■小ベンツ?! 小さな高級セダン
トヨタプログレ(1995年5月誕生、2007年8月没)
プログレはアルテッツァとプラットフォームを共有する、小さな高級セダン。このクルマは、道の狭い鎌倉で資産家の足として重宝され、”鎌倉クラウン”との異名を取った点で、小さな山を当てました。
当時は、5ナンバー車がどんどん消滅して、クルマが肥大化していくことを憂える声がけっこうありまして、特にクラウンユーザーの間にそれが大きかったのです。プログレは、そういう方々の期待に応える小さな高級セダンだったのですね。
品質はクラウン以上、塗装は5層コート、全車本革シート。個人的には、このクルマがレーダークルーズコントロール初体験で、その闘争本能を奪うピースフルなドライブ感覚に感動したものです。
が、10年間モデルチェンジも受けず、昭和ヒトケタ世代とともに、静かに消えたのでございます。そう言えば私の父親も、最後のクルマはプログレでした。
これからは高齢化社会。今、このサイズの高級サルーンを出せば、売れるのはないかと思ったりもします。
■スポーツカー不毛の時代に生まれなければ……
トヨタMR-S(1999年10月誕生〜2007年9月没)
MR-Sのことを思い出すと、涙が出ます。このクルマは、国産スポーツカー最後の復権への挑戦という側面があり、それが見事に失敗に終わったからです。
1984年登場の初代MR2は、国産初のミドシップスポーツカーとして、ミドシップの大衆化を果たしましたが、2代目で堕落し、1999年に消滅。その後を受けたMR-Sは、軽量コンパクトなミドシップスポーツへの原点回帰を目指しつつ、AT限定でも乗れるシーケンシャルマニュアルトランスミッションも投入。より幅広い層に本格派スポーツを味わってもらいたい! という意欲が感じられたのでございます。
チーフエンジニア氏は、自らフェラーリ348tbを購入して研究したと聞きました。当時私自身が348tbに乗っていたので驚愕したのですが、氏は「もう、こういうスポーツカーはいいだろう」という反面教師として研究したと仰られ、そのことに強い感銘を受けましてございます。
が、現在フェラーリはますます肥大化し、かつ隆盛を極めているのと対照的に、MR-Sは8年でその生を終え、後継モデルも出ませんでした。是非もなし。
スポーツカー市場が冷え込んでいた時代ということもあり、2006年は年間1000台程度(月販は2桁)となり、総生産台数は7万8000台あまりと振るいませんでした。
86に続いてスープラが復活する今、MR-Sの不運を見るといてもたってもいられません……。
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