2021年4月に行われた上海モーターショーにおいて、日産は、中国市場向けの新型エクストレイルを発表した。日本市場では、新型エクストレイルに関して、現時点(2021年5月時点)ノーアナウンス。北米市場向けの兄弟車「ローグ」もすでに2020年10月から販売が開始されており、日本市場は、北米そして中国市場に先を越されてしまった形となった。
「国内重視するといったではないか!!」と思ってしまうところではあるが、「新型エクストレイルe-POWER」については、(欧州でちらっと触れられてはいるが)ぎりぎり発表されていない。おそらく日本向けの新型エクストレイルは、ベースグレードはe-POWER、最上級グレードに三菱との協業で得たPHEVと、この2つのパワートレインで登場してくるだろう。
しかし、なぜ日産はe-POWERにこだわるのだろうか。なぜ日本では北米ローグの2.5Lガソリンエンジンも、中国エクストレイルのVCターボも用意されないのか、そして、日本向けの新型エクストレイルにはパワートレインが最もふさわしいのか、についても触れていく。
文:吉川賢一
写真:NISSAN
【画像ギャラリー】上海モーターショーで発表された日産新型エクストレイルと、歴代エクストレイル
「e-POWERブランド」として認知を高めたい
日産は、2020年5月に発表した「事業構造改革計画/NISSAN NEXT」において、「日本市場は電気自動車を拡大(SUVと軽を追加)し、電動車(e-POWERもしくはハイブリッド)率を25%から60%にまで引き上げる」としている。
イチ押しのコンパクトSUV「キックス」(2020年6月デビュー)も、安価なガソリン仕様を用意せず、e-POWER一本とし、日産の命綱ともいえる売れ筋コンパクトカー「ノート」(2020年12月デビュー)ですら、e-POWER一本で勝負に出た。
「電動車ブランド」のイメージを高めるため、新型エクストレイルも国内においてはベースグレードをe-POWERと(ガソリンモデルを持たない)してくるにちがいない。
日本市場向けの新型エクストレイルに関して、ダメ元で日産広報へと電話で確認したところ、「上海モーターショーでは、(新型エクストレイルに)中国市場に適した、新世代のVCターボエンジン搭載車を発表しました。その他のパワートレインや、日本仕向けとしてVCターボエンジンを搭載するのか、e-POWERを搭載するのか、といった将来の商品ラインアップに関しては、現時点、明言が出来ません。」とのことだった。
ちょっと聞いたくらいでヒントをもらえるはずもないが、「中国と日本とでは事情が違う」ということだけはわかった。
しかしなぜ日産は、いわゆるストロングハイブリッドではなく、e-POWERで勝負に出てくるのだろうか。
現在の日産が持つ、いわゆるストロングハイブリッドは、スカイラインとフーガ用の3.5Lハイブリッドと、現行T32エクストレイル用の2.0Lハイブリッドの2基。小改良はなされていると思われるが、登場から既に6~7年は立つ古いパワートレインであり、トヨタとの差は開く一方だ。
一転、ハイブリッドとは異なる乗り味をもつ「e-POWER」は、先代ノートやセレナなどの国内日産の主力車種で、一気に知名度が上がった。これを日産のアイコンとして強く打ち出し、「e-POWERブランド」として、認知させたいのだろう。
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