トヨタは燃料電池車の「新型MIRAI」を10月にも発売する方向でスケジュール調整をしている模様である。
現行モデルの登場が2014年11月18日であったから、6年ぶりの世代交代となる。
新型の駆動方式は、現行初代モデルのFF(前輪駆動)からFR(後輪駆動)方式に変更、クラウン、レクサスLSと同じプラットフォームを採用する。
トヨタのクルマ作りの新しい考え方である「TNGA」で設計開発を進めている。2019年秋に開催した第46回東京モーターショーに参考出品したプロトタイプとほぼ同じ内容での市販化となるという。
文:遠藤徹、写真:トヨタ、奥隅圭之
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新型MIRAIは後輪駆動&5人乗りに!
ボディサイズは現行クラウン並みであり、従来モデルに比べると若干サイズアップする。搭載する水素タンクはフロアトンネル内に進行方向向きにレイアウト。
モーターの容量アップとFCスタックの効率向上などによって、水素充填後の航続距離は現行の約650~700kmに対して約30%向上させた800kmまで延長させている。
乗車定員も従来の4人から5人に増員している。安心パッケージの「トヨタセーフティセンス」は当然のことながら最新のデバイスをフル装備する。ハンズフリーなど自動運転支援も最新の進化バージョンで装備する。
ボディサイズは現行が全長4890mm、全幅1815mm、全高1535mm、クラウンがそれぞれ4910×1800×1460mmである。
新型MIRAIは4920×1820×1500mmと若干サイズアップし、ワイド&ローのスタイリッシュに変身する見込みである。ホイールベースは2920mm、トレッドは前後とも1550mmで現行クラウンと共用する。
フロントマスクはがらりと変わる。FR駆動を採用したことでボンネットはスラントしたロングノーズを採用する。
大径の大型グリルと横線エアインテークの組み込ませたマスクは最新のトヨタ車の顔立ちに共通している。
左右両サイドのエアインテークは取り払われすっきりとしたデザイン処理としている。横長の鋭い目つきのLEDヘッドランプは多少厚みを持たせ、クリアレンズの中に2つの丸い目を埋め込んでいる。
クオーターピラーはファストバック的なデザイン処理でスポーティ感を強調している。
レクサスLSと同じプラットフォームを採用
FFからFRに変更されることはパワーユニットのポジショニングにも大きく関わってくる。FCスタックが現行のフロントシート下からノーズに移されるため、底上げ的なパッケージングや腰高なレイアウトがなくなり、より安定した走りを実現する。
モーターは前輪から後輪に移動することで前後の重量バランスが格段に改善される。2本ある水素タンクのうち1本はセンタートンネル内に沿って縦方向にレイアウトされることでトランク回りのスペース効率が改善される。
次期型MIRAIをクラウン、レクサスLSと同じFR方式のプラットフォームにしたのは大きな意味がある。トヨタはFR方式車を将来的にクラウン、レクサスLS系に1本化する方向で作業を進めている。
このためトヨタブランドはマークXを廃止、レクサスはGSを廃止、将来的にはISもやめる方向で検討を進めている。したがって1本化するラグジュアリイクラスを充実させるべく同クラスのモデル数を増やす必要がある。
トヨタのハイテクの主役のひとつであるMIRAIの次期型をFR方式としたのはラグジュアリイクラスのラインアップの強化も狙いのひとつとして上げられるという側面がある。
車両本体価格は性能向上、航続距離の延長、安全対策、自動運転技術の採用などによるコストアップによって現行の740万9600円から800万円台まで値上げされるが、補助金の増額などによって半分以上をカバーできることになりそうだ。
8月の夏休み明けにも扱い店に専用ウェブサイトによる販売マニュアルを提示し、プレキャンペーンを開始。9月には車両本体価格や付属品の価格を決め、見積書の作成が可能になるはず。発売は2021年初めからとなる見込み。
初代モデルは受注が殺到し、納期が最高2年まで延長される事態となったが、2代目は供給態勢を大幅に改善し、ある程度バックオーダーがプールされても1年以内で納まるように段取りをつけることになると思われる。
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