SUV全盛の今ですが、やはり背が高く重心も高いのでワインディングなどでスポーツ走行をすると、不向きですよね。
やっぱり速さを求めるとなると2ドアクーペのスポーツカー! となっちゃいますが実用性はほぼなし。家族持ちには厳しいものがあります。
諦めちゃいけません! 2ドアクーペのスポーツカーを打ち負かす、4ドアスポーツセダンがあるんです。まさに家族持ちのクルマ好きにとっては、待ってましたといわんばかりの最新のスポーツセダン6ス台、松田秀士さんに選んでもらいました。
文/松田秀士
写真/ベストカー編集部
■松田秀士がオススメのスポーツセダン6選
スポーツセダン。この単語を我々は普通に使っているけれども、そもそもスポーツセダンという言葉が使われるようになったのはいつの頃からだろう。この疑問にはおそらく誰も答えられないと思うが、ボクの考えではドイツで生まれたと思っている。
ドイツの自動車メーカーは昔からアウトバーンで速度記録にチャレンジするなど、スポーツカーの高速性能を競ってきた歴史がある。当時、速度制限のないアウトバーンの覇権はスポーツカーだった。
しかし、時代とともに高速走行を楽しむことよりも、高速移動がビジネスに取り入れられるようになった。もっと多人数で積載力のあるクルマで高速移動できたらと思ったに違いない。
こうして、スポーツセダンやスポーツワゴンが誕生したと考えられるのだ。それこそアウトバーンで200km/h巡行が容易な高性能スポーツセダンがあれば、時間をお金で買うことができる。
安全に安定して高速移動できれば時間を短縮できるのだ。そのためにはストレスなく移動するために、高速での快適性と安定性が求められる。
高速での快適性と安定性、この2つは一見共通する課題のように見えて、実は背反するテーマでもある。高速での安定性を求めればサスペンションはハードにこしたことはない。
しかし、快適性を求めるとソフトである必要がある。ソフトでハード、柔らかく乗り心地がよいのに高速走行で安定していてハンドリングのよいクルマ。
このテーマを追求し続けているのが現代のスポーツセダンなのである。また、スポーツセダンは家族のあるお父さんなど、2座席スポーツカーは買えないけれどスポーツカー並みの、あるいはスポーツカーを凌ぐような性能とハンドリングを持った4ドアのクルマが欲しい、という走り屋にも打ってつけなのだ。
そこで、数あるスポーツセダンのなかから私、松田秀士が選んだオススメの最新スポーツセダンを6台紹介しましょう。
■スバル WRX STI タイプRA-R
2Lフラット4ターボ:329ps/44.0kgm
まずは、つい先日試乗した500台限定のSTIのコンプリートカー、WRX STI タイプRA-R。人気モデルゆえに既に1日で完売してしまったが、是非記憶のひとつに入れておいてほしいモデルだ。走りはもちろんスバルのAMGともいえるSTIが手掛けた極上の仕上がりだ。もちろん、WRX STIもスポーツセダンだが究極はこのタイプRA-Rだ。
昨年450台限定で発売され、あっという間に完売したS208のコンポーネンツが多数移植され、しかもS208から30㎏もの軽量化を達成している。パワーウェイトレシオも4.498kg/psと、STIのコンプリートカーのなかでも至上最強のスペックだ。
S208と同じくピストン、コンロッド、クランクシャフトさらにフライホイールに至るまで、回転升の重量バランスをレーシングエンジン並みに徹底的にとった。
エンジンは329ps/44.0kgmを発生。フラット4ターボエンジンは、8000回転域まで回り、振動感がなくストレスを感じさせない。しかもボールベアリングを採用したターボチャージャーなのでレスポンスがよく、先日の群馬サイクルスポーツセンターでの試乗では3速アクセル全開で1.29barという高ブースト圧を確認している。
ただし、サスペンションは硬くシートは軽量化のためにファブリック。乗り心地においては家族にそれなりの妥協を強いるかもしれない。だが、このクルマを一人で走らせる時の楽しさは、何物にも代えがたい感動がある。
■レクサス GS F
5LV8:477ps/54.1kgm
次にレクサスGS F。GS Fの魅力は5LのV8ユニット。ここ最近ダウンサイジングや電動化など、パワーユニットの効率化を追求する流れが一般化しつつあるが、やはりターボも採用しないNA(自然吸気)エンジンの気持ちよさとサウンドは心に響く。
477ps/54.1kgmのパワーは8速ATのパドルシフトで官能の極みを演出させる。排気音とレスポンス、マルチシリンダーで大排気量エンジンを楽しむには贅沢過ぎるほどの一品。シャシーもレーザー溶接、スポット増し、高剛性ガラス接着剤、レザースクリューウェルディングなど、最新の技術でボディ剛性をアップ。
19インチタイヤの採用でハイグリップで応答性に優れたハンドリングだ。かといってサスペンションは硬すぎず、同乗者も快適でドライバーによってはスリリングな移動が楽しめるだろう。
またベース車両がGSというハイグレードなモデルゆえに、オーディオの音質も高級で高速移動とミュージックの融合が楽しめる。
■アウディRS3セダン
2.5L直5ターボ:400ps/48.9kgm
アウディの高性能ブランド、アウディスポーツGmbHがプロデュースするRSモデル。そのうち、日本でのラインアップでセダンとなると、A3ベースのRS3となる。
アウディRS3の真骨頂はGS Fと同様に搭載されるそのエンジンだ。FFベースのクワトロシステム(4WD)なのでエンジンは横置きだが、2.5L直列5気筒のターボユニットからは400psを絞り出し、0〜100km/h加速は4.1秒という俊足。
5気筒ゆえの個性的なエクゾーストノートは7000rpmの高回転域でたまらない音質。48.0kgmもの最大トルクを1700rpmから発生する扱いやすさもスポーツセダンとしての車格を後押ししている。
またサスペンションには磁性流動体をダンパーオイルに混入し、電磁石のオリフィスで瞬時にコントロールするマグネティックライドのショックアブソーバーをオプション設定。
乗り心地優先のモードとスポーティなハードモードが瞬時に切り替えられる。インテリアもアウディRS仕様のラグジュアリーなテイスト。そのブランド色ある質感に家族も大満足することだろう。
■VW パサートGTE
■1.4Lターボ:156ps/25.5kgm、モーター:116ps/33.6kgm

隠し玉といえるGTEモードを押すと胸をすくうような強烈な加速フィールが味わえるパサートGTE。価格は528万9000円
パサートGTEはPHEVだ。ゴルフTSIに採用される1.4Lエンジン(156ps/25.5kgm)と電動モーター(116ps/33.6kgm)によるハイブリッド走行と、リチウムイオンバッテリーに外部から充電し積極的にモーターだけで走ることもできる。
パサートGTEをスポーツセダンと捉える理由は、EV走行時の気持ちよさ。電動モーターはゼロ回転から最大トルクを発揮できるという特性がある。このためスタート時の加速力が力強い。ガソリンエンジンと違い、音もなく身体をシートに押し付けられる快感。
さらに隠し玉ともいえるGTEモードを押せば、ゴルフRを上回る40.8kgmのトルクを発生、強烈な加速が堪能できるのだ。エンジンのレスポンスや変速プログラムやダンピングが俊敏になるのだ。
スムーズで力強い加速。この心地よいスポーツフィールは、ドライバーだけでなく同乗者である家族も無理なく楽しめるもの。もちろんハンドリングもゴルフ譲りのスポーティなものだが、胸をすくうようなEVの加速感に焦点を当てて楽しんでもらいたい。
■BMW M3
3L直6ツインターボ:431ps/56.1kgm

431ps/56.1kgmを発生する名器3L直6ツインターボを搭載するセダンのM3。通常のM3をさらに上をいくM3コンペティションは450ps/56.1kgmを発生する。M3の価格は標準グレードが1209万円(7速M-DCT)、M3コンペティションが1280万円(7速M-DCT)
BMW M3は言うまでもなくBMWを代表するスポーツモデル。プロペラシャフトにカーボンを採用して、高剛性なカーボンの材質によるジョイントレスにより軽量化を達成。
しかもリアサスペンションをレーシングカーと同じボディ直付けにするなど、かなり本格派のスポーツセダンに仕上げている。
そして忘れてならないのは、BMWといえば直6。シルキー6などと呼ばれる直列6気筒エンジンだ。一般的に末尾40(例340i)と数字表記されるのが3L 直6のツインスクロールターボエンジンを搭載したモデルは、シングルターボとなる。
これに対してM3に搭載されるエンジンは、徹底的にチューニングされ、しかも直噴ツインターボ。そう、ターボが2つ装備され、431ps/56.1kgmを誇る。さらに上級&ハイパワーなM3コンペティションは450ps/56.1kgmを誇る。
極めつけは、やっぱりレッドゾーンが7600rpmというシビレるほどの高回転型なこと。0〜100km.h加速を4.1秒で走りきる。
■アルファロメオジュリア・クアドリフォリオ
2.9L、V6ツインターボ:510ps/61.2kgm

2.9LV6ツインターボは510ps/61.2kgmと、BMW M3を圧倒するスペックを誇る。価格は1132万円と、すぐ下のグレード、ヴェローチェ(587万円)から545万円高と2倍近い価格
アルファロメオのデザインはどれも個性的。昨年国内登場したジュリアはとてもスタイリッシュだ。そのなかでもクアドリフォリオは特別な1台。
ジュリア・クアドリフォリオの魅力はデザインもさることながら、搭載される2.9L V6ツインターボエンジンが凄い! なんと510ps/61.2kgmで0〜100km/h加速は3.9秒とBMW M3を上回っているのだ。
そのエキセントリックな加速力は3速ギヤでも後輪をホイールスピンさせるほどのパワー。とにかくエンジンがパワフルだが、インテリアはイタリアらしいデザインとレザーなどの質感が高く快適空間だ。