排ガス対策でも直6に風向き
もうひとつ注目すべきは、排気をクリーンに処理するためには、直6のほうがレイアウト上都合がいいこと。
排気温度を下げずに排ガスを触媒に導くには、排気が片側に集約される直6のほうが有利。
また、ベンツは環境技術をリードする姿勢を示すため、排気ガスの粒子状物質を軽減するフィルターを装備する予定だが、こういう複雑な排気処理システムを導入するには、幅がスリムな直6でないとエンジンルームに収まらない。
さすがベンツ。直6復活には合理性があるんだねと、思わず納得しそうになる。
合理性だけでは語れない直6の魅力
しかし、ここまで書いてきたことは、基本的にすべて直4で対応可能だ。必ずしもわざわざ直6を復活させる必然性があるとはいえないのでは?
やはり本音の部分では、直6を復活させるもうひとつの理由としてエンジンのエモーショナルな魅力、いわゆる官能性能への期待が少なからずあると思う。
高価なクルマ、高級なクルマになればなるほど、合理性だけではユーザーを満足させることができない。
「やっぱりストレートシックスっていいよねぇ!」
ベンツが直6を復活させる本当の意味は、なんだかんだ言ってもユーザーからこういう感嘆の声を引き出すことにあるんじゃないかと思う。
【鈴木直也】
ベンツが直6を復活させるとはいえ、やっぱり6気筒エンジンの主流はV6だ。では、現実的にみて直6にはどんなメリット・デメリットがあるのか? 国沢光宏氏が解説する。
理論上は完全バランスもFFには不向き
エンジンにおける最大の課題は「振動」である。振動が出ると不快なだけでなく、ボルトやナットの緩みや、ボディの金属疲労など出てしまう。
エンジンの歴史=振動を減らす歴史と言い換えてもいいほどだ。
そんななか、理論上まったく振動を出さない完全バランスのエンジンがある。そいつが直列6気筒だ。ピストンの上下によって発生する振動+爆発による振動を打ち消してくれるため、モーターのような回転フィールが実現可能。
実際は長いクランクシャフトがねじれたり、気筒ごとの重量差など出てしまい振動ゼロにならないものの(日産のL型やトヨタのG型も高回転域で微振動出た)、高い工作精度と優れた材料を使うことによりすばらしいエンジンになる。
弱点は前後方向に長く、FFで横置きしようとすれば難しい(ボルボなど無理して積んだクルマもある)。
また、硬いエンジンは衝突時に潰れにくいため、安全性でも不利。
【国沢光宏】
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