■DCCDがうまくコントロールしてアンダーもオーバーも出ない!
ハンドリングはステアリング切り始めの応答が想像していたよりも過敏ではない。わかりやすくコーナリング中も修正舵が少ない。群馬サイクルスポーツセンターは路面が悪く、常にサスペンションが細かく上下動しているが、そのようなシチュエーションでもライン取りが読みやすくステア操作を決めやすい。
感心したのはDCCD(ドライバー・コントロール・センター・デフ)をAUTOでデフォルトの状態でもフロントがよく入り、リアが適度に巻き込むフィーリングだったこと。かといってリアが大きく滑っているわけでもない。
DCCD AUTOをさらにマイナスにセットすれば、サーキットで威力を発揮しそうなくらいに切り足しでフロントノーズがさらに切れ込む。それでいてコーナー脱出加速ではステア角が小さく、かつしっかりとリアにトラクションがある。
昨年の製品改良でセンターデフの機械制御部を取り去り完全電子制御式としたこともかなりハンドリングを後押ししている。
つまり、アクセルOFFでのコーナー進入からAペックス付近のパーシャルアクセル。そしてエグジットにかけてのフルスロットルをDCCDが上手くコントロールして、可能な限りアンダーステアもオーバーステアも出さないのだ。
手に入れ損ねたあなた。ほんとに逃がした魚は大きい! こんなレポートを見るのも嫌かもしれないが、せめてバーチャルでタイプ RA-Rに乗った気になって楽しんでもらいたい。
■タイプRA-Rは伝説の特別仕様車22B-STIバージョンを超えたのか?
さあ、最後に本企画の核心に迫ってみたい! タイプRA-Rは、22Bを超えることができたのだろうか? 即日、限定500台を売り切ったタイプRA-R。相変わらずSTIの台数限定コンプリートモデルは絶大な人気だ。
この人気のデフォルトを作ったといえるモデルがある。1998年にたった2日で450台を売り切ったSTIのコンプリートカー、インプレッサ22B-STIバージョンだ。
1997年にWRC3連覇を達成したことを記念して、1998年インプレッサ・ワールド・ラリー・カー97のレプリカモデルだ。ブルーの車体色に黄文字で「555」とスポンサーロゴが張り込められていたのを覚えているだろう。
あの迫力のある大型オーバーフェンダーを、樹脂製ではなくオリジナル同様に鉄板をプレスして手作業で溶接フィッティングしていた伝説の特別仕様車だ。
これによって車幅も1770mmまで広げられている。そのオーバーフェンダーだけでも4枚の部品単体価格が約85万円。RA-Rと比べても既に手が込んでいる。
さらに搭載されたエンジンはEJ22改と呼ばれる2.2L水平対向4気筒ターボエンジンで、EJ20をベースにボアアップ(ボアを92.0から96.9mm)してSTI専用チューニングが施されている。このエンジン、排気量アップの効果もあり、低速域からとてもピックアップが良く7000rpmくらいまでは非常に気持ちよく回る。トップエンドは7900rpmだが、そこまで回す必要もないくらいにトルクの太さを感じさせる。
この頃は自主規制があり280ps/37.0kgmだったが、RA-Rの329ps/44.0kgmと比較してもそれほど大きな差は感じない。絶対的パワーは別として、22Bは低速域のトルクが太かったので、逆にRA-Rよりも扱いやすさを感じさせる。やはり排気量の差は明らかにある。
そして車重も1270kgと、1480㎏のRA-Rに対して210kgも軽量なわけで、49psのパワー差は車重差でかき消されてしまうのだ。もちろん22Bの時代には車体の安全基準も今ほど厳しくないので、重量差は致し方ないところ。
RA-RのEJ20はバランスがよく、高回転域でも振動感がない。また22Bでは7000rpmを超えた超高回転域でのストレス感はRA-Rには及ばないだろう。
8000rpmまでの気持ち良さではS208から引き継ぐRA-RのEJ20は素晴らしい。ワイドボディ&ワイドトレッド化により235/40R17のワイドタイヤ(ピレリP-ZERO)にBBS製鍛造アルミホイール(8.5J×17)を装着している。
この点RA-Rは軽量化の目的で19インチから18インチへとサイズダウンしている。22Bのサスペンションはビルシュタインダンパーにアイバッハ製コイルスプリングを装着。RA-RではダンパーはKYB製だ。ただし、22Bではブレーキにはそれほどお金をかけていない。
22Bの純正ブレーキシステムはフロント16インチベンチレーテッドディスクに4ポッド対向キャリパー、リアは15インチベンチレーテッドディスクに2ポッドキャリパーでレッドカラーリング塗装が施されている。その点、RA-Rはブレンボ製ブレーキだから、ブレーキに関してはRA-Rのほうがいい。
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