広さ重視の“生活感”を払拭したN-BOX
ちなみに、その頃の世間の人気カテゴリーと言えばミニバン一択。休日のショッピングセンターに行けば、ズラリと箱型クルマが並んでいる状況。高速道路を背の低いクルマで走ると、山に囲まれているようでまったく前が見えない…。なんていう状況に陥ったりもしたものです。
そうして普段から、スペースユーティリティ性能の高いクルマに乗っている影響なのでしょう、軽自動車にもモアスペースが求められ、徐々にスーパーハイトワゴンの需要が高まっていきました。
なので、その頃のスーパーハイトワゴンと言えば、小型ミニバン的な性格が強く、つまりファミリー感が強い=生活感が強く感じられたんですよね。
となると「あの広さと両側スライドドアのパッケージングは魅力だけれど、ちょっとねぇ、自分のクルマとしては選びにくいんだよねぇ~」なんていう声が出てくるわけですよ。それを払拭したのがN-BOXだったんです。
あえてスッキリした箱型、しかも重箱の隅をつついて尖らせたんじゃないの? と、思えるくらいの真四角型。でもいわゆるワンボックスタイプの配達型軽自動車とは違う、絶妙なデザイン性が、道具感を強めると同時に生活感を払拭。
身近なアイテムとして認識されるのに役立ったのではと思います。そのおかげでサーフィンとかキャンプ等といった、オシャレなアウトドアシーンも似合うクルマに仕上がっちゃったんですよね。
あれ? この感じなんだかステップワゴンの位置づけと似ている気がする……。要するにホンダはこういうのが得意なのかもしれませんね。
MINIにも似た手法でNシリーズのイメージ戦略を推し進めたホンダ
N-BOXの場合は、さらにそこから先の展開がありました。例えばアメリカで流行したチョッパールーフを取り入れたN-BOXスラッシュは、インテリアにもテーマ性を持たせて世界観を演出したり、さらに道具として割り切ったN-VANでは、車中泊しやすいようなアイテムを盛り込んだり。
残念ながらN-BOXスラッシュは、現在のラインアップからはなくなっちゃいましたがユニークな存在でした。
はたまた、もう少し全高抑えスイングドアを採用したN-WGNや、往年のN360を彷彿とさせるデザインと、ワイメイクレースまでシリーズ戦で開催し、モータースポーツに通じるまでの運動性能の高さをアピールしたN-ONEまでありますからね。
でですね、このおかげで例えばN-ONEと同じ「N」という名前がついているんだから、N-BOXだってきっと走りがイイはずだ! というイメージ戦略にもなっていくわけなのです。
N360を見て心ときめかせた大人たちが「Nコロはよく走るクルマだったから、きっとこれもそうに違いない」と、夢を抱くんですよ。つまり、上手にブランド作りに成功したのだと思うのです。
この軽自動車はすべて「N」シリーズというアピール手法、世界中で大ヒットし、いまだに人気の高いMINIと似てますよね。
小さいのから大きいのまですべてMINIとして、共通世界観を印象づけていて、最初のうちは「こんなに大きいのMINIじゃない!」なんて言っていた人たちまで巻き込んで、日本市場ではいまいちばん売れてるのがMINIクロスオーバーだったりしますからね。ブランド作り大成功というわけです。
そうして大ヒットを遂げたNシリーズですが、そのおかげで、軽自動車を生活必需品アイテムから、生活を彩り楽しむアイテムへと昇華させたという功績は、軽自動車界全体においても大きな好影響をもたらしたと思います。
そう、軽自動車ってとっても興味深く、面白いカテゴリー。日本の宝だと思います。
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