「護衛艦」ってどんな船? 日本独自の定義とDD、DDH、DDG……艦種記号の意味とは?

■海上自衛隊の「護衛艦」の定義とは?

 こうした定義と少し異なるのが海上自衛隊の護衛艦である。

 海上自衛隊の戦力の中核を担う部隊の一つが護衛艦隊で、艦隊が運用するのが護衛艦である。海上自衛隊では保有する艦船の種別の一つとして、敵の潜水艦、航空機、水上艦艇による脅威に対処する能力と日本の周辺海域や海上交通の安全を確保できる航洋性を持つ水上戦闘艦を護衛艦と呼んでいる。

 この海上自衛隊における護衛艦という名称は、1960年(昭和35年)に発令された海上自衛隊訓令第30号(海上自衛隊の使用する船舶の区分等および名称等を付与する標準を定める訓令)で定められたもの。

 訓令では、海上自衛隊の使用する船舶を自衛艦と支援船とに区分し、さらに自衛艦を警備艦と補助艦に分け、警備艦を任務に応じて機動艦艇、機雷艦艇、哨戒艦艇、輸送艦艇に細分した。そして戦闘の主力を担う水上戦闘艦と潜水艦は機動艦艇に種別され、水上戦闘艦を護衛艦としたのである。

 1954年に発足した海上自衛隊では、訓令第30号が発令された当時、アメリカ海軍から貸与された駆逐艦やフリゲート、国産のはるかぜ型やあやなみ型などの警備艦が主要戦力の水上戦闘艦として整備されており、これらの艦艇が護衛艦と呼ばれるようになった。

 本来ならば自衛艦は軍艦、護衛艦は駆逐艦やフリゲートとするところだが、軍隊を持たないという日本の憲法上の制約や旧軍のイメージなどの国民感情を考慮して自衛艦や護衛艦という名称を使い、それが今日まで使い続けられているのである。

 別な言い方をすれば自衛艦や護衛艦という名称は国内向きのものといえる。

■海自護衛艦の種類と艦首記号の意味とは?

 今日、海上自衛隊の保有する艦艇の中で、護衛艦と呼ばれるのは、以下の5種となる。汎用護衛艦(DD:本来の意味はDestroyer)、ヘリコプター搭載護衛艦(DDH:Helicopter Destroyer)、ミサイル護衛艦(DDG:Guide Missile Destroyer)、近海警備用護衛艦(DE:Escort Vessel)、そして最も新しい艦種の多機能護衛艦(FFM:Frigate Multi-purpose/Mine)だ。

 面白いことに海上自衛隊では汎用駆逐艦からヘリ空母に相当するような大型艦まで、大きさや用途が異なる水上戦闘艦をひとまとめにして護衛艦と呼んでいるのだ。

 また、海上自衛隊の艦艇に付けられているDD、DDGなどの記号は艦種記号と呼ばれるもの。

ミサイル護衛艦(DDG)のみょうこう。こんごう型のイージス艦であり、高い防空能力を備える。 写真/出典:海上自衛隊ホームページ
ミサイル護衛艦(DDG)のみょうこう。こんごう型のイージス艦であり、高い防空能力を備える。 写真/出典:海上自衛隊ホームページ

 この艦種記号は1920年にアメリカ海軍から始まった。書類上の表記のために戦艦(Battleship)、巡洋艦(Cruiser)、駆逐艦(Destroyer)の頭文字を取って戦艦=B、巡洋艦=C、駆逐艦=Dと分類し、表記の際に見やすいように文字を重ねてBB、CC、DDとした。その後、巡洋戦艦=BC、重巡洋艦=CA、軽巡洋艦=CL、駆逐艦=DDなどというように表記されるようになったのである。

 海上自衛隊では発足当初アメリカから貸与された艦艇に付けられていたDDやDEなどの表記法を敷衍して1956年に艦種記号と定め、同一記号の艦が複数ある場合は各艦に番号を付するようになった。

 これが海上自衛隊における艦番号の始まりで、今日まで続いている。たとえば汎用護衛艦の「あきづき」はDD-115、ミサイル護衛艦の「こんごう」ならDDG-173というように表記されるのだ。

 次回は、護衛艦の種類について、さらに掘り下げて紹介したい。

【画像ギャラリー】DD、DDH、DDG……海自の艦艇を一気チェック!(10枚)画像ギャラリー

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