スペイン国産自動車への情熱を具現化「セアト」
我が国ではもうひとつ馴染みの薄いメーカーがスペインのセアト。2021年時点で国内にセアトの正規代理店はなく、個人輸入や並行輸入車のみが走行している。しかしその歴史は古く、1950年にスペインの産業振興機関とイタリア・フィアットの共同出資で設立されている。
ちなみにセアト(SEAT)とは「Sociedad Española de Automóviles de Turismo(スペイン乗用車会社)」を意味している。
創業まもなくは出資者でもあるフィアットのモデルをライセンス生産し、さらにはフィアット製モデルを独自にアレンジしたクルマを販売するなど、スペイン色を打ち出していった。だが、1980年代に入るとフィアットが撤退してしまい、セアトは存亡の危機にさらされる。そこで救いの手を差し伸べたのが、この時期に拡大路線を進めていたフォルクスワーゲンだった。
フォルクスワーゲンは1982年にセアトとの提携を締結。その後は徐々に影響力を高めていき、1993年には完全子会社としている。スペイン&イタリアのラテン系連合からドイツメーカーの傘下になるという大幅な変化ではあったが、以降は経営も安定。スペインを代表する自動車ブランドの地位を固めている。
現在のセアト製モデルはフォルクスワーゲングループのプラットフォームを使用しているが、かっちりとした本家に比べるとスタイリッシュなボディをまとい、よりスポーティなイメージでまとめられる。ドイツの信頼性とスペインのパッションを併せ持つセアトの人気は高い。
イギリス&イタリアの伝統的ブランド「ベントレー」「ブガッティ」
1998年にフォルクスワーゲングループのメンバーとなったのがイギリスのベントレーとイタリアのブガッティ。イギリスの高級自動車メーカーとして1919年に誕生したベントレーは、その後ロールス・ロイスに買収され、1998年まで同社の傘下にあった。
いっぽうのブガッティ創業は1909年。創業者エットーレ・ブガッティの名を冠したこのメーカーは、1940年代まで自動車の生産を続けるものの、一旦は自動車業界から撤退。1980年代に商標を獲得した人物の手によってイタリアで復活するが、1995年に経営破綻してしまう。そこでフォルクスワーゲンが商標を取得し、フランスで新たなブガッティをスタートさせた。
ベントレーは長くロールス・ロイス傘下にあったが、そのロールス・ロイスの自動車部門は1973年にヴィッカーズに買収されている。さらにヴィッカーズはロールス・ロイスとベントレーの売却を決め、最終的にロールス・ロイスはBMW、ベントレーをフォルクスワーゲンが買い取ることになった。
フランスで設立されたブガッティ・オートモビルは、フォルクスワーゲンが手に入れたブガッティの商標を利用した新会社だ。もちろんブガッティの名を使うのは、伝統あるメーカーの復活を狙ったものであり、個性的かつ高性能なロードモデルがリリースされた。
なお、このブガッティの商標獲得と新会社設立も、当時のフォルクスワーゲングループ会長フェルディナント・カール・ピエヒの主導によるものである。
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