重大な決断が迫られる!! 日産GT-Rが生き残るにはEV化しかない!?

GT-RはEV化で更なる高みを手に入れることができる

 前置きが長くなったが、GT-RもGTカーであると位置づけるなら、フェアレディZとは別の未来像があってしかるべきである。

 R35も、その開発に際し、責任者の水野和敏氏が目指したのは「300km/hで普通に会話のできるクルマ」であった。

GT-Rの生みの親、水野氏が10年経っても変わらぬ価値を余すことなく織り込んだ究極のGTカーがGT-Rである。余談だが日産のル・マンチーム監督時からマシンの快適性も考慮されていたと聞く
GT-Rの生みの親、水野氏が10年経っても変わらぬ価値を余すことなく織り込んだ究極のGTカーがGT-Rである。余談だが日産のル・マンチーム監督時からマシンの快適性も考慮されていたと聞く

 スポーツカーであるなら、会話などする必要はない。クルマを操ったり、サーキットの周回タイムをコンマ1秒でも速くできたりすればいいのだ。

 そしてR35GT-Rが競合としてみてきたポルシェからは、タイカンという電気自動車(EV)が誕生した。GT-Rの行く先も、EVだと私は考える。

現行GT-Rのファイナルエディションは2022年末にデビューすると予想。その先もあって欲しいが、次世代へ繋がるキーテクノロジーはあるのか?(CGイラストはベストカーが製作したもの)
現行GT-Rのファイナルエディションは2022年末にデビューすると予想。その先もあって欲しいが、次世代へ繋がるキーテクノロジーはあるのか?(CGイラストはベストカーが製作したもの)

 日産はポルシェより先にEVの市販をすませており、EVについては世界でもっとも経験を積んだ自動車メーカーといえる。

ポルシェタイカン。911ルックだが実は4ドアセダンである。ターボと称するグレードも存在するがピュアEVの為、ターボは装着されない。あくまでも出力差を表す「表現」なのか?
ポルシェタイカン。911ルックだが実は4ドアセダンである。ターボと称するグレードも存在するがピュアEVの為、ターボは装着されない。あくまでも出力差を表す「表現」なのか?

 では、なぜEVなのか。

 モーターは、エンジンに比べ100分の1の速さで出力を制御することができる。また変速機を必要としないので、切れ目なく駆動力を制御できる。もし、超高速を求めるなら、上下2段の変速機は用いるかもしれない。タイカンも2速ATとなっている。

 緻密で素早い駆動力制御が行えれば、これまで以上に安定した挙動で超高速での走りを構築できるはずだ。ことにGT-Rのように、4輪駆動(4WD)を前提とするなら、なおさら4輪の駆動力制御を細かく行えるようになるだろう。

 EV化によってGT-Rの走行性能は、一段高みに昇ることができるに違いない。

 また駆動用バッテリーの搭載により、車両重量は重くなるはずだ。タイカンの場合も、2トン以上の重さとなっている。

 しかし、電気が流れたところから最大トルクを発生できるモーター特性によって、車両重量をものともしない0~100km/hを3.2秒という速さで、タイカンは加速する能力を持つ。

 ちなみに、テスラモデルSは2.5秒と、タイカンより速い。モーター駆動とは、セダンがGTカーを超える加速性能を持つことも果たしてしまうのである。

テスラもGT路線をいくモデルなのかもしれない。ただし今どきEVのセオリー通りのクルマの域を出ておらず、単に加速が良いクルマにとどまる。ポルシェタイカンのシステムはその先をいく
テスラもGT路線をいくモデルなのかもしれない。ただし今どきEVのセオリー通りのクルマの域を出ておらず、単に加速が良いクルマにとどまる。ポルシェタイカンのシステムはその先をいく

 ただしタイカンは、同じ加速性能を何度も繰り返すことができるバッテリー管理を行うことで、GTカーとしての存在意義を持たせている。

 その重い駆動用バッテリーは、EVの常として床下に搭載されるため、エンジン車に比べはるかに低重心となり、走行安定性を高めるためにひと役買うことになる。

EVで問題になるのは1充電での航続距離

 GTカーのEV化によって、懸念材料と思われるのが、一充電での走行距離だろう。果たしてグランド・ツーリングをかなえられるのか?

 タイカンの例では、空調を使い気温20℃のときに満充電で310kmとある。市街地30%、高速30%、郊外路40%という配分での走行を想定しての数値だ。高速道路をどれくらいの速度で走り続けるかといった走行条件や、季節の違いによる気温の高低によっても距離は違ってくる。

 それでも、300km以上走れるなら、旅はできるし、そこで充電すれば足を伸ばせる。EVの充電では、急速充電時間が話題に上るが、旅とは、時間の早さだけが価値ではない。充電中に食事もするだろうし、景色を眺め写真を撮ったりすることも、旅の楽しみではないか。そうしたことをやっていると、30分はあっという間に過ぎてしまう。

 仕事で先を急ぐのであれば、EVという選択は最適ではないかもしれない。しかし、現実的に300km以上を一回の休みもなく走り通すのは現実的ではない。

 そして、いざEVを体験すれば、EVなりの暮らしが身に着き、EVなりのグランド・ツーリングの楽しみを発見するだろう。ちなみに、フェルディナント・ポルシェ博士が最初に制作したクルマは、EVであった。

 そのうえで、どれくらいの超高速を目指すのかという点でも、時代の転換期を迎えている。

 高速で走るほど、空気抵抗の負担が増える。速度の2乗で抵抗は高まるので、速度が2倍になったら、空気抵抗は4倍大きくなるということだ。それは、エンジン車も同じである。

 ことにEVでは、適切な速度でないと充電した電力を速く消費してしまう懸念があるのは事実だ。たとえば、メルセデスベンツのEQCは、最高速度を180km/hとしている。それが現実的な速度感覚だ。

メルセデスベンツEQC。EVのネックは電池搭載による大幅な重量と高負荷時の効率の悪さだろう。この車も2.5トンに達する。180kmの最高速度は速さと効率を考慮した上での最適解なのだろう
メルセデスベンツEQC。EVのネックは電池搭載による大幅な重量と高負荷時の効率の悪さだろう。この車も2.5トンに達する。180kmの最高速度は速さと効率を考慮した上での最適解なのだろう

 それとは別に、スウェーデンのボルボは、交通事故死者・重症者をゼロにする取り組みのなかで、世界のすべての市場で販売する新車の最高速度を、180km/hまでとする取り組みをはじめている。

 一般的な乗用車においては、適切な考え方だろう。

 では、GTカーやスポーツカーはどうなのか?

 潜在能力として、それを超える超高性能を備えているのはよいとしても、次第にその価値を重視する消費者は減っていくのではないか。世界人口が過去100年の間に7倍近くに増え、過密化しているなかで、クルマでの超高速移動難しくなっていく現実もある。

 そこで、ポルシェが取り組んでいるのが、エクスペリエンスセンターという施設の世界展開だ。2021年秋、日本にも千葉県木更津で施設が開場する。そこではポルシェの性能を余すところなく楽しむことができる。

 いわば、乗馬クラブのような構想だろう。そこまで、将来的には自動運転のクルマで通う姿を私は想像している。

 GT-Rも、技術の日産の象徴として、またブランドの牽引役として、EVの4WDを極めることで価値をもたらす可能性はある。

 いっぽう、その潜在能力を発揮できる場所は、世界的にも限られてくるだろう。GTカーもスポーツカーも、走れる場所が狭まってこざるを得ない。

 馬も、馬車という価値は失ったが、乗馬クラブや競馬場でその能力をあますところなく発揮している。スポーツカーやGTカーも、そこに価値を見出す時代となっていくはずだ。

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