最近では「パワーウェイトレシオ」が話題に上がることはほとんどありませんが、以前はクルマの加速力の目安として自動車メーカーでも重要視していました。今よりもクルマが小さくて軽く、エンジンパワーもずっと低かった時代は、こうした性能指標が大切で、他車をベンチマークすることもよく行われていました。
パワーウェイトレシオによっては、コンパクトカーであっても、スポーツカーにも匹敵する加速が期待できるクルマもあります。今回は、日本で現在市販されているコンパクトカーの中で、パワーウェイトレシオに優れたクルマを5つ、ご紹介します。
文:吉川賢一/写真:NISSAN、HONDA、TOYOTA、Mercedes-Benz、Audi、Renault、VW、Fiat/ABARTH、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】パワーウェイトレシオが大きい国産スポーツカーを写真でチェック!
国産スポーツカーのパワーウェイトレシオ相場上限は?
代表的な国産スポーツカーのパワーウェイトレシオは、スイフトスポーツ6.93kg/PS(970kg、140ps)、シビックタイプR:4.34kg/PS(1390kg、320ps)、スカイライン400R:4.25kg/PS(1720kg、405ps)、トヨタスープラ:4.41kg/PS(1500kg、340ps)といった感じ。
国産スーパースポーツだとGT-R NISMO:2.87kg/PS(1720kg、600ps)、NSX:3.1kg/PS(1800kg、581ps)あたりが相場上限のようです。
ちなみに、つい先日受注終了したスバルWRX STIは、4.84kg/PS(1490kg、308ps)でした。
フィアットアバルト595COMPETIZIONE 6.22kg/PS
■エンジン最高出力:180PS
■車重:1120kg
■ボディサイズ:3660×1625×1505mm(全長×全幅×全高)
■ホイールベース:2300mm
■車両本体価格:400万円
一台目はフィアットアバルトの最上級グレード「アバルト595コンペティツィオーネ」。

アバルトは、フィアット車をベースにして、ボディ改装やマフラーなどのパーツを採用したコンプリートカーを製作するメーカー。ショートホイールベースにイカついエアロパーツ、前後のバンパーなど「これぞホットハッチ!」といった姿は、ファンならずとも目を惹かれること間違いなし。
フォルクスワーゲンポロGTI 6.45 kg/PS
■エンジン最高出力:200PS
■車重:1290kg
■ボディサイズ:4075×1750×1440mm(全長×全幅×全高)
■ホイールベース:2550mm
■車両本体価格:384万円
2台目はVWのポロGTIです。ベースモデルのポロは、1.0リッターエンジンで動くほどのコンパクトカーなのに、そこへ2.0リッターのターボエンジンを押し込んだという、強烈なモデルです。

大型ディスプレイにフルデジタルメータークラスターは、これまでのアナログ型メーターと比べるまでもなく最新鋭。速く走るだけではなく、スタイリッシュな魅せ方も追及した一台です。
ちなみに、ひと回り大きな「ゴルフR」は、パワーウェイトレシオ4.87 kg/PS(310PS、1510kg)。2.0リッターターボエンジンで300PS発揮するこのエンジンも相当に速い。
Audi SQ2 5.23 kg/PS
■エンジン最高出力:300PS
■車重:1570kg
■ボディサイズ:4220×1800×1525 mm(全長×全幅×全高)
■ホイールベース:2595mm
■車両本体価格:599万円
アウディSQ2は、同社コンパクトSUVのQ2をベースに、2.0TFSIエンジンの圧倒的なパワーと、アウディ自慢の4WDシステム「クワトロ」を備えたスポーツSUVです。

全長4200mm程度のコンパクトなボディですので、日常でも非常に扱いやすく、実用車としての役割を満たしてくれますが、アクセルペダルをやや踏みこめば、驚異の加速をするSUVです。いかなる路面でも、安心感の高いハンドリングは、アウディならではの魅力。
ルノールーテシアR.S.トロフィー 5.86 kg/PS
■エンジン最高出力:220PS
■車重:1290kg
■ボディサイズ:4105×1750×1435mm(全長×全幅×全高)
■ホイールベース:2600mm
■車両本体価格:340.2万円
ルーテシアR.S.トロフィーは、サーキットでも最高のパフォーマンスを発揮できるハイパフォーマンスカーと位置付けられています。
220psのハイパワーと260N・mのトルクを有し、4速・5速で走行時に、一時的にトルクを最大280N・mまで引き上げるオーバーブースト機能も搭載するなど、気合の入ったモデルです。
車重が比較的軽いことで、パワーウェイトレシオも5.86kg/PSを達成。ベースモデルのクリオ(日本名ルーテシア)が新型へと切り替わったことで、次期型ルーテシアR.S.登場も期待されています。

ちなみに、兄貴分にあたるルノーメガーヌR.S.トロフィーは、パワーウェイトレシオ4.90 kg/PSを達成(300PS、1470kg)。499万円と価格は上がりますが、パンチのある加速はサーキットで映えるでしょう。
メルセデスベンツAMG A45 S 4MATIC+ 3.68 kg/PS
■エンジン最高出力:421PS
■車重:1550kg
■ボディサイズ:4445×1850×1412mm(全長×全幅×全高)
■ホイールベース:2729mm
■車両本体価格:790万円
ややボディサイズは大きめですが、2.0リッターエンジン車で最強クラスのパワー、最大出力421PS、最大トルク500N・mを誇るのが、AMG A45 S 4MATIC+です。

駆動方式はもちろん4WD。Aクラスはメルセデスベンツのエントリーモデルのはずですが、エントリーモデルに、これほどのエンジンが搭載されているとは。
残念ながら現在の日本のコンパクトカーでは太刀打ちできない
お気づきの通り、日本車はリストに入っていません。というのも、スイフトスポーツのパワーウェイトレシオを上回るコンパクトカーの現行車が見当たらず、カテゴリの異なるマツダロードスターの5.98kg/PS(184PS、1100kg)や、サイズの大きなレヴォーグの5.23kg/PS(300PS、1570kg)がある程度。
日本車メーカーの自動車作りにおいては、パワーウェイトレシオに固執してクルマのポテンシャルを設計する時代は、すでに終わっているのかもしれません。