ミニバンは車種によって、6人/7人/8人乗りに分かれていて、2列目が独立した2人掛けのセパレートシート、3人掛けのベンチシートが用意されている。
また、2列シート5人乗り仕様もある。SUVも2列5人乗りに加え、3列7人、8人乗り仕様もラインナップしている。
ここでふと疑問が湧くのは、6人/7人/8人乗り、それぞれ何がどう違うのかということ。それぞれの長所と短所は? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が徹底解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーWEB編集部
【画像ギャラリー】主なミニバンの6人乗り/7人乗り/8人乗り どれが一番売れてる?
2列目は2人掛けのセパレートシートが7人乗り、3人掛けのベンチシートが8人乗り
ミニバンの乗車定員は、ボディサイズやシートの配列によって複数の種類がある。
道路運送車両法によると、運転席以外の座席は、1人に付き左右方向の幅が380mm以上、奥行は400mm以上と定められている。また今の乗用車はすべてのシートに、3点式シートベルトを装着せねばならない。
2列目のシートには、3人掛けのベンチシートと、2人掛けのセパレートシートがある。後者は乗車人数が1名分少ない代わりに、両側にアームレストが装着されて快適性を高めた。「キャプテンシート」という呼び方もある。
セパレートシートは、1名分の独立した座席だから、各部の調節機能を豊富に装着できることもメリットだ。
シートの下側からクッションを持ち上げて、ふくらはぎをサポートするオットマンも付けられる。
そのために価格の高いLサイズミニバン、あるいは上級グレードの2列目には、セパレートシートを備えることが多い。セパレートシートであれば、2列目の中央が通路になるから、車内の移動もしやすい。
その一方でベンチシートにもメリットがある。幅が広く、リラックスして座れることだ。車種によっては、横長の座面により、セパレートシートよりも座り心地が柔軟に感じる場合もある。
停車中に限るが、赤ちゃんをシートに寝かせてオムツを替えたりする時も、2列目がベンチシートであれば使いやすい。
3列目のシートは、大半のミニバンが横長のベンチタイプだが、車種によって2人掛けと3人掛けがある。
シエンタやフリードの3列目は2人掛け、ヴォクシー系3姉妹車、ステップワゴン、アルファード&ヴェルファイアなどは3人掛けだ。3人掛けは、3列目の中央席にも3点式シートベルトを備える。
ミニバンの6人/7人/8人乗り、それぞれの長所と短所


ミニバンの乗車定員は、2/3列目に何人座れるかによって異なる。1列目は2人掛けのセパレートシートだから、2/3列目で差が付くわけだ。
まず乗車定員が最も少ないのは6人乗りになる。1列目から3列目まで、すべてのシートが2人掛けだ。シエンタとフリードで、2列目がセパレートシートの場合、乗車定員は6名になる。
Lサイズミニバンのグランエースも、3列のすべてがセパレートシートになる6人乗りを用意した。
この2/3列目には、アルファード&ヴェルファイアのエグゼクティブパワーシートに似た座席を4名分装着する。1列目を含めて、6名が快適に移動できる。
7人乗りには2つのパターンがある。最も多いのは、1列目が2人掛け、2列目もセパレートシートで2人掛け、3列目は3人掛けという配置だ。
ヴォクシー系3姉妹車、ステップワゴン、アルファード&ヴェルファイアなど、ミドル/Lサイズミニバンの7人乗りは、すべてこの配置になる。
7人乗りのもうひとつのパターンは、1列目が2人掛け、2列目は3人掛け、3列目は2人掛けというものだ。先に述べたシエンタやフリードの3列目は2人掛けだから、この配置になる。
そして8人乗りは、1列目が2人掛け、2列目は3人掛け、3列目も3人掛けだ。3列シートミニバンでは、乗車人数が最も多い。前述の通り2列目がベンチシートだから、スペースが広く使い勝手も優れている。
このほかフリードプラスやシエンタファンベースのように、3列目のシートを取り去った2列シートの5人乗りを用意する車種もある。ミニバンに含まれるが、機能はポルテ&スペイドのような背の高いコンパクトカーに近い。
ミニバンのシート配列で、売れ行きが最も多いのは、2列目がセパレートシートの7人乗りだ。
アルファード&ヴェルファイアやオデッセイなどの上級Lサイズミニバンでは、セパレートシートの2列目が特等席とされ、高い人気を得ている。
2列目がベンチシートの8人乗りは、ベーシックなグレードだけに用意され、売れ筋グレードでは選べないことも多い。
ミドルサイズのヴォクシー系3姉妹車は、ファミリーユーザーも多いから幅広いグレードに2列目がベンチシートになる8人乗りを用意する。ただしハイブリッドの2列目はセパレートシートのみで、ベンチシートは選べない。
セレナは、Sハイブリッド(スマートシンプルハイブリッド)は2列目にベンチシートを使う8人乗りのみとなり、e-POWERはセパレートタイプの7人乗りのみだ。
いずれにしろ、2列目がセパレートシートになると、乗車人数が1名減る代わりに上級のイメージが生まれる。幅広い車種で、2列目はセパレートシートの人気が高い。
またフリードでは、セパレートシートの価格がベンチシートよりも2万2000円高い。セパレートシートを高額にするミニバンはあるが、逆は珍しく、フリードではセパレートシートの買い得感が強まって人気も圧倒的に高い。
2列目シートの形状は、使い方や座り心地の好みに応じて選べば良いが、バリエーションの設定方法まで含めると、選ばれる頻度が高いのはセパレートシートだ。

SUVの3列シート車は?
一般的に3列シート車といえばミニバンだが、SUVにも3列のシートを備える車種がある。エクストレイルやCR-V、ランクル200、ランクルプラド、CX-8などだ。
シートの配列は1列目が2人掛け、2列目は3人掛け、3列目は2人掛けになることが多い。乗車定員は7名だ。CX-8では2列目がセパレートシートの仕様も用意され、この乗車定員は6名になる。
SUVの3列目シートで注意したいのは、居住性がミニバンに比べて大幅に低下することだ。今の背の高いミニバンは、床を3列目まで平らに仕上げているが、SUVは違う。
3列目は1/2列目に比べて燃料タンクのために床が高く、座ると膝が持ち上がる。SUVで3列目シートが最も快適なのは、全長が4900mm、全幅が1840mmのCX-8だが、この3列目の居住性をミニバンに当てはめると、コンパクトなフリードやシエンタと同等だ。
つまりSUVの3列目は、基本的には荷室に装着された補助席になる。エクストレイルにも3列シートの7人乗りが用意されるが、大人が3列目に座るには、2列目のスライド位置をかなり前寄りに調節する必要がある。
この状態では、3列目に加えて2列目の足元空間まで窮屈になるから、大人が多人数で移動できる距離は、片道15分程度までだ。
SUVに装着される3列目シートの価格は、7万~15万円になる。ただしCR-Vは高く、EXで19万4700円、本革シートとなるEXマスターピースは22万7700円だ。CR-Vの3列目は、SUVとしてはCX-8の次に快適だが、割高な価格が気になる。
6人/7人/8人乗り、どれが一番売れてる?
ミニバン、SUV各車には、クルマごとに6人/7人/8人乗り、7人/8人乗りなど分かれているが、いったい何人乗りが一番売れているのか、主な車種の人気の傾向を聞いてみた。※データはすべて2019年1~10月のもの。
■トヨタ
●ヴォクシー 7人乗り/77% 8人乗り/23%
●ノア 7人乗り/67% 8人乗り/33%
●エスクァイア 7人乗り/77% 8人乗り/23%
●シエンタ 5人乗り/33% 6人乗り/14% 7人乗り/53%
●シエンタHV 5人乗り/40% 7人乗り/60%
●アルファード 7人乗り/86% 8人乗り/14%
●アルファードHV 7人乗り/92% 8人乗り/8%
●ヴェルファイア 7人乗り/84% 8人乗り/16%
●ヴェルファイアHV 7人乗り/90% 8人乗り/10%
●ランドクルーザー200 5人乗り/5% 8人乗り/95%
●ランドクルーザープラド 5人乗り/44% 7人乗り/56%
■日産
●セレナ 7人乗り/35% 8人乗り/65%
●エクストレイル 5人乗り/94% 7人乗り/6%
■ホンダ
●フリード+ 5人乗り 20%
フリード6人乗り 60%
フリード7人乗り 20%
●ステップワゴン 7人乗り/67% 8人乗り/33%
●オデッセイ 7人乗り/80% 8人乗り/20%
●CR-V 5人乗り/89% 7人乗り/11%
■三菱
●デリカD:5 7人乗り/47% 8人乗り/53%
5ナンバーサイズミニバンでは、ヴォクシー/ノア/エスクァイアは7~8割が7人乗り、ステップワゴンも7人乗りが67%。その一方でセレナは65%と、8人乗り(Sハイブリッド)の方が人気だ。
登録車1位と売れに売れているシエンタは、5人乗りが33%、6人乗りが14%、7人乗りが53%。
シエンタHVは5人乗りが40%、7人乗りが60%。ガソリン車、HVともにやはり7人乗りが5割~6割と多く、2列シート5人乗りが3割~4割と意外に人気が高いことがわかる。
フリードは6人乗りが6割、5人乗りと7人乗りが2割ずつで、圧倒的に6人乗りが人気だ。アルファード/ヴェルファイアはガソリン車、HV車ともに8割~9割を占める。
こうして見ていくと、ミニバンは概ね8人乗りよりも7人乗りのほうが人気になっているのがわかる。
6人乗り、7人乗り、8人乗り どっちを選ぶべきか?

以上のように3列シート車は、シートの配置もさまざまだ。自分の用途を明確にしてから選びたい。
購入時には居住性のチェックも大切だ。まず運転席に座り、運転姿勢を調節する。次は2列目シートの右側(運転席の真後ろ)に座り、足元空間が窮屈に感じないようスライド位置を調節する。
そして次は3列目の右側に座り、居住性を確認する。コンパクトミニバンやSUVの場合、3列目が窮屈で大人が座れないこともあるだろう。
その時は2列目に戻り、なるべくスライド位置を前寄りに調節する(運転席は正しい姿勢を取る必要があるから前側には寄せられない)。この後、改めて3列目のスペースを確認する。
少々面倒だが、車内を漠然と見るだけでは、3列シート車の居住性はチェックできない。2/3列目の乗員が互いに快適に座れるベストなポジションを探して、居住性の優劣を総合的に判断したい。