■ふたつめは現状の国の制度の問題
そのいっぽうで、「完成検査」という制度に公的で厳密な線引きがないのも事実(上述のとおり、それはよくいえば各メーカーの裁量に任せていた部分が大きい)。
まず現状の完成車検査の事情をザッと解説しておきたい。
「自動車」という、ともすれば凶器になりうる乗り物を広く一般に販売するためには、本来であれば工場出荷後に一台一台、国の検査が必要になる(と日本では制度化されている)。
しかし年間数百万台の新車を一台ずつ検査していては検査機関が破綻するし、そのコストは回り回ってユーザーや国民が負担することになる。
そこで現状は、「各自動車メーカーが国に代わって完成車の安全性を確認する」という制度をとっている。この制度のおかげで完成検査の手続きは簡略化され、国内での大量生産・大量販売を可能にしている。
この「完成検査を担う検査員」の「認定基準」が、現状では各メーカーに委ねられているところがポイントとなっている。
「完成検査員」の資格取得要件は各メーカーごとにバラバラであり、2〜6カ月と習熟期間にも幅がある。メーカーによっては短期間で資格を取得させ、実務経験のなかで技術を習得させるという考えを持つ会社もある。
工場出荷前の完成検査員について、国交省からの通達では「検査に必要な知識および技能を有する者のうち、あらかじめ指名された者であること」と記されている。
日産自動車の場合は「補助検査員」と日産社内で規定された人間が検査に携わっており、「あらかじめ指名された者ではない」ということで問題になった。
本日発覚したスバルの問題も、現場では「社内試験には合格しており、一定の技能・知識がある」と判断されていたようだ。
しかし検査員として指名されるための「研修」はまだ受けておらず、「あらかじめ指名された者ではない」ということ。
石井啓一国土交通大臣は日産の無資格検査問題発覚後に「完成検査の確実な実施のために見直すべき点がないか検討したい」と発言しており、こうした曖昧な線引きが見直される可能性もある。
ただそうなると国内工場の人件費負担増にもつながるわけで、国の対応とともに各メーカーの生産体制にも影響は大きい。
■3つめは「発覚後の対応」
2017年9月中旬に報道機関によって無資格者検査問題が発覚したのち、日産自動車は会見を開いて体制の不備を謝罪。
無資格者が検査した可能性があるすべての国内販売車(車検を受ける前の3年間の販売車)のリコールを実施すると発表し、今後こうしたことがないよう体制を見直すと語った。
しかし同年10月11日、社内調査により「謝罪会見後にも、無資格者が完成検査を実施していたこと」が発覚した。それを受けて19日に西川廣人社長が再び会見。
「信用して買っていただいた皆さんの信頼を裏切ってしまった」と重ねて謝罪することになった。
これを受けて、日産は国内全6工場の出荷を停止して検査体制を再チェック。先頃発表した約116万台に加えて、問題発覚後に出荷した約4000台を追加でリコールすると発表。
つまるところ、本件が大きな問題となっているのは「問題が発覚したあとの謝罪体制と再発防止が徹底していなかった」という要因が大きい。
上記の問題を受けて、国交省は国内全メーカーに「10月末までに完成車検査の体制について調査し結果を報告すること」と通達。これを受けて各メーカーが検査したところ、今回のスバルの問題が浮上した……という状況がある。
なおトヨタ、三菱、マツダ、スズキ、ダイハツは26日までに国交省へ報告をすませている(トヨタとスズキはすでに「問題ない」というところまで公表済み)。
スバルといえばこれまで「しっかりしたクルマ作り」に定評のあったメーカー。それだけにファンに与えた衝撃は大きい。
そして、だからこそ今後の対応に期待したい。
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