ヤリスやフィットのヒットが、国内市場をにぎわせている陰で、堅実に売れ続けている「トヨタ シエンタ」。
現行シエンタが登場したのは2015年7月。発売翌年の2016年は12万5832台を売り上げ、登録車販売台数で3位となったものの、その翌年2017年は7位(9万6847台)と少しおちこんだ。
しかし、2018年は5位(9万4048台)と、台数はほぼ横ばいながらも順位を上げると、昨年(2019年)は、1位プリウス(12万5587台)、2位ノート(11万8472台)に続き、11万880台を売り上げ、3位にランクイン、販売台数をジリジリと伸ばしている。
シエンタが、これほど売れ続けているのには、どういった理由があるのだろうか。
文:吉川賢一、写真:トヨタ、ホンダ
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シエンタはなぜ売れ続けるのか?
シエンタが売れ続けるワケ①「ファミリーカー」に徹底してこだわったつくり
シエンタは、全長4300mm以下、全幅1700未満の5ナンバーサイズのコンパクトミニバンだ。コンパクトで見切りの良いボディ形状によって狭い場所での取り回しがよく、日本の道路事情ではバツグンに運転しやすい。
主なターゲット層は、子育て世代。シエンタには、ファミリーカーとしての使い方に合わせた工夫が、随所に入れこまれている。マンションの駐車場など、狭い駐車場でも邪魔にならないボディサイズに加えて、子供が乗り降りしやすいスライドドアであること。
そして、荷室にたくさんの荷物を積み込んでも後方視界が良い、フロントウィンドウが大きく見切りが良いので、運転が苦手なママでも運転しやすいなど、シエンタにはファミリーカーとしてほしい要素がすべて備わっている。
子育て世代は、実はとても「美味しい」マーケット。移り変わっていくブームとは違って、子育て世代は常に居続けてくれるからだ。2~4歳児をターゲットにしたアンパンマンや戦隊ヒーロー、小島よしおが廃れないのと、同じ原理だ。
シエンタが売れ続けるワケ②ブームを秒で捉える、トヨタの巧みな販売戦術
シエンタは、デビューから3年後となった2018年9月のマイナーチェンジで、それまであった3列シート7人乗り仕様に加え、3列目を取り払い、広い荷室空間を実現した2列シート5人乗りグレード「FUNBASE(ファンベース)」を追加した。
ここ数年で人気が出始めたキャンプブームにあやかり、アウトドアグッズをたくさん積んで、ファミリーや若い友人たちと、海や山へとレジャーに出かける。
そういったシーンにピッタリあう、ブラックマイカ×ベージュをテーマカラーにしたシエンタを、トヨタは即座に用意したのだ。
さらに、2019年10月には、特別仕様車「GLAMPER(グランパー)」を追加。ドアミラーやホイールなどをブラックで統一し、さらにイメージをアウトドアに向ける方向へシフトさせた。
ブラックホイールとベージュのカラーできめたクルマは、いかにもキャンプ場にありそうなコーディネイトに成功している。
大きなSUVで行く本格的なキャンプにも憧れるが、手間もお金もかかる。そこまでしなくとも、ファミリーで楽しくデイキャンプがこなせれば良い、というニーズに応えた、この特別仕様車の効果もバツグンで、2019年のシエンタの販売台数は、前年に対し18%も伸びた。
ちなみにシエンタは、6月2日にも一部改良がなされる。流行をかぎ取り、即座に対応した商品を立て続けに出し続けられるトヨタの体力には、他のメーカーは圧倒されている状況だろう。
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