2012年末に生産終了がアナウンスされ、2021年6月にも生産終了すると見られていた、ホンダの軽トラ、アクティだが、2021年4月に前倒しされて生産を終えていたことがわかった。
アクティは実に44年の歴史を持つ、ホンダの軽トラック。スバルサンバーに続いて、なぜ生産を終えることになったのか? なにか裏事情があるのか、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーweb編集部 ホンダ
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2021年4月で生産終了していた!
ベストカーWebを始めとするクルマ関連のサイトでは、さまざまな話題を扱うが、特に軽トラックは注目を集める。趣味的な要素は一切ないが、仕事のツールに徹した真摯なクルマ造りが心を打つ。
かつてスバルがサンバーを自社開発していた時代、開発者は「サンバーには漠然と造られた部分がひとつもない。すべてに意味がある」と述べた。この思いは、軽トラックを手掛けるすべての開発者に共通するものだろう。
その軽トラックの大切な車種となるホンダアクティトラックが、2021年4月に生産を終えた。今ではメーカーのホームページからも削減されている。アクティトラックの廃止について、販売店では以下のように答えている。
「アクティトラックの生産は、2021年4月に終了しました。受注は2月に締め切っています。生産を終えた理由は、販売台数が少なく、今後の排出ガス規制や安全装備の規制にも対応できないからです。後継車種の予定もありません。
以前のアクティバンは、N-BOXをベースにしたN-VANに発展しましたが、アクティトラックは重い荷物を運ぶので後輪駆動の専用シャシーが必要になります。N-BOXがベースでは開発できないのです」。
生産を終えた最終型アクティトラックは、2009年に発売され、2010年には3万4625台を販売した。同年のライバル車の売れ行きは、ダイハツハイゼットトラックが6万5412台、スズキキャリイは5万8160台であった。アクティトラックはライバル車に比べて少なかったが、2010年の時点では大幅な販売格差は生じていない。
しかし2013年にキャリイが現行型にフルモデルチェンジされ、2014年にはハイゼットトラックも新型になった。2015年には、キャリイは5万5564台、ハイゼットトラックは7万6380台を販売した。
対する2015年のアクティトラックは1万8737台だから、2009年に比べると約6年間で半減した。キャリイやハイゼットトラックとの販売格差も広がった。
この後もアクティトラックの売れ行きは下がり、2019年には1万5268台になった。1か月平均で1272台だ。N-BOXは同年の1か月平均が2万1125台に達したから、アクティトラックの売れ行きは、N-BOXのわずか6%に留まった。
軽トラックは、軽自動車のなかでも特に薄利多売の商品で、アクティトラックの価格はスタンダードが83万6000円(5速MT)に収まる。
ハイゼットトラックのスタンダード/エアコン・パワステレス仕様は69万3000円(5速MT)だ。このような価格のクルマが、1か月平均で1272台の売れ行きでは成り立たない。
ほかのメーカーの取り組みも同様だ。日産と三菱は、合弁会社を立ち上げて軽乗用車を共同で開発/生産するが、軽商用車はスズキ製のOEM車を導入している。
スズキの軽商用車は、日産と三菱に加えてマツダにも供給されるから、乗用車メーカー8社の内の4社が基本的に同じクルマを扱う。
ダイハツの軽商用車も、スバルとトヨタに供給されて3社が売る。残りの1社は、OEM関係を持たないホンダになる。
ちなみに2020年度(2020年4月から2021年3月)におけるキャリイの届け出台数は5万6288台で、他メーカーに供給されるOEM車を加えると7万2344台であった。ハイゼットトラックも7万8039台で、OEM車を加えると8万6908台に達する。
この生産規模を軽乗用車に当てはめると、スズキハスラーの8万5426台、ミライース+ミラトコットの7万1757台に匹敵する。少なくともこの程度の台数を売らないと、軽商用車を開発して製造するのは難しい。
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