最近よく耳にするようになった中継輸送とは、長距離・長時間におよぶトラック輸送において、運行途中の中継地点で他のドライバーと乗務を交替する輸送形態を指す。
一般的なのは、トラクタトレーラで中継地点で落ち合い、けん引するトレーラを交換して自分のトラクタで帰庫するというもの。これで日帰り輸送が実現する。
長距離運転手は、いったん出庫すると何日も家に帰れないケースが多いが、できれば毎日自宅に帰りたいのが本音というもの……。そこで官民挙げて中継輸送を推進しているわけだが、課題もいろいろある。
その第一が中継地点の確保の問題。トレーラのスイッチにはそれなりのスペースが必要で、狭い日本では難題だ。国交省の北海道開発局とヤマト運輸が行なった「道の駅」を活用した中継輸送の実証実験はその意味でも注目される。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/国土交通省北海道開発局旭川開発建設部・ヤマト運輸
「道の駅」を中継拠点に活用
国土交通省の北海道開発局旭川開発建設部とヤマト運輸は、2021年11月に実施した、「道の駅」を拠点とした中継輸送の実証実験について、結果を取りまとめ公表した。
この実証実験は、「道の駅」の駐車場を長距離物流の中継輸送拠点として活用することで、トラックドライバーの長時間労働の負担を軽減し、物流の維持を目指したもの。
政府は北海道総合開発計画の中で、北海道地方部を「食」や「観光」という北海道の強みを提供する「生産空間」に位置付けている。
いっぽうで人口減少や高齢化、北海道特有の「広域分散型」の社会などと相まって、そうした地域での生活が困難になる恐れがある。暮らしや産業を支えるために、特に物流の維持が重要だ。
しかし、トラックドライバーの高齢化や担い手不足が進み、時間外労働規制の適用による「物流の2024年問題」などもあり、今後も物流を維持できるのか、大きな課題となっている。
トラックドライバーの長時間労働を軽減するために、一つの輸送行程を複数のドライバーが担い、途中でトラクタ(ヘッド)・トレーラを交換する中継輸送などが提案されている。ただ、トレーラ化が進んでいない日本では、大型トレーラの交換ができる物流拠点は多くない。
このため、幹線道路沿いに立地し、休憩機能等を有する「道の駅」の特性を活かして、道の駅駐車場の一部を長距離物流の中継拠点として活用することで、長時間労働の解消、トラックドライバーの負担軽減、生産空間の物流維持を目指したのが今回の実証実験だ。
実証実験の結果は?
実証実験は札幌市~オホーツク海に面する枝幸(えさし)町、およびその途中にある名寄市の道の駅「もち米の里☆なよろ」を中継拠点に行なわれた。「もち米の里☆なよろ」は道北と道央の中間に位置し、駐車スペースが大きいことから実証実験のモデルに選定された。
輸送は、冷凍イクラ、冷凍ホタテ、宅配用品などをトレーラで運び、道の駅でヘッドを交換する形だ。
札幌市~枝幸町は片道約300km。従来の単独輸送で一人のドライバーが往復する場合、運転時間は約10.5時間、休憩・荷役などを含めた拘束時間は約13.5時間となる。
いっぽう、札幌~名寄は片道約200km、枝幸~名寄は片道100kmの距離にある。札幌~名寄~札幌の往復は、運転時間が約6時間、拘束時間は約8.5時間となり、単独輸送と比べて拘束時間は約5時間削減された。
同じく枝幸~名寄~枝幸の往復は、運転時間が約5時間、拘束時間が約7.5時間となって、従来より約6時間の拘束時間削減を実現した。
この結果は、厚生労働省の定める「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」、通称「改善基準告示」を満足するとともに、2024年からスタートする時間外労働の上限規制でも規制値内に収まっている。
ヘッド交換や集荷のタイミングを合わせる必要はあるが、中継輸送が「2024年問題」の解決策になりうることが確認できたと言えそうだ。
また副次的な効果として、人件費・燃料代・高速道路の料金などを合わせた輸送費の合計は、45%低減した(「約14万円」から「約7.8万円」に)。これはドライバーの拘束時間が減ったことによるもの。
さらに、車両の稼働が効率化するためCO2の排出量はおよそ半分となり、カーボンニュートラルへの取り組みにも貢献する。
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