重要な国内マーケットの中核をなした2代目
そこで2005年に発売された2代目ヴィッツは開発に力を注ぎ、初代モデルの路線を踏襲しながら、内外装の造り、走行安定性、乗り心地をさらに向上させている。
ちなみにトヨタの世界販売台数に占める国内比率は、2019年はOEM軽自動車を含めて17%だが、2000年代の前半は約30%を占めていた。国内市場は今よりも重要だったから、当時のトヨタは、各カテゴリーで販売ナンバーワンを取ることにこだわった。
例えばホンダがストリームで注目されるとライバル車のウィッシュを発売して、日産エルグランドが好調に売れると、グランビアなどをアルファードに統合して商品力を大幅に高めた。
いずれも販売合戦で勝利しており、ヴィッツもフィットやマーチに負けるわけにいかなかった。
2代目ヴィッツは初代の路線を踏襲しながら機能を幅広く向上させたから、2005年には1カ月平均で1万1000台を登録している。フィットの1万500台を抑えて、コンパクトカーの1位になった。
このように初代と2代目のヴィッツは、販売面で多少の浮沈はあっても商品力が高く、好調に売れた。
3代目でコンパクトカーの覇権争いから脱落
ところが2010年に発売された3代目で問題が生じた。2代目に比べて内装の質と乗り心地が悪化して、商品力を下げたからだ。
ネッツトヨタ店のセールスマンが、「これでは2代目ヴィッツを使うお客様に、新型への乗り替えを提案できない」と頭を抱えるほどであった。
3代目ヴィッツは、フィットに対抗するため、後席の足元空間と荷室の奥行を拡大した。それでもフィットを超えられず、乗り心地を含めた質の低下と相まって売れ行きを低迷させた。
この背景には、2008年に発生したリーマンショックに基づく開発費用の削減もあった。
しかもトヨタアクアが2011年に投入され、3代目ヴィッツの売れ行きはいっそう低迷した。
新型ヤリスは原点回帰
新型ヤリスの開発者は、「初代と2代目のヴィッツは、輸入車を含めて他車からの乗り替えも多かった。しかし3代目は従来型ヴィッツからの乗り替えが中心になり、新規のお客様を獲得できず、次第に売れ行きを下げた」と振り返る。
この3代目ヴィッツの商品開発を補正して、初代と2代目の路線に戻したのが、4代目の新型ヤリスだ。車名をヤリスに変更した背景には、3代目と決別してイメージを刷新させる意図もあるだろう。
言い換えれば原点回帰だから、新型ヤリスのイメージは初代ヴィッツに近い。外観には引き締まり感が伴い、インパネなどの内装は上質で、走行安定性と乗り心地のバランスもコンパクトカーの中では優れた部類に入る。
その代わり3代目で広げた後席と荷室の広さも、初代と2代目に近付いた。前後席に座る乗員同士の間隔は、3代目の先代型に比べると37mm縮まり、後席は床と座面の間隔も32mm減ったから、後席は腰の落ち込む少し窮屈な座り方になる。
荷室ではリアゲートを寝かせたから、背の高い荷物を積みにくい。つまり後席と荷室の実用性を割り切り、運転席の周辺と走りの水準を高めることで、ヤリスはドライバー本位の魅力を強めた。
初代と2代目のヴィッツ、4代目となるヤリスを並べると、ドライバー本位の性格も継承されて進化がわかりやすい。
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