■自動車評論家 鈴木直也&片岡英明が語る「楽しいHV車」と「退屈なHV車」の境界線
鈴木「思い出すよね、初代プリウスの“亀マーク”。高速道路でちょっと坂道があったりすると、バッテリーを使い切っちゃってインパネにオレンジの亀マークが点灯してガクンと遅くなる」
片岡「でも凄いのは、トヨタのハイブリッドシステムは、この時に商品化した、動力分割機構を介してエンジンとモーターの動力をミックスさせるという基本構造に大きな変化がないということ」
鈴木「初代プリウスのマイチェンで画期的にバッテリーの持ちがよくなり、普通に使えるようになった」
片岡「そうなると、一気にハイブリッド車が普及する。すると、運転していて面白くない……といった声も出てくるんですよね」
鈴木「それはしかたがない。そもそもハイブリッドが誕生した最大の目的は燃費の向上。初期のハイブリッド車は、徹底して燃費を向上させることを目指したのだから、ドライビングプレジャー的な視点は二の次になる」
片岡「THSの技術がある程度成熟したあたりからだよね、ドライブフィールを高めていこうという方向に向いた」
鈴木「明らかに変わったのが現行型カムリ。新世代のダイナミックフォース『A25A-FXS』エンジンからだよね。同じシステムを積むRAV4やハリアーのハイブリッドも力強いし、アクセルに対するレスポンスもいいし、エンジンとモーターがいい塩梅でミックスされた盛り上がり感がある」
片岡「リチウムイオンバッテリーを使いだしてから変わりました」
鈴木「ヤリスハイブリッドでもそうなんだけど、モーターのトルクを上手に引き出している。電力の制御、電池の使い方が上手になった」
片岡「モーターの存在感が際立つと走っていて楽しい」
鈴木「それに加えて、ダイナミックフォースエンジンがいいんだよね。エンジンもいいし、モーターもいいから結果楽しいパワーユニットになる」
片岡「THS以外だと各メーカーいろいろなトライがありました。1モーター系が主流で、今も日産のエクストレイルやスカイラインは1モーター」
鈴木「ホンダは最初期はフライホイールにモーターを直結したIMAだった」
片岡「今にしてみれば、マイルドハイブリッドのモーター出力を高めた版ですね」
鈴木「日産の1モーター2クラッチは、エクストレイルのパワーだとちょっともたつくんだけど、V6、3.5Lでエンジン単体で300psを超えるスカイラインだと悪くない。エンジンのパワーでそれなりに走れちゃうから、クルマ本体のよさの部分でカバーしてる」
片岡「レジェンドは凝ったシステムです。エンジン本体はスカイラインと同じく3.5LのV6。フロントは7速DCTにモーターを組み合わせ、さらに後輪は左右2モーターでトルクベクタリングをする」
鈴木「パワフルだから運転していて楽しい。でも、先代フィットのi-DCDはエンジンもモーターもギリギリのパワーで成立させていたから、なんかもっさりしたレスポンスで楽しさに欠けていた」
片岡「ボルボXC40のこのハイブリッド、基本的には先代フィットと同じメカですよね」
鈴木「7速DCTにモーターを組み込んでいる。ホンダと基本は同じですね」
片岡「でも走らせると楽しい」
鈴木「直3、1.5Lターボが180ps/27.0kgmありますから。さらにモーターが81ps/16.3kgmもある」
片岡「結局、パワーがあれば楽しい、ということになっちゃう」
鈴木「エクリプスクロスの前後2モーターPHEVは、4WD制御に楽しさの真髄がある」
片岡「雪道なんかで絶妙なトラクションと姿勢制御をしてくれる」
鈴木「PHEVだから、実走行でも50kmくらいはEV走行できるし、モーターだけで走る楽しさも味わえる」
結局、「楽しい」の決め手はパワーとトルクレスポンスという結論だ。
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