ベンツ 直6エンジン復活 なぜV6から回帰?

 1度は“時代遅れ”と見なされたエンジンをベンツが復活させる。今年のマイナーチェンジでベンツは、Sクラスに直列6気筒エンジン搭載モデルを追加するのだ。

 BMWなど一部メーカーを除いて、今ではすっかりV6に置き換えられてしまった直6が復活する理由は何?

 文:鈴木直也、国沢光宏/写真:Daimler
ベストカー2017年4月26日号


電動化技術の進歩で直6に再び脚光

ベンツは1998年発売のW220型Sクラスで、それまでの直6に替わり初めてV6を採用

 ベンツが新しいSクラスで直6を復活させるというニュースには驚いた。

 だって、1997年にベンツが初のV6エンジンを投入した時、衝突、燃費、排ガスなど、どれをとっても「これからは直6よりV6が有利」って宣言したんだよ。

 まず、なぜいま直6を復活させるか? 技術的な建前として電動化技術の進歩で直6というレイアウトが見直されている、という事情がある。

V6よりスペース効率に優れる直6

 直6が廃れた原因は、パッケージング面でV6より不利なこと。特に衝突安全については説得力があった。

 にもかかわらず、今度は直6のほうがイイというのは、最近はエンジンそのものだけではなく補機類と組み合わせたパッケージが重要となっているためだ。

 キーポイントは、新しいベンツの直6が48V化した統合スタータージェネレータ(ISG)と補助電動スーパーチャージャーを採用していること。このシステムはかなりかさばるようで、V6だとレイアウトが厳しくなる。

こちらが新たに追加されるM256型の直6エンジン。写真のとおり、ジェネレーターなどの補器類が組み込まれたユニットで、既存のV6を置換するエンジンとなる

 ISGを使ったマイルドハイブリッドは、いまやスズキのワゴンRでもおなじみの技術だが、これを48V化したベンツの場合、エネルギー回収能力は17psまで向上している。

 現在明らかになっている新しい直6エンジンのスペックは、3Lターボで402ps/500Nmを引き出すというもの。

 大容量ターボで余裕の高出力を発揮しながら、低速域では補助電動スーパーチャージャーでタイムラグのない加速と、ハイブリッドのアシストが得られるとすれば、これはかなり画期的なエンジンといっていいかもしれない。

排ガス対策でも直6に風向き

 もうひとつ注目すべきは、排気をクリーンに処理するためには、直6のほうがレイアウト上都合がいいこと。

 排気温度を下げずに排ガスを触媒に導くには、排気が片側に集約される直6のほうが有利。

 また、ベンツは環境技術をリードする姿勢を示すため、排気ガスの粒子状物質を軽減するフィルターを装備する予定だが、こういう複雑な排気処理システムを導入するには、幅がスリムな直6でないとエンジンルームに収まらない。

 さすがベンツ。直6復活には合理性があるんだねと、思わず納得しそうになる。

V6に舵を切ってから20年。直6エンジンは、電動スーパーチャージャーを組み合わせた新世代のユニットとして、Sクラスに搭載されることになる

合理性だけでは語れない直6の魅力

 しかし、ここまで書いてきたことは、基本的にすべて直4で対応可能だ。必ずしもわざわざ直6を復活させる必然性があるとはいえないのでは?

 やはり本音の部分では、直6を復活させるもうひとつの理由としてエンジンのエモーショナルな魅力、いわゆる官能性能への期待が少なからずあると思う。

 高価なクルマ、高級なクルマになればなるほど、合理性だけではユーザーを満足させることができない。

 「やっぱりストレートシックスっていいよねぇ!」

 ベンツが直6を復活させる本当の意味は、なんだかんだ言ってもユーザーからこういう感嘆の声を引き出すことにあるんじゃないかと思う。

 【鈴木直也】


 ベンツが直6を復活させるとはいえ、やっぱり6気筒エンジンの主流はV6だ。では、現実的にみて直6にはどんなメリット・デメリットがあるのか? 国沢光宏氏が解説する。

理論上は完全バランスもFFには不向き

 エンジンにおける最大の課題は「振動」である。振動が出ると不快なだけでなく、ボルトやナットの緩みや、ボディの金属疲労など出てしまう。

 エンジンの歴史=振動を減らす歴史と言い換えてもいいほどだ。

 そんななか、理論上まったく振動を出さない完全バランスのエンジンがある。そいつが直列6気筒だ。ピストンの上下によって発生する振動+爆発による振動を打ち消してくれるため、モーターのような回転フィールが実現可能。

 実際は長いクランクシャフトがねじれたり、気筒ごとの重量差など出てしまい振動ゼロにならないものの(日産のL型やトヨタのG型も高回転域で微振動出た)、高い工作精度と優れた材料を使うことによりすばらしいエンジンになる。

 弱点は前後方向に長く、FFで横置きしようとすれば難しい(ボルボなど無理して積んだクルマもある)。

 また、硬いエンジンは衝突時に潰れにくいため、安全性でも不利。

 【国沢光宏】

日産最後の直6エンジン搭載モデルとなったR34型スカイライン。今や国産に直6エンジンは存在しないが、それはデメリットもあるから。国産の直6は今後登場するか!?

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