日産GT-Rは2007年の登場以来、着実に進化を遂げいまや「世界のGT-R」となった。圧倒的なパフォーマンス、そして1000万円台というコストパフォーマンスもあり今やワールドワイドなスーパースポーツだ。
登場からすでに12年。厳しい壁もあり、いよいよR35 GT-Rは終焉の時が近いのではないかという情報も多い。
そんななか2020年モデルがGT-Rにデビュー。上質な走りを身につけた2020年モデルの評価は高いが、そこに真打ちとなるGT-R NISMOの登場となった。
圧倒的な性能をベースについには熟成の域にまで達した安定感。GTカーとしての素養を身に着けたGT-R NISMOはいったいどのようなクルマなのか。国沢光宏氏がヨーロッパにて試乗しました。
文:国沢光宏/写真:日産
ベストカー2019年8月26日号
■GT-Rはこれまで欲しくはならなかった
GTーRにはデビュー以来ずっと敬意を表してきた。これだけのクルマをゼロから作り上げるのは簡単じゃないです。
日本の自動車史に必ずや名を残す水野和敏(編集部註:R35 GT-R開発責任者。現在は日産を退社したが現役エンジニアであり、ベストカーで『水野和敏が斬る』を連載中)という人物じゃなければ難しかったと思う。
一方、残念だと感じることも少なくなかった。水野さんが作ったGT-R、ニュルブルクリンクでのタイムに固執したあまり、GTカーとしての魅力を持ってない。走り出すや、路面のデコボコでクルマがハネまくる。
当時はサーキットを走るためだと説明されたけれど、今回試乗した「最速のGTーR」であるNISMOに乗ると「これこそホンモノのGTカーですね」と感心するくらい楽しくて快適だったことを考えれば、何か間違っていたんだと思う。
水野さんが担当していた時は、最後まで「凄いクルマだけれどまったく欲しくならない」存在でした。
前置きはこのあたりにしてGTーR NISMO2020年モデルの試乗といきましょう! 最初にハンドル握ったのはベルリン近郊のアウトバーンである。Dレンジをセレクトしてアクセル踏むと、滑らかにスタート。
流入のためアクセル深く踏み込めば、さすが600psですね。3分の1くらいの踏み込み量で充分過ぎるくらい加速する。このあたりは変速ショックがジェントルになった2014年モデルから変わらず。
大きく違うのが乗り心地。今までGTーRに漏れなく付いてきた細かい路面からの微振動を感じない。
もちろんサーキットを全開で走るため、バネもダンパーも引き締められている。なのに、よく仕上がっている競技車両のごとく、ゴツゴツ感ないのだった。
残念ながら標準スペックの2020年モデルに乗っていないのだけれど、GTーR NISMOは快適かつ高品質のGTカーに仕上がってます。
車体の動きもサーキット用のハードなサスを組んだポルシェ911 GT3などよりドッシリしてる方向。
このあたりはホイールベースの長さや、前後バンパーのカーボン化などが効いているんだと思う。特に素晴らしいと思ったのは、アウトバーンの100km/h制限区間すら楽しいこと。
クルマの挙動だけでなくエンジンからの振動も適度に入ってくるため、気持ちいい!
目が速さに慣れたので追い越し車線に出て景気よく走らせてみる。当然のごとく全開です。
シートバックに背中が押しつけられる加速Gを250km/h+αまで感じるから素晴らしい!
私の時は交通量多かったため適当に楽しめる速度域だったものの、同業の山本シンヤさんがハンドル握ってる時にメーター読みで308km/hまで出ました〜。その速度域での安定性たるや不安感なし!
前後ともにダウンフォースが出ているというだけでなく、車体の周りや、車体の後方に乱流起きてないということでしょう。
300km/hという速度域になると、航空機のような精密な空気のコントロールをしないと細かい振動など出てしまい、ステアリングフィール悪くなるのだった(試乗車特有の症状なのか、ボンネット後端のみ少し揺れていた)。
今回試乗した欧州仕様の最高速度は315km/hとなっているが、充分可能な数字だと思う。
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