定説「渋滞は追越車線から」に異変!? 高速道路の渋滞は右車線と左車線のどちらが速い?

■テスト結果と新たな定説

 筆者が2009年から2010年にかけて実施した、「右車線と左車線どっちが速いテスト」は、次のような結果になった。片側3車線の路線では、一番左車線と追越車線との比較だ。

◆中央道下り(片側2車線)・渋滞20km(稲城IC―八王子IC間)
……左車線の勝ち。46台分左車線が先着(約2分差)

 渋滞突入直後は9台分左車線が速く進み、その後拮抗。国立府中ICでは、出口前で左が14台抜き、入り口前で2台抜かれた。つまり、降りるクルマのほうが12台分多かった。それ以外の25台分は、流れの速さの差によって生じた。渋滞の中で隣の車線と46台差が付くと、抜かれたほうは「ものすごく負けた」と感じる。しかし渋滞が解消して流れ始めれば、その差はわずか2分にすぎなかった。

◆関越道下り(片側3車線)・渋滞10km(高坂SA―花園IC間)
……左車線の勝ち。30台分左車線が先着(約1分半差)

 中央道とほぼ同じような状況で、左車線のほうが若干速かった。

◆東名下り(片側3車線)・渋滞10km(横浜青葉IC―大和トンネル間)
……右車線の勝ち。19台分右車線が先着(約1分)

 東名下りでは、途中の横浜町田インターから合流する交通量が非常に多いという特殊要因があるため、左車線のほうがやや遅くなった。それでも差はわずか1分だった。たしかに渋滞は追越車線から始まるのだが、渋滞突入直後に付く差はほんの数台分。その後の車線ごとの流れの速さの差は、渋滞途中のIC(インターチェンジ)の利用状況が主な原因だった。

     ◆      ◆      ◆

写真は関越道下り。3車線とも渋滞した状態ではどの車線を走っていても到着時間はさほど変わらないことが多い
写真は関越道下り。3車線とも渋滞した状態ではどの車線を走っていても到着時間はさほど変わらないことが多い

 このように、約10年前のテストでは、車線ごとの流れの差は、渋滞10kmあたり1~2分に過ぎなかったため、「渋滞では、速い車線を狙って車線変更するよりも、休憩を1回減らしたほうがはるかに速い」という結論が出ていた。

 ところが近年は、状況が変わり、この差がさらに縮まっている。原因は、「渋滞は追越車線から始まる」という事実が、広く一般に知られるようになったことにある。私も当時、テレビ出演等で「渋滞では追越車線のほうが遅い」といった解説をしたし、その後NEXCO各社も、「渋滞は追越車線から始まります」といった横断幕やポスターを掲示するなどの啓蒙活動を始めた。

 この効果は大きく、ドライバーは、渋滞が始まりそうな状況になると、以前とは逆に(少しでも速く進もうと追越車線へ車線変更するのではなく)、追越車線から走行車線へと車線変更するようになった。これによって混雑時の車線ごとの交通量の差が非常に小さくなった。

 現在は、特殊なポイントを除いて、どの路線でも、どの車線を走っていても、ほとんど差は出なくなっている。もはや「渋滞では左車線のほうが速い」という定説は崩れ、「どの車線にいてもほとんど同じ」が新たな定説となった。

■「車線減少の有無」による変化

 ただ、例外も存在する。それは、渋滞中(あるいは渋滞の先頭)に車線減少がある場合だ。その典型が、中央道上り・上野原IC付近。ここでは、一番左車線が真ん中車線に合流する形で、片側3車線が2車線に減少する。小仏トンネルを先頭とする上り線の渋滞距離が15kmを超え、このポイントまでかかる際、一番速い車線はどこかというと、合流で消滅する左車線だ。

 消滅する車線のクルマは、合流の一番先頭だけでなく、途中いろいろなポイントで、真ん中車線に割り込むように合流する。真ん中車線はその割を食い、多くのクルマが追越車線に逃げる。最終的には、一番左車線に最後までいたクルマが最も速くなる。

 これは片側2車線の場合も、追越車線が消える場合も同様で。とにかく消える車線にいたほうが、少し有利なのが現実だ。その時間差は、合流マナーの改善によって、現在は10年前に比べるとかなり縮まっているが、工事や事故による車線規制渋滞も含め、「消える車線にいたほうが若干速い」という状況は変わっていない。

突然の事故や工事によって予期しない車線減少もある。いかんともしがたいが強引な車線変更はやめてほしい
突然の事故や工事によって予期しない車線減少もある。いかんともしがたいが強引な車線変更はやめてほしい

 ドライバーとしては不公平感を感じるが、割り込みをブロックするのは大人気ないし、事故やトラブルの原因にもなる。「合流は合流ポイントの先頭で交互に」を皆が心がけるようになれば、こういったケースでの速度差も、ほぼ無視できるレベルに落ち着くだろう。

 また、自分の車線の流れが隣より少し遅くても、実際の時間差はほんのわずかだと思って、心穏やかに過ごすようにしたい。渋滞中の車線変更は、渋滞を助長しますしね。

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