【池袋暴走事故】事故記録装置で判明した“踏み間違い”は100%正確!? 誤データ「あり得ない」 認定アナリストの眼

あらゆる車の異常を解明できる事故記録装置「EDR」

EDRとは事故の詳細を記録するUSBメモリのような記録装置のこと。EDRは事故発生直前、事故発生時の車両の状態を記録しており、事故の状況再現に活用されている
EDRとは事故の詳細を記録するUSBメモリのような記録装置のこと。EDRは事故発生直前、事故発生時の車両の状態を記録しており、事故の状況再現に活用されている

 これらのことをすべて解明できるのがEDR(イベント・データ・レコーダー)だ。EDRはACM(エアバッグ・コントロール・モジュール)内に装着された記録媒体のこと。要するにメモリーだ。

 筆者はこのEDRのデータを読み取りレポート化できるCDR(クラッシュ・データ・リトリーバル)アナリスト(ボッシュ認定資格)である。

 CDRアナリストのCDRとは、EDRに記録されたデータを吸い出しグラフを含む詳細データを表示できるECU(コンピューター)のこと。ボッシュ社が製造及び解析を行っている。

 そのCDRアナリストの見地から解説しよう。

 EDRは、ACMが正常に作動してエアバッグを展開させたかを記録している。エアバッグは人身事故に関わる非常に重要なシステムであるため、事故後作動状況を綿密に検証する必要性からEDRが生まれている。つまり、非常に確実性の高い重要なシステムなのだ。

 では、どのようにして事故車両からEDRデータを取り出すのか? 事故車両のバッテリーが通電しているレベルの事故であれば、事故車のOBD2コネクターにCDRを接続し、さらにコンピューター(Windows)に接続してデータを読み出す。

 しかし、今回のように事故車両の破損が激しくバッテリーを含めた電源が喪失している場合は、ACMを取り出し机などにしっかりと固定し、直接CDRとコンピューターを接続してデータを取り出す。

 したがって今回のような事故では、簡単にデータを取り出さず時間をかけて慎重に作業をおこなったと考えられる。

 もし何らかの原因で電源が生きていたら、ACMを取り出す際の振動まで記録されてしまうからだ。したがって電源が入っていないことを確認しなくてはならない。

EDRによってアクセルとブレーキを「踏んだかどうか」はきっちり記録される

アクセルを踏み込み量をコンピューターが処理し、エンジン側のスロットル開度がEDRに記録される。EDRに記録されたものをデータ化(CDR)することで事故の状況を把握することが出来る(※イメージ画像)
アクセルを踏み込み量をコンピューターが処理し、エンジン側のスロットル開度がEDRに記録される。EDRに記録されたものをデータ化(CDR)することで事故の状況を把握することが出来る(※イメージ画像)

 さて、ここから真相について考えてみよう。よくEDRはアクセル開度までわかる、といわれている。確かにそのとおりだが、実際に踏んでいたアクセルペダルの開度ではない。

 現在のクルマのアクセルは電子制御スロットルなのである。つまりドライバーが踏み込んだアクセル開度がそのままエンジン側のスロットル開度とは限らない。

 アクセルペダルの踏み込み量によって、ドライバーの要求トルクをコンピューターが判断して「スロットル開度」を決めるのだ。EDRはこのスロットル開度を記録する。

 言ってみればドライバーのアクセルペダル開度はどうでもよく、実際にエンジンに加速を促すスロットル開度が重要なのだ。したがってアクセルペダルが全開になっていなくてもスロットルが100%全開を示す場合もある。

 ただし、アクセルペダルを少しでも踏み込まない限りスロットルが開くことはない。

 検察側はEDRデータのスロットル開度を読み取りアクセルペダルを踏んでいたと判断したはず。逆にブレーキペダルを踏んだデータもしっかり記録されるので、まったく踏み込まれてはいなかったことを確認したはずである。

 以上のことから「(事故の)原因は、アクセルとブレーキの踏み間違い」と結論付けているのだ。

次ページは : EDRの誤動作や誤データが記録されることはあり得ない

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