パンクしても走ることができる、ユーザーにとってある意味理想的なタイヤとも言えるランフラットタイヤだが、普及する気配があまり感じられない。
そもそも積極的にランフラットタイヤを純正採用しているはBMWくらいで、そのほかのメーカーのラインナップは増えていないため買うに買えないというのもある。
ランフラットタイヤが普及しない要因は何なのか? このままマイナーな存在で終わってしまうのか? ブレークスルーする可能性はないのか? などについてタイヤのスペシャリストの斎藤聡氏が考察する。
文:斎藤聡/写真: MICHELIN、LEXUS、平野学、奥隅圭之、池之平昌信、西尾タクト、Adobe Stock
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ランフラットタイヤの採用車が少ない
パンクしても一定距離走行可能なタイヤとして注目を集めたランフラットタイヤだったが、注目度の割には普及せず、現在はBMWとレクサス一部車種、それに日産GT-Rなどに採用されているにとどまっている。
ランフラットタイヤはパンクして空気圧が0になってもタイヤがつぶれない工夫をしたタイヤのこと。現在は国際標準化のISO規格を採用しており、『速度80km/hで80km走行可能なタイヤ」と定義されている。
ランフラットタイヤは軍用としてはかなり古く、1930年代から軍用トラックや兵員輸送車などに採用されていたそうだが、再び脚光を浴びることになったのは2000年台初頭。
筆者の記憶によれば、ミシュランがPAXシステムというランフラットタイヤの開発に取り組むことを発表したところから始まっているのではないかと思う。
ちょうどこの頃、クルマのデザインにおいてもスペアタイヤのスペースがなくすことができればデザインの自由度も広がるといった意見も聴こえてきた。
PAXシステムの衰退とサイド強化型の台頭
PAXシステムは、リムから外れないタイヤ、専用設計の一体型ホイール、空気圧センサーからなるタイヤシステムだ。
このタイヤの開発に当たって、単独ではなく共同開発を呼びかけピレリ、グッドイヤー、住友ゴムといったメーカーが参入したことで、ほんの一瞬だが、クルマのタイヤはランフラット化するといった空気が流れたのだった。
けれどもこのプロジェクトは立ち消えとなってしまった。
ミシュランの考案したPAXシステムは中子式と呼ばれるタイプに入るのだ。この方式は、パンクしていないときは乗り心地がいいが、パンクするとホイール内に組まれた中子というリングが、タイヤがつぶれるのを支える仕組みになっている。
そのため、パンクすると路面からのショックがクッションを持たない中子からホイールに伝わってしまうため、乗り心地が悪いばかりでなく振動とショックによってサスペンション回りのブッシュ類が大きなダメージを受けてしまうこととなった。
そんなわけで、PAXシステムは頓挫してしまったのだが、中子型とほぼ同時に考案されていたサイド補強型が脚光を浴びることになる。
タイヤの側面=サイドウォールに補強ゴムを追加したもので、現在市販車に採用されているランフラットタイヤはこの方式となっている。
当初(2000年台)はサイド補強部分が硬くて乗り心地が悪かったが、次第に改良が進み現在に至っている。
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