新型登場後も旧型を売り続ける弊害
レガシィは、北米では2017年7月に新型へフルモデルチェンジしながら、日本仕様は2カ月後に改良を加えた。改良するとなれば、順番の遅れではすまない。腰を据えて「まだまだ旧型を売るぞ」という構えだ。
そして今の新型車は、フルモデルチェンジを行うと安全性能を幅広く向上させる。レガシィは新型になってプラットフォームが一新され、走行安定性や衝突安全性を高めた。ドライバーの疲労などを検知するドライバーモニタリングシステムも新たに採用している。
アコードも同様で、新型は新しいプラットフォームを採用した。走行安定性と乗り心地を向上させ、ボディの衝撃吸収構造も進歩している。
安全性の向上は、マイナーチェンジでは対応できず、フルモデルチェンジが必要なことも多い。そのためにフルモデルチェンジは進化が大きい。
また今は昔のように4年ごとのフルモデルチェンジは行われず、コストとの兼ね合いもあって、その周期は6~10年に長期化した。そうなるとフルモデルチェンジの進化がますます大きくなる。
新型の進化が著しいのに、海外で新型、国内で旧型を扱えば、日本のユーザーには海外よりも安全性の劣った危険なクルマを売ることになってしまう。
新旧モデルで安全性に差が付くなら、世界同時のフルモデルチェンジが無理でも、時間差を縮める努力はすべきだ。
フルモデルチェンジの周期が8年なのに、2年後に登場すれば相当な遅れだろう。8時間労働の職場で、2時間遅刻したのと同じだから、責められても仕方ない。
15%以下の小さな日本市場は二の次!?
特にアコードとレガシィは、長い歴史に支えられたホンダとスバルの基幹車種だ。日本のユーザーに愛用され、育てられ、世界で通用する商品に成長した。
「レガシィ」には伝承の意味があり、そのとおりのクルマにするなら国内市場は大切だ。旧型を売る時点でレガシィの本質を見失っている。
日本でアコードとレガシィのフルモデルチェンジが遅れた背景には、2つの理由がある。
まずは他社も含めて、日本車メーカーが海外市場を優先するようになったことだ。2019年にホンダが世界で生産した4輪車の内、日本国内で売られた比率は14%だった。
スバルは13%だ。両社とも世界生産台数の85%以上を海外で売り、日本は15%以下の小さな市場になったから軽く見られてしまう。
2つ目の理由は、この2車種がLサイズカーに肥大化して、日本で売りにくい商品になったことだ。それでも国内で2年間も旧型を売り続ける理由にはならない。
日本の事情を汲み取ることが重要
キックス、シビック、CR-Vは、アコードやレガシィのようなフルモデルチェンジの遅れではないから事情が異なる。
キックスは先に述べた通り、ジュークが海外向けの商品になったことで、国内導入が決まった。このタイミングがキックスのフルモデルチェンジ周期と合っていない。
シビックとCR-Vも、モデルサイクルの途中で導入されたから、発売時点で古さを感じた。
それならRAV4のように、海外で新型にフルモデルチェンジした直後(といっても約4カ月は遅れたが)に導入したほうが、先進性や新鮮味も残っているから日本でのイメージもいい。
発売時期も重要だ。
シビックの復活は、N-BOXのフルモデルチェンジ、先代フィット/シャトル/ステップワゴンのマイナーチェンジと時期が重なった。
販売店が多忙だったこともあり、伝統あるシビックを国内で復活させたのに、十分なインパクトを得られなかった。
CR-Vは「日本国内のSUVはコンパクトなヴェゼルで十分」と判断されて海外専用車になったが、その後にSUVの人気がさらに高まり、「オデッセイなど上級車種からの乗り替えはヴェゼルでは対応できない」という話になって復活した。
シビックも含めて、ホンダの対応は場当たり的だ。
たとえ日本が15%以下の市場になっても「オマケ」とは考えず、日本の事情を汲み取って新型車を発売する必要がある。そうしないと成功は望めない。
現行CR-Vも月販計画を1200台に設定して発売されたが、2019年の時点で1087台だから、早くも計画台数を割り込んだ。日本のメーカーなのだから、日本のユーザーと国内市場に、真剣に取り組んでほしい。
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