2020年11月にフルモデルチェンジした、ホンダ「N-ONE」。これまでCVTしかなかったN-ONEだが、このモデルチェンジで、RSグレードに、6速マニュアル仕様が追加された。
ホンダ広報によると、マニュアル比率は当初、2割弱と想定していたとのことだが、実際には3割以上に達しているという。新車でマニュアル車を購入する顧客が、まだこれほどいたのには、正直なところ驚いた。
この新型N-ONEのMTの特徴としては「インパネシフト」のMTであるところだ。一般的な「フロアシフト」のMTとは異なり、独特な操作感が味わえるので、これもまた面白い。MTには他にも、「コラムシフト」のタイプもある。
今回は、それぞれのシフトノブ位置を採用した代表的なクルマを紹介しつつ、個々のメリットやデメリットを考えていきたい。
文/吉川賢一、写真/ベストカー編集部、RENAULT
【画像ギャラリー】それぞれの位置にメリットがあるのだ!! シフトレバー位置あれこれを写真で見る!
■もっともオーソドックスな「フロアシフト」
オーソドックスなのがこのフロアシフトのタイプだ。採用車は、トヨタヤリス、GRヤリス、86、カローラ/スポーツ/ツーリング、カローラアクシオ、C-HR。
ホンダではシビックタイプR、S660、マツダではマツダ2、マツダ3、マツダ6、ロードスター、CX3、CX-5、CX-8、日産ではフェアレディZ、マーチNISMO。
スズキではジムニー/ジムニーシエラ、スイフト/スイフトスポーツ、キャリイ、さらにスバルサンバー、ダイハツハイゼットトラック、グランマックスなど多岐にわたり、現在残る多くのMT車が、このタイプとなっている。
ハンドルから手を下ろしたところにシフトノブがあるので、操作はしやすいが、センターコンソールの前側のスペースを使うので、収納スペースが少なくなり、前席左右のウォークスルーにすることはできない。
■省スペースで操作性のいい「インパネシフト」
インパネから斜めに生えるようにシフトレバーがレイアウトされているこのタイプは、センターコンソール周りのレイアウトがすっきりするし、ハンドルとの距離が近いため、素早い操作もしやすい。
現在、ATやCVTの軽自動車の多くに採用されているタイプだ。マニュアル仕様でも、シフトノブは同じ位置に配置されており、軽自動車での採用事例が多い。
冒頭で触れたホンダN-ONEのほか、N-VAN、日産NV350キャラバン、NV200バネット、ミツビシミニキャブ、スズキエブリイなどが、インパネシフトタイプのMTを採用している。
しかし、フロアシフトのMTに慣れた方には、斜め方向のシフトノブの操作に、最初は戸惑うことも。また、ダイレクトなクラッチのフィーリングは、フロアタイプのMTには劣る場合もある。
■今では見かけない「コラムシフト」
ステアリングコラムにマニュアルのシフトレバーがあるタイプ。クラウンコンフォートやセドリック/グロリア、ワンボックスカー、トラックなどに採用されていたが、今ではほとんど見かけなくなった。現時点、新車で購入できるコラムシフトのMT車はない。
コラムシフトは、フロアシフトと比べて、スペース効率が優れており、空いたスペースで3人掛けのベンチシートにすることもできた。
ただ、70年代に入り4MT、5MTと多段化が進んだことで、「ギアがどこに入っているのか分かりにくい」という欠点が浮き彫りとなり、徐々に採用車種が減っていき、バンやトラック、タクシーなどに採用が限られるようになった。
また、シフトレバーからトランスミッションまでを、複数のリンク機構などを介して繋げていたため(リモートコントロール式という)、遊びが大きくてグネグネとした操作感も不評であった。
■シフトレバーの位置や長さは「好みの問題」でしかない
シフトレバーの位置については、構造や機能的に、欠点が指摘されてきたコラムシフトのMTを除けば、フロアシフトMTかインパネシフトMTかは、ドライバーの好みで選べばよく、どちらかが機能的に劣る、ということはない。
また、シフトノブの長さについても、長いほうが操作したフィーリングあって好きという方もいるし、短いほうが手先だけでシフトチェンジできるので好き、という意見もある。「お好きな方でマニュアル操作を楽しみましょう」というのが筆者の考えだ。
全車速追従機能付のACCなどの運転支援技術が当たり前になりつつある現在、MT車の存在意義は、「商業車」か「プレジャー」という目的以外にはない。新車では減る一方のMT車だが、中古車市場においては、程度の良いMT車は、まだたくさんある。
「MT車好きはマニアック」という印象を持たれることがあるが、少数派となった今だからこそ、あえてマニュアル車を選んでみるのは、どうだろうか。