2021年1~4月の販売状況を見ると、最も多く販売された車種は軽自動車のN-BOXだ。1ヵ月平均で1万9714台を販売。統計上はヤリスが最も多いが、日本自動車販売協会連合会の公表する数値は、ヤリス+ヤリスクロス+GRヤリスの合計になる。
コンパクトカーのヤリスとSUVのヤリスクロスは、一般的な認識では別の車種だろう。
そこで分割すると、ヤリスは2021年の1ヵ月平均が1万955台、ヤリスクロスは9945台に分散されて実質的な1位はN-BOXになる。
高価格車ではアルファードの販売も好調だ。売れ筋価格帯が400~550万円のLサイズミニバンだが、2021年の1ヵ月平均は1万420台に達した。その代わり姉妹車のヴェルファイアは、大幅に落ち込んでいる。
ヤリスを含めて、これらの人気車には、優れた特徴があって好調に売れている。それだけに欠点はあまり指摘されない。購入する時は欠点を知ることも大切だから、N-BOX、ヤリス、アルファードそれぞれの弱点を述べてみたい。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーweb編集部 トヨタ ホンダ
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ホンダN-BOXの弱点はここだ!
全高が1700mmを超えるスライドドアを装着した軽自動車で、前述の通り販売は絶好調だ。外観の視覚的なバランスが良く、内装の質も高い。
ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は、軽自動車で最も長い2520mmだから、室内空間にも余裕がある。後席を後端までスライドさせた時の足元空間は、スーパーハイトワゴンのなかでも一番広い。
その一方で欠点も少なくない。まず軽自動車のスーパーハイトワゴンに共通する不満として動力性能が挙げられる。車両重量は、買い得グレードになる標準ボディのLでも900kgだから、660ccのノーマルエンジンでは登坂路などでパワー不足を感じやすい。
解決方法としてはターボを選ぶ。最大トルクはノーマルエンジンの1.6倍に増強され、1Lのノーマルエンジンを搭載している感覚で運転できる。WLTCモード燃費の悪化率は5%と小さく、ターボにはサイド&カーテンエアバッグ、右側スライドドアの電動機能、パドルシフトなども装着されるから、ターボの正味価格は約9万円だ。
走行性能ではカーブを曲がる時のボディの傾き方が大きい。全高は1790mmと高く、車両重量も重く、足まわりの設定は乗り心地を重視したからだ。危険を避ける時は、車両の向きが変わりにくい。
内装では、小柄なドライバーが運転するとインパネの形状に圧迫感が生じる。メーターパネルを高い奥まった位置に装着したから、メーターの視認性は良いが、前方は見にくい。
フィットのようにインパネの上端を低めに抑えて、上端部分を平らにデザインした方が、前方視界が向上して安全性にも良い効果をもたらす。
居住性では、EXの助手席に装着されるスーパースライドシートに注意したい。570mmの前後スライド機能が備わり、後方に寄せると足元空間が大幅に広がる。その代わり標準タイプのベンチシートに比べてシートの幅が狭く、リラックス感覚はいま一歩だ。
またスーパースライドシートには、長いスライドレールが装着されるからボディが重い。同等の装備を採用した標準シートのグレードに比べると、スーパースライドシートのEXは30kg上まわる。
価格もLターボとEXターボの比較で約5万円高い。販売店では「メーカーはスーパースライドシートのEXが好調に売れると考えたが、実際は伸び悩んだ。発売当初はEXの在庫が増えた」と述べている。
後席にも注意したい。スライド位置を後端に寄せると足元空間を大きく広げられるが、座り心地は良くない。
後席は柔軟性が不足気味で、座面の角度も水平に近いため、大腿部のサポート性に不満が生じた。もう少し乗員の体をシートに沈ませるか、座面の前側を持ち上げたい。後席の着座感覚は、現行型になって改善を施したタントのほうが優れている。
装備では、パーキングブレーキがN-WGNやN-ONEと違って電動式にならない。この影響で車間距離を自動制御できるアダプティブクルーズコントロールにも違いが生じた。
N-WGNやN-ONEであれば、追従走行中の渋滞で停車時間が長引いた時は、電動パーキングブレーキを自動的に作動させて停車を続けられる。そこで全車速追従型とした。
しかしN-BOXのパーキングブレーキは足踏み式だから、追従停車後にパーキングブレーキを自動的に作動させられない。N-BOXのアダプティブクルーズコントロールは、時速25km未満になると解除されてしまう。
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