日産に求められているのはコンパクトミニバン
ただし日産の本音は、国内についてはノートがあれば十分という見方だろう。日産は業績復活のために車種を刷新するが、投資は抑えたい。
2023年度までに、車種数を現在の69車種から55車種以下に減らす方針だ。この状況で全高が1550mm以下のコンパクトカーを2車種用意するのは無理が伴う。
むしろ求められているのは、シエンタやフリードに相当するコンパクトミニバンだ。日産はかつてキューブキュービックを用意して、後継車種も計画していたが、リーマンショックの影響を受けて実現しなかった。
今後はノートをベースにした3列シートミニバンが登場する可能性も高く、これに荷室の広い2列シート仕様も用意すれば、SUVのキックスと併せてコンパクトな車種は完結する。
この流れはホンダのコンパクトな車種を見るとわかりやすい。ホンダもコンパクトカーのフィット、ミニバンのフリード、SUVのヴェゼルをそろえる。ワゴンのシャトルも選べるが、需要の大半をフィットとフリードでカバーできるために売れ行きは伸び悩む。
日産も最終的には、ノート/ノートベースのミニバン/キックスという品ぞろえになりそうだ。
日産にとってはエルグランドはもういらない!?
エルグランドは判断が難しい。現行型は売れ行きが低調で、1カ月の登録台数は500~600台だから、アルファードの約10%に留まる。
不人気の理由は、ミニバンの機能が低いからだ。1/2列目は快適だが、3列目は膝が大きく持ち上がる姿勢になる。
グランエースを除くと、3列目が2列目に比べて窮屈なのは当然だが、エルグランドはLサイズミニバンとしては3列目の快適性がかなり下がる。
しかも3列目の畳み方も、背もたれを前側に倒す方式だから、左右跳ね上げ式や床下格納式に比べて荷室の床が高い。リアゲート開口部の上下寸法をセレナと比べると、エルグランドは200mm以上も下まわる。
その点でセレナは荷室が実用的で、3列目のシートは、ミドルサイズでありながらエルグランドと同等かそれ以上に快適だ。売れ行きも好調で、1カ月に7000~8000台が登録され、エルグランドの10倍以上に達する。
そうなると日産のミニバンは、セレナで十分と判断される。
マーケットが存在するのに自ら放棄
現行エルグランドは、クエストの名称で北米でも売られていたが今は終了した。日産が車種数を減らすために、エルグランドは廃止される可能性もある。
ただし現行エルグランドが失敗したのは、前述のとおり商品力が低いためだ。全高は1815mmでアルファードよりも100mm以上低く、3列目と荷室が狭く、外観の存在感も乏しい。
ハイブリッドは用意されず、燃費に不満が生じて購入時の税額は高い。売れない理由が膨大にあり、見方を変えると、日産にとってLサイズミニバンというカテゴリーの魅力が乏しいわけではない。
そこでセレナのノウハウを生かして実用性を高め、内外装を上質に仕上げ、e-POWER技術を投入すれば、アルファードのように好調に売れるLサイズミニバンを開発することも不可能ではない。
しかも今は、クラウンのような上級セダンからアルファードに乗り替えるユーザーが増えた。トヨタの販売店からは、「TVニュースなどで政治家や企業のトップがアルファードを使う様子が放送され、最近はイメージが大幅によくなった」という意見も聞かれる。
また従来のミニバンは国内専売だったが、近年ではアルファード&ヴェルファイアが海外でも注目されるようになった。
今のところLサイズミニバンで成功しているのはアルファード&ヴェルファイアのみだが(オデッセイは低調だ)、人気が伸び悩む上級セダンの後継になり得る。価格が高いから、e-POWERなどの高コストな機能も搭載しやすく、開発するメリットはあるだろう。
上手にフルモデルチェンジを行い、エルグランド/セレナ/ノートベースのコンパクトミニバンをe-POWERでそろえて訴求すれば、国内販売復活のきっかけにもなり得る。
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