【GT-R、NSX、スープラは生き残れるか!??】和製スポーツカーの行方と生存戦略

【GT-R、NSX、スープラは生き残れるか!??】和製スポーツカーの行方と生存戦略

 世界中で環境問題がクローズアップされていて、各自動車メーカーともその対応が急務となっている。

 実現できるかできないかは不明ながら、イギリスは2020年2月4日に2035年からハイブリッドカーを含め、ガソリン、ディーゼルエンジン車の販売禁止を発表した。

 最近ではCASEという言葉を耳にすることが増えたはずだ。C:Connected(コネクテッド)、A:Automonous(自動運転)、Shared(シェアリング)、E:Electric(電動化)をそれぞれ意味していて、今後のクルマ界の重要課題となっている。

 環境と言えば、高性能を売りにするスポーツカーは非常に厳しい時代になることは明白だが、日本のスポーツカーは今後生き残ることができるのか?

 日産GT-R、ホンダNSX、トヨタスープラの3車種について、次期モデルの予想などを盛り込みつつ、その生き残り策について鈴木直也氏が考察する。

文:鈴木直也/写真:NISSAN、HONDA、TOYOTA、ベストカー編集部

【画像ギャラリー】日本で2020年夏から販売開始予定のポルシェタイカンは注目のピュアEVスポーツ!!


ポルシェはピュアEVスポーツのタイカンを市場投入

 現在、自動車メーカーにとっての最優先課題はCO2削減だ。

 昨年末にスペインのマドリードで開催されたCOP25(国連気候変動枠組条約第25回締約国会議)で、パリ協定の実施要項を最終的に確定しようというタイミングもあり、欧州勢を中心とした「何が何でもCO2削減!」という流れはますます勢いを増しつつある。

ポルシェ社初のピュアEVスポーツのタイカンは日本ですでに発表されていて、2020年夏から販売開始予定。価格は3月に決定か?

 既存の(内燃機関を動力源に使う)クルマですら風当たりが強いんだから、スポーツカーにとってはモロに逆風が吹いているわけで、ポルシェですらピュアEVの“タイカン”を投入するといったあんばい。

 個人的には「電動のポルシェ? 誰が買うの?」と疑問符つきまくりだが、アリバイ作りでもなんでもいいから電動化に踏み出さないと市場に受け入れてもらえない、そんな危機感がアリアリなのだ。

 この原稿のテーマは、GT-R、NSX、スープラについての将来展望を語れというお題だが、スポーツカーを取り巻く世界情勢がそんな状況なんだから、正直なところ「いずれもキビシイ」と言わざるを得ない。

フェラーリは90周年を記念したモデルSF90ストラダーレを日本で発表。780psのV8+3個のモーターの220psを合わせて1000psのPHEVとなっている

日産GT-R

デビュー:2007年12月

2007年デビューだから設計自体は古いが、現在でも世界トップクラスの動力性能を持っているGT-R。しかし騒音規制などの影響でMY2020が最後という噂もある

 まずGT-Rだが、ご存知のとおり現行R35型は2007年デビューと原設計が古い。

 もちろん、毎年のように改良が加えられて、パフォーマンスはいまだ世界一流といっていいが、VR38DETT型エンジンはいまどき直噴ですらないし、パワートレーンはいっさい電動化されていないし、「CO2削減なんぞ興味なし!」といった風情。

 このままでは存続は難しい。

 ただ、GT-Rはただの高性能スポーツカーというだけでなく、日産の重要なブランドアイコンでもあるわけで、そういう意味ではこのまま自然消滅に任せるのは惜しい。

 それゆえ、次世代GT-Rを語る人の多くが、日産の電動化戦略と関連づけて「超高性能EVとして復活!」と言いたくなるのは素直な発想だと思う。

 しかし、EV版のGT-Rが出たとして、はたしてGT-Rの伝統を継承するブランドアイコンたり得ますかね?

3.8L、V8ツインターボのVR38DETTはデビュー時は480psで、現在はNISMOが600psをマーク。環境性能も進化しているが、将来的には厳しい

 R35GT-Rが世界的に評価されたのは、何よりそのパフォーマンスにおいて。市販車ニュル最速にこだわり、モータースポーツでも多くの成果を上げ、チューニング業界でも伝説的な存在……。初代ハコスカ以来、それがGT-Rのエンブレムが誇る伝統だ。

 しかし、現状のEVは高性能といっても単純に瞬発力があるだけ。サーキットを数ラップすればモーターとバッテリーを保護するためのセーブモードに入ってスピードダウン。

 24時間レースすら難なくこなす内燃機関スポーツカーに比べると、まだまだ未完成な部分が多い。そんなクルマに無理やりGT-Rのエンブレムをつけてもファンは納得しないだろう。

 マーケティング的にも、高性能EVの市場はすでに飽和しているという見方が強い。テスラの成功はただ高性能だったからではなく、コネクテッドや自動運転、そして売り方を含めた新しい取り組みが評価されてのこと。

GT-Rの魅力は圧倒的な加速感を生かした動力性能にある。加速感ならEVでも再現できるかもしれないが、それだけで満足するだろうか?

 R35GT-RをEVで再現しただけでは、新世代のスポーツカーとしてインパクトに欠ける。

 個人的には、現在のEVヒステリーともいえるような状態はそう長くは続かず、いずれPHEVなど内燃機関との調和を考えたクルマが見直される時期が来ると思っている。

 GT-Rの歴史を紐解くと、1974~1989年までと2002~2007年まで、GT-R不在の期間があった。

 ここは中途半端なGT-RのEV化などは考えず、じっくり開発に取り組んで5年後くらいに超高性能PHEVスーパースポーツとして復活させてもらいたいものであります。

ホンダNSX

デビュー:2016年8月

NSXのスポーツハイブリッドSH-AWDは3.5L、V6ツインターボ+3モーターということで世界的に見ても環境に適合させたスポーツカーだと言える

 NSXに関しては、日産におけるGT-Rほど「ブランドを背負った看板車種」という意味合いは薄い。

 開発も生産もアメリカで、販売シェア的にもほぼ9割が北米。そもそもがアキュラのフラッグシップという位置付けで、われわれ日本人にとっては初代NSXほど「萌えない」のが正直なところ。

 クルマとしてはすごくよくできているのだが、「何のために造ったの?」という疑問が残るのだ。

現行NSXの性能はスーパーだが、アメリカで開発・生産する北米をメインマーケットとしていることが初代NSXのように日本人を熱狂させない理由のひとつ

 メカニズム的には、開発当初から3モーターでトルクベクタリング機能を備えたハイブリッドということで、ハイテク、電動化という要素は織り込みずみ。

 現代のスーパーカーとして「環境性能もちゃんと考えてます」といえる優等生なんだけれど、その裏返しとしてフェラーリやランボルギーニみたいな感性に訴えるエモーショナルな魅力が弱いという指摘もあって痛し痒し。

 いまさら、電池やモーターを外して軽量化したタイプRというのも時代錯誤的だし、このまんま小改良しつつ造り続けるのかなぁという未来図しか想像できない。

ホンダは東京モーターショー2017でスポーツEVコンセプトを発表。後輪駆動のホンダeの発売も決定し、コンパクトEVスポーツへの期待が高まる

 もし、NSXに次世代モデルがあるとするなら、誰も予想できなかったようなユニークなスポーツカーを、できれば500万円以内で希望。

 それが、現代に蘇った電動エス8みたいなEVスポーツカーだったとしても、そのほうが2500万円級のスーパーカーよりずっとホンダらしいと思います。

東京モーターショー2019で公開されるという噂のあったNSXタイプRは公開されず。タイプRの注目度は高いが、それ以上の効果は見込めない!?

トヨタスープラ

デビュー:2019年5月

BMWとの共同開発により、Z4とコンポーネントを共有することで復活することができたスープラは、余裕のあるトヨタだからこそ商品化できた

 スープラは昨年デビューしたばかりだから将来を語るにはまだ早いのだが、内燃機関逆風の現代にこんなオーソドックスなスポーツカーを出せるのがトヨタの底力。

 トヨタのようにメーカー平均燃費(CAFE)に余裕があって、しかもビジネスとして成り立たせる工夫(BMWとのコラボレーション)がなければ、とてもスープラ復活など夢物語だった。

 現行スープラは、おそらく状況が許すかぎり基本を変えずに造り続けると思われるが、今のトヨタの勢いが持続するなら、後継モデルもかなりの高確率で期待できる。

 時期的には7~8年後ということになるだろうからPHEV化は必然だと思うが、その時点でトヨタがどういうタイプのハイブリッドシステムを使っているかは興味深い。

GRスーパースポーツカーの市販化を明言しているトヨタ。スープラの次期モデルがハイブリッドスポーツとなる素地は充分にある

 現在主力のTHS-IIはシリーズ・パラレルという基本構成からしてスポーツカー向きとはいえないが、それでも改良を重ねたFR用はかなりスポーティなドライバビリティを実現している。

 このシステムをそのまま引っ張るのか、あるいはまったく新しいハイブリッドシステムを開発するのか、はたまた予想を覆して純粋な内燃機関のまま生き残るのか?

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