パワーユニット以外にも慣らしが必要な箇所はある
今まではパワーユニットや駆動系について慣らし運転の必要性を語ってきたが、クルマにとって慣らしが必要なのはパワーユニットと駆動系だけではない。
電子部品のエージングを考えなくても、クルマにはその他にも可動部品が無数に存在する。例えばサスペンションだ。
コイルスプリングは、初期のヘタリを予め取っておく「セッチング」という工程が施されている。
これは新品のスプリングに荷重をかけ、一定時間縮めておくもの。セッチングをしないと、新車からしばらく走っただけで初期ヘタリにより、車高が下がってしまう可能性があるからだ。
セッチングを施されているから、スプリングは10万kmくらいまでは本来のバネレートから大きくヘタることなく使い続けることができるのだ。
ただしスプリングは初期の馴染みを高めているが、ダンパーは組み上げたら工場から納車までの短い距離をゆっくり回送されているだけだ。そのため新車ではオイルシールの締め付けが強くフリクションも大きい。
ダンパーの伸縮方向に対して真っすぐに力が掛かっているならいいが、実際にはダンパーには曲げ応力も発生し、ピストン回りやシェルケースとインナーロッドのシール部に負担が掛かっている。
したがってシールの締め付けやピストンとシリンダーのクリアランスが小さい状態で横方向に大きな力が加わると、シール表面やシリンダー内壁の摩耗や傷みが早まる。それは減衰力の低下を早める原因の一つになるだろう。
ディスクブレーキは、最初の100km程度はパッドのあたりが均一ではなく、その状態で頻繁に強くブレーキを掛けると、ディスクローターの偏摩耗につながる可能性が高まる。それはブレーキング中のジャダー(振動が出て、ステアリングが揺れる)の原因になる。
慣らしをすることによって得られるメリットとは
慣らし運転が重要だと考えるのであれば、エンジン始動直後の暖気走行をしてやったり、長期間エンジンを動かさない状態からのエンジン始動、いわゆるドライスタートはなるべく避けるよう定期的にエンジンを掛け、クルマを動かしてやることも大事なことだ。
もちろん慣らしなどすることなく普通に乗り回しても壊れることはないし、新車保証のうちならトラブルや不調が起こっても修理してもらえるが、そこまでコンディションが悪化することはなく、徐々にクルマのフィーリングに変化が出てくるのだ。
最初のうちは特に優しく扱って小まめなメンテナンスを心がければ、それは確実にクルマのコンディションに反映される。
それが下取り価格にまで影響するとは言えないが、長くそのクルマの本来の乗り味を維持したい、良い感じに各部の硬さが取れた本来の乗り味を長く楽しみたいなら、やはり慣らし運転は必要ではないだろうか。
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