【シエンタ、ハリアー、RAV4…】カムバックに成功したクルマたち

【シエンタ、ハリアー、RAV4…】カムバックに成功したクルマたち

 最近、一度販売終了したクルマが再登場して、ヒットを飛ばしている例がたくさんある。

 RAV4、ハリアー、ロッキーなど、軒並み大ヒットしているクルマばかりである。こうしたクルマたちはカムバック賞をあげたくなりませんか?

 そこで、なぜ、一度は販売終了したのに、再登場して大ヒットすることができたのか? モータージャーナリストの清水草一氏がその真相に迫る!

文/清水草一
写真/ベストカーWEB編集部

【画像ギャラリー】この生産終了車はカムバックするか?


松坂大輔選手のようにカムバックしたクルマ!?

 2019年シーズン、松坂大輔投手が西武ライオンズに復帰した。ライオンズファンとしては、こそばゆくもうれしい。

 松坂投手が今年活躍できるかどうかは未知数だが、度重なる故障で一度は終わったと思われた選手生命が、一昨年奇跡的に復活し、見事6勝を挙げて中年に勇気を与えたのは記憶に新しい。

 松坂選手は大リーグから日本への復帰以来、ありとあらゆるリハビリ治療を受けてきたが、3シーズンも投げられない状態が続いた。

 ところがこの年のシーズン前、本人によれば「ある施設で、先生が肩をはめてくれたんです」とのこと。それ以来、突然投球ができるようになったという。そういうことってあるんですね……。

 自動車の世界でも、一度は生産中止または販売中止になったものの、復活して再度ヒットを飛ばしたクルマは非常に少ないが、確かに存在している。そんな松坂大輔な奇跡のクルマたちを紹介していこう。

初代シエンタ/2010年8月販売終了→2011年5月再販売 

★わずか8カ月でカムバック

一度は販売終了したものの、販売店やユーザーからの反響の大きさから再販売することになった珍しいケース
一度は販売終了したものの、販売店やユーザーからの反響の大きさから再販売することになった珍しいケース

 シンプルなスタイルと丸いおメメがかわいらしい初代シエンタは、2003年の登場以来、3列シートを持つコンパクトサイズのミニバンとして、手堅いヒット車になった。

 発売から5年後の2008年。後継モデルのパッソセッテ(ダイハツが開発を担当)が登場。しばらくはシエンタも併売されたが、2010年8月に販売が終了した。

 ところが、パッソセッテ(ダイハツの姉妹車はブーンルミナス)の売れ行きは大コケ状態。このクルマ、走りも見た目も内装もすべてが安っぽかった。

 車名の通りベースはパッソ。サイズはシエンタよりわずかに大きかったが、ファンカーゴ+カローラスパシオがベースのシエンタと比べると、明らかに格落ちだった。

 シエンタの販売終了によって、売れ筋のコンパクトミニバンを失った格好となったディーラーからの突き上げもあり、トヨタは計画を変更。

 販売終了からわずか9ヵ月後の2011年5月、安全装備などを新法規に合わせた上で生産・販売が再開され、そのまま2015年まで生き残って、2代目シエンタにバトンタッチ。DNAを残すことにも成功した。

 初代シエンタが復活できたわけは、派手さはないもののパッケージングが非常にすぐれていたことがある。

 3列目シートもけっこう使える広さがあり、なおかつその3列目は2列目シートの下に収納できた。これは全長4100mmクラスのミニバンとしては出色のパッケージングだった。

 スタイルもあまり飽きの来ない癒し系。乗り味もふんわりと実に優しく、母の胎内にいるような安らぎを感じた。

 初代シエンタは、ママみたいな存在だったがゆえに、古くなっても見捨てられず、変わらず愛されたのでしょう。

2011年5月に復活した際、角目のDICEを設定した(右)
2011年5月に復活した際、角目のDICEを設定した(右)

ハリアー/2012年9月販売終了→2013年12月国内専売モデルとして復活

★約1年ぶりにカムバック

2013年12月に国内専売モデルとして復活した3代目ハリアー
2013年12月に国内専売モデルとして復活した3代目ハリアー
2012年9月に販売が終了した2代目ハリアー
2012年9月に販売が終了した2代目ハリアー

 クロスオーバーSUVの草分けとして1997年12月に登場したハリアーは、2003年2月に2代目へのバトンタッチ後もグローバルで大いにヒットしていたが、2009年1月、ハリアーのレクサスブランド版である「RX」が登場。ハリアーはモデルチェンジしてもらえないまま、約3年間販売が継続された。

 2012年9月にはいよいよ販売が終了したが、ユーザーや販売店からの強い要望により、約1年間の空白の後、4代目RAV4(日本未発売)をベースに、ゴージャス感を強調した国内専用SUVとして復活。3代目の登場となった。しかもこれがまたヒットとなったのだから実にしぶとい。

 ハリアーが復活できたのは、やはり初代、2代目がヒットして、多くのファンを開拓していたことが大きい。彼らにとってはレクサスRXではなく、ハリアーでなくてはダメだった。

 その背景には、ハリアーに比べてレクサスRXは価格が高すぎるということと、トヨタディーラーの顧客管理の強さがある。

 ハリアーのファンは、従来通りのトヨタディーラーの担当者(異動はほとんどない)から、そこそこの価格でゴージャスかつ都会的なSUVを買いたかったのである。

RAV4/2016年8月販売終了→2019年4月発売

★約2年8ヵ月ぶりにカムバック

2019年4月にカムバックして大ヒットを続けている5代目RAV4
2019年4月にカムバックして大ヒットを続けている5代目RAV4
2016年8月に販売終了した3代目RAV4
2016年8月に販売終了した3代目RAV4

 1994年5月に登場した初代RAV4は、5ナンバーサイズの小型SUVで、愛らしいデザインがウケて日本でもヒットしたが、その後代を重ねるごとにボディサイズが大きくなり、国内販売台数は減り続けていた。

 4代目にいたって、ついに事実上の姉妹車であるハリアーが発売されたこともあり、国内導入見送り。2016年8月にいったん消滅となった。

 4代目の全幅は1845mmに達していたし、当時の日本はSUVブームと言えるほどではなく、販売が見込めないと判断されたのだ。

 ところがその後、SUVブームが日本にも波及。海外ほどではないにせよ、かなりの台数が売れるようになった。

 国産SUVの大型化も進み、ハリアーはもちろんのこと、全幅1820mmのエクストレイル、1840mmのCX-5が、特段の抵抗なく売れていた。

 こういう状況になれば、RAV4も売れる可能性がある。そう判断したトヨタは、5代目の登場とともに国内でもRAV4を2019年4月に復活させた。

 ただし月間販売目標台数は3000台/月と控え目。実際にはその約2倍も売れているから、復活は大成功だった。

 RAV4が復活できたのは、日本でも徐々にSUVブームが盛り上がってきたことと、日本人の全幅に関するこだわりが薄れてきたこと。

 そして新型のデザインが日本人が好む直線基調になり、顔つきもランクル的ないかついものに変わって、「これなら日本でも売れるかも」となったからだろう。

 加えて日本では、ジムニーの大ヒットを見てもわかるように、本物志向の高まりもあった。RAV4は4WD機構がより本物志向になっていたので、その点でもアピールできると考えたのかもしれない。

スープラ/2002年8月販売終了→2019年5月発売

★約17年ぶりにカムバック

2019年5月に復活した現行スープラ。3L、直6ターボのRZの人気は凄まじく完売状態で現在は買うことができない
2019年5月に復活した現行スープラ。3L、直6ターボのRZの人気は凄まじく完売状態で現在は買うことができない
2002年8月に生産が終了したA80型スープラ。現在でも高値でなかなか手が出ない
2002年8月に生産が終了したA80型スープラ。現在でも高値でなかなか手が出ない

 スープラは1993年から2002年まで生産された4代目を最後に消滅していた。世界的なスポーツカー需要の縮小によって、ブランド力の弱い中途半端な存在だったスープラが生き残る余地はなくなりつつあったのだ。

 末期になり、映画『ワイルドスピード』の大ヒットでスープラブームが起きたのは想定外だったが、それとて一部カルトマニアによる絶版車ブームに過ぎなかったとも言える。

 そのスープラが17年ぶりに復活できたのは、第一に豊田章男社長のスポーツカーに対する情熱が挙げられる。文化としてスポーツカーを残さなくてはいけないという氏の哲学が、スープラ復活の第一の要因だ。

 ビジネス的には、BMWと協業することでコストを圧縮、同時に従来モデルより上級移行させた。スポーツカー人気は中高年富裕層が中心であり、プレミアム感が重要なのだ。

 生産台数を絞ったおかげで飢餓感が高まって、感覚的な人気を高めることにも成功した。これまたプレミアムスポーツカーの常套手段である。国内の月販目標台数は220台と非常に少ない。3Lターボを積むRZは相変わらず納車待ち1年に近い状況が続いていて、買いたくても買えない。

 結局、昨年の国内販売台数は880台に終わった。今年に入ってようやく供給体制が整ったのか、1月は400台が登録されている。

ダイハツロッキー/1997年4月販売終了→2019年11月発売

※約22年ぶりにカムバック

2019年11月に復活したロッキー。5ナンバーサイズのクロスオーバーSUVのロッキー。トヨタへのOEM車ライズは、2020年1月の新車販売台数NO.1に輝いている
2019年11月に復活したロッキー。5ナンバーサイズのクロスオーバーSUVのロッキー。トヨタへのOEM車ライズは、2020年1月の新車販売台数NO.1に輝いている
1997年4月に販売終了となった初代ロッキー
1997年4月に販売終了となった初代ロッキー

 ロッキーが復活できたのは、たまたまに近い。初代ロッキーはラダーフレームを持つ本格派のクロカンSUVで、1990年6月に発売され、国内では1997年4月まで販売された。その後も海外では2002年まで売られたが、ほとんど忘れられた存在になっていた。

 それが復活したのは、ダイハツによれば、「ロッキーという名称から想像される力強さが、新型にもマッチしたから」に過ぎず、初代ロッキーの後継モデルではないという。

 まあ、せっかく商品名の権利を持っているので、それを活用しようということだったのでしょう。

次ページは : ダイハツタフト/1984年4月販売終了(後継車種はラガー)→2020年夏頃復活予定

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