直6エンジンは続々消滅して絶滅の恐れ
その理想とも思える直6エンジンだが、1997年にメルセデスベンツが「M104」エンジンを生産中止にして、順次V6に切り替えていった。
いっぽう日本メーカーで直6エンジンをラインナップしていたのはトヨタ、日産のみだったが、トヨタは2007年に2.5L、NAの1JZ-GE、日産は2004年に2.5LターボのRB25DETの生産をそれぞれ終了し、日本の乗用車用直6エンジンは消滅してV6に切り替わった。
これにより、直6エンジンは絶滅の危機を迎えたのだ。
直6エンジンはシリンダーが6つ一直線に並んでいるためエンジンが長くなってしまう。同じ6気筒でもV6なら約半分のエンジン長に抑えることができる。
基本的に直6エンジンはFR用の縦置きユニットゆえ、衝突安全性の確保が難しかった。各メーカーとも衝突時にエンジンがキャビン内に侵入してこないように、ボディ下側に潜り込ませるなど工夫したがそれも限界で非効率を判断。
メルセデスベンツ、日産、トヨタの順に直6をやめていったのは、衝突時の安全を確保するクラッシャブルゾーンの確保が難しくなったからに他ならない。
例外的なのはボルボで、長い直6エンジンを横置きにすることでエンジンの前後にスペースが生まれ、これをクラッシャブルゾーンとして活用。
そのボルボは4気筒以上のシリンダー数を持つエンジンを作らないと公表し、これは事実上の直6廃止宣言ととれる。
この直6廃止の流れに抗うように、伝統のシルキー6を守り続けたのがBMWで、その孤軍奮闘ぶり、頑固なまでのポリシーを守る姿勢が評価されていた。
しかし、3シリーズを見てもわかるとおり、BMWも直6をラインナップしているものの、直4比率が高くなっているのも事実だ。
直6エンジンが廃止された初期はV6エンジンに順次切り替えられたが、その後は欧州に端を発したダウンサイジングターボに取って代わられた。
動力性能と環境性能を高いレベルでバランスさせた2L前後の直4直噴ターボで充分じゃないか、という風潮も直6不要論を後押しした。
メルセデスベンツがほぼ21年ぶりに直6を復活させた
直6エンジンが少数派であることには変わらないが、メルセデスベンツが2018年に3L、直6エンジンを搭載するS450の販売を開始。
メルセデスベンツが直6搭載モデルをラインナップするのは、前述のとおり1997年以来ほぼ21年ぶりのことだ。
では、なぜメルセデスベンツは一度やめた直6を復活させたのか?
その要因はいくつかあるが、まず、直6搭載の最大のデメリットであった衝突時のクラッシャブルゾーン確保の問題だが、現代の技術ではエンジンの気筒間のピッチを短くでき、全長も少しながら短縮できる。
ボディに高張力鋼板などを使うことによってボディも大きく進化している。
これらのことなどによりクラッシャブルゾーン問題は解決したとみていいだろう。
もう1点は、ダウンサイジングターボに比べると燃費や環境性能に劣る直6エンジンだが、メルセデスは48Vのマイルドハイブリッドを組み合わせて燃費、環境性能も大きく向上させ、直6のネガを潰している。
メルセデスの場合はハイパワーのAMGをラインナップしているが、こちらには電動スーパーチャージャーを組み合わせることで対処することができた。
上記のような技術的に克服したものと同時に、直6のスムーズな回転フィール、上質感という最大のメリットがプレミアム性には欠かせないというのも見逃せないポイントだ。
ドライブフィールで言えば、今欧州車では主流となっているDCTの場合、多気筒のほうがエンジンブレーキが効きやすい。トルコンATでも燃費向上を狙ったロックアップが頻繁に行われるのでエンジンブレーキ効果がスポーティーな操縦性にフォローだ。
すなわち直4よりも直6のほうが上質な運転が可能というわけだ。
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