ランクル70シリーズの寿命が長い理由
その意味で改めて見直したいのが、悪路走破力を徹底的に高めたランドクルーザー70シリーズだ。生粋のオフロードSUVで、40シリーズの後継車種として1984年に発売された。
この後にランドクルーザーは、80シリーズ、100シリーズ、200シリーズという具合にフルモデルチェンジを受けているが、70シリーズは一貫して生産を続けている。
今でも南アフリカなどでは、バンボディのランドクルーザー76、ピックアップトラック(ダブルキャブ)のランドクルーザー79が販売されている。細かな改良を受けているが、基本設計は36年前から変わらない。
70シリーズの寿命が長い理由は、切実な需要があるためだ。開発者は「70シリーズは、必ず帰ってこられるクルマ」だという。
食料を積み、条件のきわめて悪いルートを走る。この時に途中で長期間にわたり立ち往生すれば、車両の乗員と食料を待っている人達の生命が脅かされてしまう。
従って70シリーズのユーザーは、クルマが変わることを好まない。70シリーズがフルモデルチェンジを行って快適性や舗装路の安全性を大幅に高めても、今まで走破できた悪路のひとつでも通行不可能になれば、甚大な被害を被るからだ。
本物が持つもの凄いオーラ
また過酷な地域で使われるので、点検や修理を行うトヨタのサービス網も整っていない。複数の70シリーズを所有するユーザーが、修理機材と部品をストックして、自分達で点検や修理を行う場合もある。
このような用途でも、車両が変わり、従来の修理方法や部品が通用しなくなったら困るわけだ。
ちなみに第二次世界大戦に使われたジープでは、部品の互換性が重視された。例えば戦場で5台のジープが破損して走行不能になった場合、使えるパーツを集めて、2台の走行できる車両を組み立てる必要が生じるからだ。
ランドクルーザー70シリーズの開発者は「70にも同じようなことが求められている」という。
立ち往生が生命に影響する場面は、日本でも皆無ではないが、一般的なSUVの用途には含まれないだろう。その意味でランドクルーザー70シリーズは特殊なクルマだが、本物の持つオーラというか、職人的な説得力は物凄い。
中古車マーケットでも高値安定
そこでランドクルーザー70シリーズは、生誕30周年を記念して、2014年8月に「2015年6月30日の生産分まで」という期間限定で発売された。
ボディはバンとピックアップ(ダブルキャブ)で、いずれも1ナンバー車であった。エンジンはV型6気筒4Lのガソリンを搭載する。ピックアップは、日本では売られたことのないボディバリエーションであった。
ランドクルーザー70シリーズが2015年6月生産分で国内販売を終える理由は、発売時に保安基準改正に抵触するためと説明された。それでも販売を再開した70シリーズは、予想外の人気を得た。発売直後には3600台を受注している。
今でも中古車価格は高く、再販売された2014年式/2015年式は、290万~330万円で販売されている。
2014年に発売された時の新車価格は、バンが360万円、ピックアップは350万円だった。発売時点の消費税率が8%だったことを差し引いても、5~6年落ちの中古車価格としては際立って高価格だ。
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