2019年4月19日に池袋で発生した、87歳男性(元通産省工業技術院院長) が運転する車両が歩道に突っ込み、小さな子どもとその母親が犠牲になった痛ましい事故。
87歳の男性は任意の聴取で「ブレーキを踏んだが効かなかった。アクセルが戻らなかった」との供述を繰り返していた。
たしかにブレーキを踏んでいたのに暴走してしまったという可能性を100%否定はできない。しかし今日のクルマで整備がされていればそのような暴走事故が起きにくい、というのが一般的な認識だろう。
操作ミスも充分考えられる高齢者の運転。果たして本当に操作ミスではなく、自動車の不具合だったのだろうか?
警察は5月になりブレーキやアクセルに異常はなかったと断定したが(日本経済新聞が報道)、自動車版フライトレコーダーともいえる「EDR(イベント・データ・レコーダー)」を事故後すぐには生かせなかった。
なぜ警察はすぐEDRを事故原因の解析に使わなかったのだろうか?
文:国沢光宏/写真:トヨタ、AdobeStock
ベストカー2019年5月26日号
■「アクセルが戻らない」を検証する唯一の方法をなぜ追求しない?
池袋で発生した暴走事故。その日の報道を見ると、大半は「アクセルが戻らなくなった」という見出しだった。もちろん警察のリークです。
本来なら捜査情報を漏らしちゃいけないのに、担当記者に対し状況説明してるのだった。こういった情報漏洩、個人的には「悪い」と思わない。
ただ記者さん達のレベル低いと、警察の発表を鵜呑みにしてしまう。結果的に冤罪になることだって多々あります。今回の事故も報道見て「またプリウスか!」という意見多かった。
大笑いしちゃうのは「ブレーキかけた音がしなかった」とか「ブレーキ痕なし」みたいな報道。ブレーキかけたら「きき〜っ」という音がしたり、黒い筋が道路に残ると思っているのだろう。
ブレーキかけたってタイヤのスキール音が出ないこと多いし、ABS付きならタイヤ痕も残りにくい。
それよりもなんで警察に対し「EDRはどうなってるのか?」と聞かないのか不思議。飛行機事故の原因追及にはフライトデータレコーダーを使う。クルマも同じなのに。
ベストカー連載の『クルマの達人になる』の読者ならご存知の通り、軽自動車を除くエアバッグ付きのクルマにはEDR(イベント・データ・レコーダー)が付いている。
最もシンプルなEDRでも、エアバッグ展開する直前の車速や前後G、左右のG、アクセル開度、ブレーキ踏んでいるかどうか残ってます。
何でこんなモノを積んでいるかといえば、メーカー自身を守るためだ。エアバッグの黎明期、衝突したのに展開しなかったりする事案も多かった。正確に書けば、展開するような衝撃を受けていないワケ。
なのに「衝突したのに展開しなかった」と訴える人が出てきたのである。裁判になった時の証拠のため、自動車メーカーは事故時の状況を残すことにした。
その後、センサーの数や種類増え、記憶媒体の容量大きくなると、詳細なデータを残せるようになっていく。プリウスなどは3代目モデルから衝突までに至る車両の状況が航空機のフライトデータレコーダーより詳細に残っている。
しかもデータは30分あれば引き出せ、30分くらいで大雑把に分析可能だ。
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