実際の実証運行は自動と手動の併用
新宿駅西口の地下乗り場は、狭いロータリーになっており大型バスのCH01系統でも注意深くバス停に付ける。このロータリー内では手動運転になる。乗車が完了したバスは運転士の手動運転で発車しすぐにトンネルに入る。
運転速度はおおむね20km/hと遅いので、ローターリーから出る車両を先に行かせてからトンネルに入る。そこで自動運転に切り替わり運転士はハンドルに手を添えているだけだ。
車内のモニターには運転席の様子が映し出され、同乗している京王バスの担当者がその都度案内をするので何が起こっているのかがよくわかる。
トンネルを出ると都庁第一本庁舎に停車する。ここはバス停にピッタリと付けることができるかどうかが見ものだ。前後の位置はピッタリだが、バス停縁石からは2メートル程度離れて停車した。現在の技術ではこのあたりが限界のようで、今後の課題と説明があった。
信号では必ず停車する?
都庁周辺ではいくつかの信号が存在するが、自動運転では必ず停車するようにプログラムされている。発車してよいかどうかの判断は運転士が目視で行い、クラッチ位置(実験車はAT車なのでクラッチペダルはない)にある赤いペダルを踏めば確認ボタンとして働き自動発車する。
明らかに青信号の場合は、停止する前に確認ペダルを踏めばそのまま信号を通過できる。仕組みや考え方は異なるが鉄道のATS-S(自動列車停止装置)確認ボタン操作と似ている。
都庁第二本庁舎を通過し、いよいよ建造物の中にある都議会議事堂に向かう。この停留所は都議会議事堂の建物の駐車場わきに設置されているので、トンネルと同様に上空が開けていない場所で地図との照合を行いながら走行する。
そして駐車場なので通常のCH01系統は運転士がリモコンで駐車場料金所のバーを開けて歩道を渡り道路に出るが、さすがに自動運転で歩行者を待ち、避けながら道路に出るのは難しくここでは運転士の手動運転になる。
最後の難関はタクシーの待機行列
無事に手動運転で道路に出た自動運転ポンチョは、再びトンネルに入り新宿駅西口を目指す。トンネルは片側2車線だが実際には西口のタクシー乗り場に並ぶタクシーの列がトンネルを埋め尽くし、事実上右車線しか走れない状態になっている。
そこでトンネルに入る手前の信号を過ぎた場所で待機し、後ろの信号が赤に変わり他の車両(主にタクシー)が通過しきってから発車する措置を取っている。
このためにかなりの時間を待機に要する。もちろん実証実験で運行システムや交通状況を把握し、実際の定期運行を目指す際のデータを蓄積することや、乗客へのデモンストレーションの意味合いもあるので待機中にさまざまな説明が行われる。
有償運行が行われるのであれば、この待機はなるべく短時間で済ませるべきだがそれには信号システムもバス優先制御にする必要があり、将来的には総合的に各方面との調整が必要になるところだろう。
実証実験で路線は都庁循環線なので、すべての乗客は始発から終点まで、すなわち途中で降車せず新宿駅西口に戻る乗客となったのだが、速度が20km/hと遅く自動運転と手動運転の併用なので運転士を乗せないわけにはいかない。
また自動運転でも運転士の確認操作や手動や自動の切り替えにともなう作業も必要なため、現在の実証実験段階では運転士の負担は自分で全区間運転するバスよりも大きいだろう。
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