【絶滅か!? 進化か!?】ニッポンのガラパゴス変速機「CVT」の行方


■多段ATやMT、DCTと比べるとCVTの伝達効率は劣る

潤滑(&冷却)と摩擦という相反する要素を両立させるためには、緻密な油圧による制御だけでなく、プーリーとベルトの間で潤滑を行なうCVTフルードの開発、プーリー表面の仕上げやエレメントの耐久性アップなど様々な部分に渡って設計や制御の工夫が不可欠なのだ。

それでもCVTは多段ATやMT、DCTと比べて伝達効率は劣る。前述のようにベルトとプーリーの間では滑りがなければ回転できないし、変速もできないからだ。歯車機構も接触する表面では滑りが起こっている(しかし潤滑しているため摩擦は少ない)が、歯車同士は噛み合っているため、高い伝達効率を実現できているからだ。

伝達効率が低い変速機なのに、なぜ燃費が良いのか。それは幅広い減速比が実現できるため、最終的に巡航時にはエンジン回転を低く抑えることができるのと、変速時に駆動力が途切れないためにMTや多段ATと比べ、実質的な伝達損失は意外と少ないのである。

無駄な加速(変速により滑りが増え、燃費が低下する)を抑える運転方法さえ守れば、燃費に優れるのはこのためだ。

だから燃費職人と呼ばれるメーカーのテストドライバーがキッチリと運転すれば燃費は伸びる。言い方は悪いが、カタログ燃費を引き出すにもCVTは好都合な変速機だったのだ。

そのため欧米の自動車メーカーがサジを投げたこの変速機に挑戦し続け、低燃費を追求し続けてきたのである。これは偏に変速機メーカーの努力によるもの、と言っていい。

■進化し続けてきたCVT

例えばジヤトコは、この20年間の開発で伝達効率を10%は引き上げている。その根拠となるのが、CVTにとって重要な油圧による損失の低減だ。CVTの駆動にはかなりの油圧を必要とする。

金属ベルトを挟み込むには高い油圧が必要だが、必要以上に高すぎれば摩擦が増えて抵抗になるだけでなく、油圧ポンプの駆動による損失も無駄に大きくなる。アイシンAWではCVTの油圧経路を、ベルトを挟む高圧系とトルクコンバーターなどの低圧系に分けることで油圧の最適利用を図っている。

最近では副変速機や発進用ローギアを備えるCVTも登場してきた。そんな変速機メーカーの努力によってCVTの実燃費は向上してきたし、加速時の制御もより柔軟で人間の感性も考慮できるようになった。それは伝達効率が高まった分、加速時に常に変速し続ける必要が無くなったということだ。

日産ジューク/ノート、スズキスイフト/アルト/ワゴンR、三菱ミラージュなどに搭載されている、変速範囲を広くとれる副変速機付きのジヤトコ製CVT

実際、最新のCVTを搭載したクルマに乗ると、その加速感もかなり自然になっており、ドライビングも楽しい。CVTとしての利点を活かしながら、ドライビングの楽しさも追求できるようになってきたのが今日のCVTなのだ。

特に小型車ではATを多段化するのはコストや車重の面からいって実現が難しい。そのためCVTが採用されてきた訳だが、今後マイルドハイブリッドの普及が進んでくると多段化しなくても変速機のステップ比をモーターが補ってくれるから、燃費のいい領域でエンジンを運転しやすくなっていく。

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