■CMキャッチコピーは「恋愛仕様」
ホンダS-MX(1996年11月誕生、2002年8月没)
1994年に発売されたオデッセイの大ヒットは、苦境に陥っていたホンダの国内販売を救ったが、ホンダはオデッセイに続く「クリエイティブムーバー」シリーズとして、1996年にステップワゴンを発売し、これまた大ヒット。
そのステップワゴンの全長を切り詰めて若者向けに仕立て直したのが、S-MXだった。
当時、バブルはとうに崩壊していたが、バブル期のカップル文化はまだ余韻を残していて、クルマはデートのための道具という側面はデカかった。ただ、バブル期はスポーツカーでデートがカッコ良かったのが、1990年代中盤からはRVに変わりつつあった。S-MXはその需要を見事に突き、そこそこのヒットとなったです。
が、このクルマは、販売台数よりも、1990年代中盤の若者のクルマへの欲求を見事に体現していた点で、一発当てたというべきだ。
見た目は若々しくボクシーで、ローダウン仕様が最初から用意されていた。後席ドア(普通のヒンジタイプ)は左側だけで、右側から見ると2ドアに見る。これらは、バブル期の「所帯じみたクルマはカッコ悪い!」という価値観を微妙に継承(?)していた。
全長4m弱の寸法のなかで、室内は十分広く、カップルが狭苦しい思いをせずにイチャつくことができる。前後シートはフルフラット化も可能。フルフラットにすると枕元になる位置にはティッシュボックスやドリンクホルダーを置くスペースがありました。CMキャッチコピーが「恋愛仕様」で、走るラブホとも呼ばれていたのです。
そんなS-MXが一代限りで消滅したのは、カーセックスに励むような貪欲な若者文化の消滅と軌を一にしている。「カーセックスのためのクルマ」という脂ぎったイメージが、S-MXを消滅に追い込んだといってもいいでしょう。
結局、月2000台平均で、16万台あまり売れヒット車となったが、1990年代後半からのどん底の経済氷河期は、若者からクルマを買うお金や意欲を奪い、カーセックスどころではなくしてしまったのだ。涙ポロポロ。
今、車中泊が注目され、N-VANがヒットしているなか、このS-MXが現代に復活すれば売れそうな気がもしますが……。
■渾身のFRスポーツセダン!
トヨタアルテッツァ(1998年10月誕生、2005年7月没)
アルテッツァは確実に一発当てた。それは、コンパクトなFRスポーツセダンの復権という一発だった!
1997年に消費税が3%から5%に上がり、ようやく多少戻っていた景気が完全に壊滅。しかしそれでも当時の日本には復活への希望があり、元気になれる商品への期待もあった。アルテッツァは、元気をなくしつつあったクルマ好きが、再び元気になれる”タマ”だったのだ!
が、その期待は、徐々にしぼんでいった。発売当初は月販台数7000台を誇ったが、1年半経つと3分の1となり、月販目標台数2500台に遠く離れた1000台レベルにまで失速、2003年には月販600台にまで落ち込んだ。
アルテッツァの走りは期待ほどではなかったし、メーカーも改良の意欲に乏しく、ほとんど放置プレイでした。
アルテッツァの発表当時、私は「これは国民的スターになれる!」と思ったものです。石原裕次郎の再来みたいな。その期待は完全に裏切られました。
アルテッツァは、ダラダラと2005年まで販売されたが、レクサスISにバトンタッチする形で、消滅するに至った。ISもパッとしませんけどなぁ。
ただ志はよかったのではなかろうか……。時代が早すぎたのか!?
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