新型コロナの流行が沈静化し、週末の高速道路に渋滞が戻ってきている。近年は渋滞対策の進捗(新東名・新名神の開通や、ピンポイント対策としての付加車線の設置など)によって、ひどい渋滞が発生するのはほぼ首都圏に限られるようになったが、首都圏には日本の人口の3分の1が住んでいる。その首都圏の高速道路では、渋滞緩和が期待できる対策が、もうあまり残っていない。首都圏のドライバーは、遠い将来まで高速道路の渋滞に悩まされ続けることが確実だ。
ところで、実際に渋滞にはまった時に気になるのは、自分のいる車線が、隣の車線より速いか遅いかではないだろうか。渋滞という自分の意志ではどうにもならない災難に巻き込まれた時に、「隣のクルマに負けたくない」と思うのは自然なこと。「渋滞の高速道路、右車線と左車線どっちが速い?」は、渋滞における永遠のテーマである。実際のところ、どっちが速いのか? 渋滞研究家の清水草一が答える。
文/清水草一
写真/清水草一、フォッケウルフ
■渋滞は追越車線から始まる
これまで「渋滞の高速道路、右車線と左車線どっちが速い?」に関しては、「左車線のほうが速い」というのが定説だった。理由は、高速道路の交通量が増加して混雑が始まり、全体的に速度が落ちてくると、多くのドライバーが少しでも速く進もうと考えて、追越車線(右車線)に車線を変更。結果的に追越車線が真っ先にオーバーフローし、追越車線から渋滞が始まるからだ。
片側3車線の混雑した高速道路では、おおむね次のような交通量になることがわかっていた。
第1通行帯(左車線)20%
第2通行帯(中央)35%
第3通行帯(追越車線)45%
混雑した状態では、一番左車線の交通量が他に比べてかなり少なく(平均車間距離が長い)、追越車線が最も多くなる(平均車間距離が短い)。これよって渋滞は、まず追越車線から始まって、他の車線に伝播して行くのがパターンだ。
ただ、実際に渋滞が始まると、追越車線からは多くのクルマが隣の真ん中車線に逃げる(車線変更する)。真ん中車線からも一番左車線に逃げる。この動きによって全車線でブレーキが踏まれ、その減速波によって、すぐに全車線が渋滞し、その後の流れにはほとんど差はなくなる。
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