ミニバンブームと同じ道をたどるのか
かつて、1994年にホンダオデッセイが誕生し、ミニバンが一気に市場を満たした。現在、オデッセイの車名は1~6月の販売実績で4880台と、1位のライズの約10分の1だ。トヨタエスティマの名はもはや消滅している。
ただし、アルファードは10位にあり、兄弟車のヴェルファイアの台数を合わせると4万7294台となって、5位のノートと代わる順位になる。
また、セレナ、ヴォクシー/ノア、ステップワゴンは20位以内に名を残している。人気の頂点は過ぎたが、ミニバンを欲する人は定着している。
したがって今後のSUVも、一旦希望する人たちに行き渡ったあとは、ほかの車種へ移行する人もありながら、現在のミニバンと同じような堅調さで選択肢のひとつとなっていくだろう。
電動化はSUVにとって向かい風
この先の高齢化社会を見据えると、最低地上高が上がるSUVは乗り降りしにくい。そういう課題に対し、セダンやステーションワゴンへ戻る人が出てくるだろうし、スライドドアを持つコンパクトミニバンや、軽自動車が福祉車両的な側面を加えつつ、需要を満たしていくことにもなるだろう。
そういう意味でSUV人気はひと段落し、ほかの車種への移行もされながら、一定の消費者の期待の受け皿になっていくはずだ。
新たな需要としては、甚大化する自然災害に対し、地上高があったり、4輪駆動であったりすることが、悪天候や災害時においても移動を確保できる安心をもたらすことになるだろう。
あるいは電動化に際して、セダンやステーションワゴンに比べ、SUVのほうが床下へリチウムイオンバッテリーを搭載しやすいという自動車メーカーの事情もある。
メルセデスベンツのEQCや、ジャガーのE-PACEはまさにその象徴だ。そのうえで、V to H(ヴィークル・トゥ・ホーム)など電力供給能力を持てば、SUVに新しい価値を追加することになる。
実際、三菱自のアウトランダーPHEVは、各地の災害現場で家屋や施設へ電力供給を行う実績を積んでおり、RAV4 PHVも家庭電化製品などへの給電能力を持つ。
いっぽう海外の自動車メーカーは、給電の効能への視野をまだ持たないが、気候変動は世界的な動向であり、いずれ給電を望む声が世界へ広がる可能性はある。
他とは違う車種という今日までの位置づけだけでなく、災害対応の側面から、電動化と合わせてSUVが改めて見直される時代が来るかもしれない。
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