■タントのセンターピラーレスドアは?
そこでタントは助手席の背もたれに乗降グリップを装着して、体を捩らずに車内へ入り、ラクな姿勢で後席に座れるように工夫した。お年寄りのいる家庭などでは、十分なメリットになる。
また助手席のスライド機能を長く設定して後方に寄せられる構造にすれば(トヨタのポルテ&スペイドは、ピラーレスではないがスライドドアを装着して助手席に長いスライド機能を備える)、同じようにラクな姿勢で乗り込み、足元空間を広げた助手席に座れる。
逆にこのような利用価値がないと、センターピラーレス構造を選ぶメリットも乏しい。背の高い軽自動車やミニバンを使いながら、「センターピラーが邪魔だ! センターピラーレス構造にして欲しい!」と感じた経験のないユーザーも多いだろう。
■センターピラーレスドアが増えない2つの理由
つまりセンターピラーレス構造のクルマが増えない理由は、大きく分けて2つある。まずはセンターピラーレス構造の優れた乗降性や積載性にメリットを感じるユーザーが少ないこと。
2つ目はセンターピラーレス構造を有効活用するには、助手席の折り畳み機能、あるいは助手席を前後両方に大きくスライドできる機能が必要なのに、それを備えた車種が少ないことだ。単純に開口幅が広がったり、開放感が得られるだけでは、購入する理由になりにくい。
そしてセンターピラーレス構造は、現時点ではニーズが高いとはいえない少数派の機能だから、ユーザーも使い方をイメージしにくい。
N-VANのホームページやカタログには、センターピラーレス構造と助手席格納の併用で可能になる使い方がいろいろと紹介されているが、ほかの車種にも同様の配慮が求められる。
ちなみにN-VANは商用車だから、助手席を格納して左側がセンターピラーレス構造によってフルオープンになると、荷物の積載性が向上する。長い荷物をボディサイドから積み込めば作業が簡単になる。
また人手が多ければ、ボディサイドとリアゲートの両方から荷物を積めるから、積載時間を短縮できる。パーソナルユースについても、このようなメリットを多く提案しないと、センターピラーレス構造を普及させるのは難しい。
■コストが高く、側面衝突を受けた際の衝撃吸収も難しい……
センターピラーレス構造では、当然ながらボディが左右非対称になる。ピラーをドアに内蔵させる左側は、側面衝突を受けた時の衝撃吸収も難しい。開発に手間がかかり(開発者は「2台分の手間を要する」と口をそろえる)、コストが高まることも普及を妨げている原因だ。
この困難を乗り越えて開発と製造を行うには、前述のメリットを効果的にアピールして、センターピラーレス構造のユーザーニーズを高めることが不可欠になる。
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