電動モビリティへの橋渡し
トレイトンは既に電動化に向けて動き出している。乗用車では電動モデルがガソリン車やディーゼル車の地位を奪っているように、物流用トラックにおいても同じことが起きるのは避けられない。
いっぽうカニンガム氏は次のように指摘する。「輸送業界が内燃機関と完全に決別するにはまだ時間がかかる。また、大型車用の充電インフラの導入状況は、国や地域によって大きな隔たりがあります」。
加えて、地域の特性も考慮に入れる必要がある。電動モビリティは人口密度の高い地域では急速に成長し、インフラも拡大するだろう。発展途上国で代替パワートレーンが普及するには、乗り越えなければならない障害が多い。
「グループで共有する新型ベースエンジンは、こうしたすべての地域と市場で今後の私たちの強みとなります。
3大陸のチームのコラボレーションにより実現した、高効率なグローバルエンジンは、プロジェクトの目的を見失うことなく、それぞれのブランドが専門性と伝統、プライドを持って取り組んだ成果です。
トレイトンブランドのスカニア、マン、ナヴィスターの3社を合わせると、ディーゼルエンジンの開発における私たちの経験は300年に及びます。その経験をCBEに結集しました。
トレイトンがバッテリー電気駆動に移行する中でも、グループ各社で協調するというカルチャーは生き続けます」。
(同氏)
ディーゼルエンジンの「ウイニングラン」
CBEプラットフォームは、トレイトンの化石燃料を使った内燃エンジンとしては最後のものになるのか? カニンガム氏の答えは明確だ。
「ゼロから開発するものとしては、これが最後のディーゼルエンジンプラットフォームです。もちろん、お客様の要望に合わせて、エンジンの改良は行なってまいります。
しかし、私たちは既にゼロエミッション商用車に注力しています。共通エンジンを使うことによるグループでのシナジーは、電動パワートレーンに、より多くの投資をすることができるということです」。
CBEは、ある意味でトレイトンのディーゼル技術の130年の栄光に対する「ウイニングラン」だ。
ディーゼルエンジンを実用化したメーカーが、ディーゼルエンジンの「最後」を明言したことにショックを受ける人もいるかもしれない。ただ、この方針は、ルドルフ・ディーゼルの精神にも合致する。
なぜなら、現代のモビリティを形作った先駆者が何よりも重視していたのは「効率」だからだ。
ルドルフ・ディーゼルが生きていればCBEにも感銘を受けるだろう。新型エンジンのエネルギー変換効率は50%を超え、今日のディーゼルエンジンとしても最高水準にある。
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