けるような工夫が進んでいる。その好例が、わざわざ専用の小型EVトラックを開発してしまった、おなじみヤマト運輸だ。

トヨタとヤマト運輸が共同開発したウォークスルーバン「クイックデリバリー」。馴染み深い車体だが、じつは2016年にひっそりと生産終了している。さて、ではヤマト運輸の次の一手は?

■ドイツ企業と連携。普通免許しか持っていない層でも扱えるEVトラック

 ヤマト運輸といえば、トヨタと共同開発した「クイックデリバリー」を思い出す方がいるだろうが、今回の小型EVトラックはなんとドイツ製。

 欧州の郵便・物流大手であるドイチェポストの子会社であるストリートスクーターという会社の「ワークL」というEVトラックに、独自の改良を加えたクルマだという。

ヤマト運輸が開発したEVトラック。40kWhのリチウムイオン電池を積み、最大走行可能距離は100km

 EVである点はCO2削減という点で重要だが、排出ガスを出さない点がイメージ的にも好印象を生みそうだ。

 全長4.7m、全幅1.83mというサイズは、アルファード/ヴェルファイアといったLクラスミニバンよりも小さく、もちろん普通免許で運転できる。女性も含め「普通免許しか持っていない層」が普通に使えることを意図したわけだ。

 内外装には、ドライバーのための心配りが満載。シートは冬場のためのヒーターを備えているほか、1日平均200回という乗り降りを考慮して、ドア側の腿部のサポートが低く抑えられている。

 シフトレバーは「D・N・R」しかないシンプルさ。指1本で操作できるうえ、ドライバーがクルマから離れると自動で駐車ブレーキがかかる。

中央に見えるのがマルチビューモニター。シフトレバーは小さくて指1本で操作できる

 マルチビューモニターも備えている。車両を真上から見下ろすバードビューに加え、Dレンジでは前方、Rレンジでは後方を映し、ウインカー作動時は左右の死角を表示するという親切さだ。

 日本の架装メーカー、トプレックが手がけた荷室は、ドライバーが腰を曲げずに荷物を積み下ろしできるよう床面高を90cmに設定。

 後方のほか左右にもトビラがあり、荷台に上らなくてもすべての荷物にアクセスできる配慮がなされている。荷室高さはゴルフバッグが立てて詰めるように130cmを確保、もちろん冷凍・冷蔵エリアだって完備している。

 ヤマト運輸では、年明けから、この小型EVトラック500台を1都3県で稼働させ、順次拡大していくという。効果のほどを見守りたい。

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