新型MIRAIで見えたトヨタの本気の狙い 高い理想を実現するため上品で安く作る!!


 トヨタは早くから燃料電池車の開発を進め、初の量産モデルである初代MIRAIをデビューさせたのが2014年。

 そして東京モーターショー2019でプロトタイプを公開した2代目MIRAIは、2020年12月9日に発表され発売を開始。

 燃料電池車は電気を充電して走らせるEVに比べて、実現させているメーカーは少ない。そんななか、ドイツが2020年に水素エネルギー戦略を公表するなど、水素社会実現に向けた動きも出てきている。それに対し日本は遅れていると言わざるを得ない。

 実際に日本では水素を使った燃料電池車の認知度も低い。

 トヨタがMIRAIに力を入れることで何を目指しているのか? 水素は一般化するのか? などについて、自らMIRAIを所有する国沢光宏氏が鋭く考察する。

文/国沢光宏、写真/TOYOTA、HONDA、VOLVO、HYUNDAI、池之平昌信

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トヨタは真剣に水素社会を考えている

新型MIRAIの走りは上質で、レクサスLSを凌駕する滑らかさと乗り心地は特筆レベル。サーキットでも驚くべきポテンシャルを見せた

 新型MIRAIの納車が始まった。一般道で試乗してみたけれど圧倒的な質感を持っており、燃料電池車というより、「魅力的なクルマのパワーユニットが燃料電池だった」というイメージ。

 クラウンよりレクサスLSに限りなく近い(滑らかさや乗り心地などはLSを余裕で凌ぐ)車格感を考えたら、710万円スタートという価格も割安に思えるほど。

 試作車を作れるメーカーすら少ない最先端のパワーユニットを搭載していながら、なぜこんなに完成度が高く、価格もリーズナブル(今なら東京都だと200万円程度の補助金も出ます)なのだろうか? 

 こらもう簡単。トヨタは真剣に水素社会を考えているからにほかならない。私自身も未来を担うパワーユニットになる可能性大きいと思う。

 御存知のとおり水素は「水の素」という文字を当てているように、水そのものである。水と電気さえあればどこでも作れます。水素だけでなく酸素を大気に放出するが、これは燃料電池で電気を作る際に大気中から回収して水に戻っていく。

 つまり「電気」というエネルギーを地球上でリサイクルさせましょうというパワーユニットだと考えていい。

 また、太陽光発電や風力発電は発電量が安定しない。電気としてして貯めておこうとすれば電池を必要とするけれど、膨大に余ったら貯めきれなくなってしまう。

ルナ・クルーザーはトヨタがJAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同で開発中の月面車。MIRAIで培ってきた燃料電池車の技術が盛り込まれている

 水素という気体にしておけばガスのようにパイプで運ぶことだって可能。ちなみに漏れてもガスよりエネルギー密度低いため安全だ。タンクでの保管や輸送だって容易。

 工場やオフィス、家庭用の電力供給はピーク時に発電量を増やさないとならないけれど、天然ガスや重油使う火力発電だと二酸化炭素を出す。

 水素を燃やした火力発電であれば、水素を作った時に放出した酸素と反応して水になるだけ。もちろん燃料電池ならクルマやトラック、バス、建設機械、漁船などさまざまなモビリティを稼働させられる。

乗用車用の燃料電池はどんな用途にも使える

 トヨタはそんな水素社会を構築するための第一歩が燃料電池自動車になると考えているのだった。乗用車に搭載しようとすれば小型化や高性能化、耐久性、安全性、さらに低コスト化まで要求される。

 逆に考えると乗用車用の燃料電池を開発することで、どんな用途にも使えるようになります。なにしろディーゼルエンジン代替になるから素晴らしい!

新型MIRAIの燃料電池ユニット。スタックは高性能化されたうえに大幅にコストダウン。クルマ以外にも使用されることで更なるコストダウンも可能

 例えば船舶用のディーゼルエンジンは1馬力あたり2万円と言われている。1680万円するトヨタマリンのポーナム28Lには260馬力のディーゼルエンジンが搭載されているけれど、エンジンだけで500万円以上するようだ。

 ボルボペンタのD4エンジン、300馬力は709万円。174馬力を出す新型MIRAIのスタックなら350万円の価値がある。

 先代MIRAIのスタックも大型トラックやバスに搭載されていたけれど、新型MIRAIのスタックは一段と高性能になったうえ、大幅なコストダウンをしているそうな。

 さまざまなモビリティのパワーユニットに使われるようになることでコストダウンが進み、水素の消費量だって増えて行く。消費量が増えたら、いろいろな会社が水素を作るようになる。

燃料電池ユニットは船舶用のディーゼルエンジンの代替えとしての期待も大きい。写真はボルボペンタのD4エンジン

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