【国産メーカー大打撃か!?】新欧州燃費規制で苦境のメーカーと無傷の会社【クルマの達人になる】

【国産メーカー大打撃か!?】新欧州燃費規制で苦境のメーカーと無傷の会社【クルマの達人になる】

 自動車に対する欧州のCO2排出規制が、新時代に突入する。

 欧州連合(EU)は2021年の燃費規制を強化。欧州で販売するメーカー平均で、走行1kmあたりの二酸化炭素(CO2)排出量を95g/km以下に抑える必要があるというものだ。

 達成できなければ高額な罰金の支払いもあるため、国内、欧州自動車メーカー問わず対応に乗り出している。近年、欧州自動車メーカーの間でプラグインハイブリッド車(PHEV)や電気自動車(EV)を導入する動きが活発になっているのは、このCO2規制へ向けた対応なのだ。

 だが、2021年からの開始までには時間的猶予はあまりない。そうなると国内メーカーは適応できるのか? 適応できず、大打撃を受けるメーカーはないのか? メーカーの先行きにも大きな影響を及ぼす問題について考察する。

文:国沢光宏/写真:Adobe Stock、編集部、SUBARU
ベストカー2020年4月10日号

【画像ギャラリー】世界で厳しくなる規制に対応して国産メーカーが投入するPHEV&EVを紹介!!


■心配なしはトヨタ! マツダ&スバルは対応遅れで直撃を免れず

 クルマ作りの根幹に影響を与える、本格的な欧州燃費規制が来年から始まる。何度かベストカーでも紹介してきたが、ここにきてやっと日本勢の動向も予測できるようになってきたので紹介したい。クルマの達人なら知識として持っておくといいと考えます。

 まず2021年欧州燃費基準だけれど、自動車メーカーの平均燃費ということになる。燃費いいクルマを作り、利益率大きい燃費悪いクルマとミックスさせてもいいし、全車同じくらいの燃費にしたってよい。

 規制値は欧州燃費モードの少し古い基準の『NEDC』で95g/kmとなっている。1km走るのに95gしか二酸化炭素を出しちゃいけないというもの。ちなみにNEDC、甘いと言われている『JC08』より20%くらい甘い。JC08だと20km/LをイメージしてもらえばOK(ディーゼル車は軽油に含まれている炭化水素多いため10%くらい厳しくなり22km/Lくらいです)。つまりJC08の平均燃費で20km/Lを達成すれば問題なしということ。

 気になるペナルティだけれど、95g/kmを1g超えるごとに約1万2000円と高額。大ざっぱに言ってJC08で18km/Lだと12万円加算です。具体的に書くと、SKYACTIV-X搭載のマツダ「マツダ3」の場合、WLTCで17.4km/L。1台売るごとに10万円くらい払わなくちゃならない可能性出てくる(2021年式の燃費は不明)。

2019年12月5日に発売されたSKYACTIV-Xを搭載した「マツダ3」だが、WLTCモード燃費は17.4km/Lと、新欧州燃費規制をクリアをすることは厳しい

 10万円は「税金負担税」のような意味合いになります。10万円はユーザーが負担するとなれば割高になるし、メーカー負担であれば利益を減らすことになる。

 ここまで読んで「ベンツやBMWのような性能重視のクルマどうするんだ?」と思うかもしれないが、心配ありません。例えばベンツ「Sクラス」のようなクルマだと、基準の2倍くらい燃費悪いクルマでも(JC08で10km/Lの車種ですね)、115万円くらいの環境負担金を払えばよい。車両価格の10%なら出す人もいると思う。

欧州メーカーでは、性能重視のモデルについては環境負担金を覚悟しているメーカーもあれば、ボルボなどのように、全車種で積極的に電動化を進めるメーカーもある

 二酸化炭素大量排出のクルマに乗ると社会的イメージ悪いと言うなら、100万円以上割高になるが、PHVなど選べばよい。

 やっと本題です。日本勢やいかに。まったくペナルティと縁がないのはトヨタ。新型「ヤリスHV」のNEDC燃費は64g/km! ヤリス1台売ったら105g/kmのクルマ3台か、110g/kmのクルマ2台売ってもペナルティなしになる。そればかりかRAV4のハイブリッドすら燃費基準をクリア。平均燃費は圧倒的に世界一だ。ホンダや日産も2モーターハイブリッドの技術を投入すれば欧州燃費規制をノーペナルティでクリアできると考えていいだろう。

 相当厳しいのはマツダとスバルです。両ブランドともに2021年欧州燃費基準をクリアできる車種を持っていない。実質的な値上げとするか、メーカーが負担するのか不明ながら、すでに欧州のシンクタンクで「マツダは経営状況におけるペナルティの金額負担率は最も大きくなる」と評価している。

スバルは北米市場に、トヨタの「THS-II」をベースに開発したシステムを搭載する「クロストレック プラグインハイブリッド」を投入したが、欧州および日本市場には投入予定はなし。この技術の投入なくして、規制クリアは厳しいだろう

 電気自動車MX-30をたくさん売らない限り、欧州市場は赤字になるかもしれません。スバルは遅いクルマを実質値上げすることになり、かなり厳しくなる?

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